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チヌがまずいと言われるのはなぜ?時期・場所・締め方と旬の見分け方
チヌはまずいって本当?臭いと言われる理由と、おいしく食べるための時期と下処理
せっかくチヌが釣れたのに、ネットで調べるとチヌはまずいとか臭いという声が出てきて、持ち帰るかどうか迷っていませんか。夏のチヌはまずい、乗っ込みのチヌはまずい、川や河口のチヌはまずい、東京湾のチヌは臭い、といった話もよく目にしますよね。一方で、刺身や塩焼きがおいしいという声もあって、どっちを信じればいいのか分からなくなるのも無理はないかなと思います。
結論から言うと、チヌ(標準和名はクロダイ)は、水産庁が大変おいしい魚と紹介している白身魚です。まずいと言われるのは魚そのものというより、食べる時期、釣った場所、釣った後の締め方と持ち帰り方の3つで味の差が出やすいからだと私は考えています。そこに、市場価格が安い魚という見方も重なっています。
この記事では、チヌがまずいと言われるのはなぜかを、公的機関やメーカーの資料をもとに原因ごとに整理しました。まずい時期と旬の見分け方、川や河口・東京湾で釣った個体の考え方、臭いを出さない締め方と血抜き、臭みの取り方につながる下処理、刺身にするか塩焼きなどの加熱料理にするかの判断まで、順番に紹介していきます。
- チヌがまずいと言われる4つの理由と、それぞれの資料での裏付け
- 味が落ちるとされる時期と、旨味が強い旬の目安
- 鮮度を落とさない締め方・血抜き・持ち帰りと下処理の手順
- 臭いが気になる個体の加熱料理と、刺身にするときの注意点
チヌがまずいと言われるのはなぜ?原因は時期・場所・処理
まずは、チヌがまずいと言われる理由を一つずつ分けて見ていきます。最初に、チヌがもともとどんな味の魚と評価されているかを確かめ、そのうえで時期、釣った場所、食べているもの、釣った後の処理、市場での評判の順に、資料に何が書かれているかを確認します。先にお伝えしておくと、チヌの臭いそのものを機械や食味試験で調べた公的な資料は、今回探した範囲では見つかりませんでした。そこでこの章では、資料に書かれていることと、そこから私が考えていることを分けて書いていきます。どこまでが資料の話で、どこからが私の考えなのかを意識しながら読んでもらえると、次の釣りで持ち帰るかどうかを自分で決めやすくなりますよ。
チヌは本来おいしい白身魚という評価
チヌは、本来はおいしい白身魚として評価されている魚です。まずいという話が出てくるのは、条件によって味の差が出やすいからだと考えると整理しやすくなります。
水産庁がクロダイのおいしさを広めるプロジェクトのために作った資料では、「実は、クロダイは大変おいしい魚です!」と書かれています。西日本では郷土料理として古くから食べられてきたこと、関西や瀬戸内海にはチヌ飯といった伝統料理が受け継がれていることも紹介されています。さらに、冬季は脂がしっかりのるのでお刺身で食べるとうまみが豊かでとても美味、活魚は高級魚、とまで書かれているんですね。
Hondaの釣魚図鑑も、クロダイの美味しい食べ方として「淡白な白身で美味」と書いています。ただし、すぐ後ろに「生息環境によっては磯臭さを感じることもある」と続けている点は見逃せません。刺身や塩焼き、煮付けなどの和風料理のほか、ムニエルやアクアパッツァなどにしても美味しい、とも紹介されています。
岡山県では、投票で選ぶ「おかやま旬の魚」で、クロダイが秋の第1位に選ばれています。地元で食べる魚として親しまれている、と言えそうです。
では、どんな条件で味の差が出やすいのか。この章で扱う4つの理由を、先に表にまとめておきます。
| まずいと言われる理由 | 資料に書かれていること | 釣り人が自分で避けられるか | この記事の対処 |
|---|---|---|---|
| 時期 | 夏場は臭みが出ることがある(新潟県)/6月は味が落ちるとされる月として試験に使われた(岡山県) | 持ち帰る時期は選べる | 旬の秋〜冬を選ぶ/それ以外の時期は加熱料理に |
| 釣った場所 | 生息環境によって磯臭さを感じることがある(Honda)/生息場所によって臭みが出ることがある(新潟県) | 育った環境は選べないが、釣り場の選び方と持ち帰った後の確かめ方は選べる | 小さく加熱して試してから料理を決める |
| 締め方と血の処理 | 暴れて死ぬと鮮度落ちも早く、不味くなる(北海道立総合研究機構・魚一般についての前置き) | 釣った直後の処理で変えられる | 生きているうちに締めて、海水の中で血を抜く |
| 市場での評判 | 市場価格が安く、漁獲されても生きたまま放流されることが多い(徳島県の報告) | 味そのものとは別の話 | 評判と実際の味を分けて考える |
表の、釣り人が自分で避けられるかの列は、資料をもとにした私の整理です。食べているものと味の関係は、資料で確かめられなかったので表には入れず、後の見出しで別に説明しますね。
まずいと言われやすい時期と旬の分かれ目

チヌがまずいと言われやすいのは、6月ごろから夏にかけてです。資料には、夏場に臭みが出ることがあるという記述と、6月を味が落ちるとされる月として扱った試験があります。ただし、月ごとに味を分析した資料では、夏の中でも分かれ方が一様ではありませんでした。
新潟県佐渡地域振興局の「佐渡のお魚情報通信」は、クロダイの料理例を紹介したうえで、「クロダイは夏場や生息場所によって臭みが出ることがあります」と書いています。時期の面では、夏場がひとつの目安になりそうです。
岡山県農林水産総合センター水産研究所は、2022年5月から2023年4月に水島灘(倉敷市沖)で漁獲されたクロダイの呈味(舌で感じる味の成分)や遊離アミノ酸などを、月ごとに分析しています。その結果、時期などによって3つのグループに分かれ、特に10〜2月を含むグループは旨味が強い傾向が見られた、とされています。研究ポスターの図を見ると、旨味が強い側のグループ(「旬は秋〜冬」と書かれた楕円)には10・11・12・1・2月に加えて7月も入り、もう一方のグループに4・5・6・8・9月、3月は1つだけ離れた位置に分かれていました。同じ研究では、加熱調理の試験に「味が落ちるとされている6月」に漁獲されたクロダイを使っています。
ここで、チヌの1年の暮らしも並べてみます。千葉県の資料では産卵期は4〜6月、Hondaの釣魚図鑑では関東地方での産卵期は4〜5月です。DAIWAが運営する子ども向け釣りクラブの解説ページ(4コマ水産学)では、春季(4〜6月)を産卵期、夏季(7〜9月)を代謝活性や摂餌活性が上がる活性上昇期とし、夏の活発な摂餌は産卵の回復を補うためである可能性が高い、と説明しています。秋季(10〜12月)は脂肪含量最大期で、特に10月に脂肪含量が最大になるとされています。
| 時期 | チヌの暮らし(資料) | 味についての記述(資料) |
|---|---|---|
| 冬(1〜3月) | 越冬期。摂餌が低下し、肥満度は3月が最小(DAIWA) | 冬季は脂がしっかりのり、刺身でうまみが豊か(水産庁)/1・2月は旨味が強い側のグループ、3月は単独(岡山県の図) |
| 春(4〜6月) | 産卵期。関東は4〜5月(Honda)・千葉県は4〜6月(千葉県) | 6月は味が落ちるとされる月。4〜6月は旨味が強い側とは別のグループ(岡山県) |
| 夏(7〜9月) | 活性上昇期。産卵の回復を補うための摂餌である可能性が高いとされる(DAIWA) | 夏場は臭みが出ることがある(新潟県)/7月は旨味が強い側、8・9月は別のグループ(岡山県の図) |
| 秋(10〜12月) | 脂肪含量最大期。特に10月が最大(DAIWA) | 秋はカルパッチョやムニエルなどにぴったり(水産庁)/10〜12月は旨味が強い側のグループ(岡山県) |
水産庁の資料は秋と並べて春先もカルパッチョやムニエル向きとしていますが、春先が何月ごろかは書かれていないので、表には秋の行だけに入れました。季節の区切りは、DAIWAの解説の分け方に合わせています。表を見ると、旨味や脂の記述は秋から冬に多く、臭みや味が落ちるという記述は、新潟県の夏場と岡山県の6月の2件です。ただし、岡山県の図では7月が旨味の強い側に入っているので、夏ならどの月もまずい、とは言えません。分析も、1つの海域で1年間に獲れたクロダイを調べたものです。私の整理では、6月は産卵期(千葉県・DAIWA)、夏は産卵の回復を補う摂餌の可能性が高いとされる時期(DAIWA)にあたり、味が落ちるとされる時期と重なって見えます。とはいえ、どの資料も、産卵したからまずくなるとは書いていないので、原因と結果の関係までは言い切れないと私は考えています。
ちなみに、春の乗っ込みの時期は、釣り人にとってはうれしいシーズンです。Hondaの釣魚図鑑はベストシーズンを3〜5月と10〜11月とし、堤防の落とし込み釣りでは真夏が最盛期とも書いています。釣れやすい時期と味の良い時期は、必ずしも同じではないんですね。乗っ込み期そのものの味を調べた資料は見つからなかったので、乗っ込みのチヌがまずいかどうかは、決めつけずに個体ごとに確かめるのがいいかなと思います。
川や河口・東京湾のチヌが臭いと言われる理由

川や河口、東京湾のような湾奥で釣ったチヌは臭い、と言われることがあります。資料に書かれているのは、生息環境や生息場所によって臭みが出ることがある、というところまでで、河口や湾奥と臭みを結びつけた記述はありませんでした。場所ごとの臭いの違いをチヌで調べた公的な食味試験も、今回探した範囲では見つかっていません。
Hondaの釣魚図鑑は、クロダイは水深50m以浅の沿岸域にすみ、汽水域でも生活できるので河口付近も釣りのポイントになる、と書いています。新潟県の資料も、環境への適応力が強く、河口に生息している個体は淡水域にまで入ってくることもある、と紹介しています。三重県の資源評価では、クロダイは汽水域〜沿岸岩礁域に生息するとされています。いろいろな場所で暮らせる魚なので、同じチヌでも育った場所の違いが身に出やすいのかもしれません。
そして、Hondaは「生息環境によっては磯臭さを感じることもある」、新潟県は「生息場所によって臭みが出ることがあります」と書いています。どちらの資料も、どんな場所なら臭いのかまでは書いていません。川や河口のチヌがまずいとひとまとめにはできない、ということですね。
東京湾のチヌについて分かっていること
東京湾については、千葉県の資料で、クロダイの漁獲のほとんどが東京湾内湾・内房海域であり、遊漁でも人気が高いとされています。千葉県内では、東京湾側がクロダイの漁獲の中心になっているわけです。
東京湾の魚の臭いを調べた公的な資料としては、千葉県水産試験場の研究報告に、油濁汚染に関する研究の一部として「食味試験による東京湾における異臭魚の種類と分布」があります。昭和49年(1974年)に東京湾で漁獲した魚と、補足として昭和51年(1976年)に館山湾で漁獲した魚の、合わせて18種291尾を食べて異臭を判定したものです。この報告は、それまでの報告で表層回遊性の、比較的内湾奥部の海域を泳ぐ魚が臭いがつきやすいとされていること、東京湾の魚ではおおむねスズキとボラに異臭があるとされていることを紹介し、調査ではスズキが漁獲海域に関係なく高い反応率を示したとまとめています。
ただ、この試験の魚の一覧にクロダイは入っていません。しかも約50年前の調査です。なので、この報告をもとに、東京湾のチヌは臭いとは言えませんし、臭くないとも言えません。東京湾の魚に臭いがつく場合があることを示した古い資料がある、というところまでにとどめておくのが正確かなと思います。
私は、川や河口、湾奥で釣ったチヌほど、帰宅後に身を小さく切って加熱して試してみるのがいいと考えています。臭いが気になったら刺身にはせず、香りの強い食材と合わせる加熱料理に回す、という順番です。湾奥の魚の臭いと安全の考え方は、同じようにまずいと言われやすいシーバスを食べるときの臭みの原因と寄生虫対策でも詳しく紹介しています。
何でも食べる食性と臭みの関係
チヌは何でも食べる雑食の魚なので、食べたものの臭いが身に移るのでは、という話もよく聞きます。ただ、食べ物と身の臭いの関係を調べた資料は、今回探した範囲では見つかりませんでした。ここは、そう言われることがある、と受け止めておくのがよさそうです。
チヌの食性について、資料ごとに書かれていることを並べてみます。Hondaの釣魚図鑑は、二枚貝類、甲殻類、多毛類をおもに食べ、海藻や小魚を食べる場合もあり、コーンやスイカをエサにしてねらうこともある、と書いています。新潟県の資料は「雑食で海藻から他の魚まで幅広く食べています」、水産庁の資料はクロダイの自己紹介として「好き嫌いなく、何でも食べちゃいます」と書いています。
実際に胃の中を調べた資料もあります。徳島県は、令和6年の10月から11月に吉野川河口域でクロダイを採捕し、胃の中身を確かめています。胃の中身が見られたクロダイでは、貝類(特にイガイ)を食べていた個体が最も多く、藻類はほとんど確認されなかった、という結果でした。調べた99尾のうち、胃が空だった割合は62%です。ただし、この調査は食害の影響を調べるためのもので、味や臭いは調べていません。調査はノリ養殖が始まる前の時期に行ったもので、ノリ養殖開始後にも調べる必要がある、と報告自身が書いています。
三重県の資料には、近年は冬季にも湾内にとどまり、養殖黒のりを食べることがある、とも書かれています。季節や場所によって食べているものが変わる例が、資料にも出てくるんですね。
こうして見ると、チヌは確かに幅広く食べる魚です。食性を理由に、この場所のチヌはまずいと決めつけるより、次の見出しで紹介する締め方と血抜きのように、釣り人が確実に変えられるところに力を入れるほうが、結果的においしく食べられると私は思います。チヌの食性や呼び名について、もう少し知りたい場合はチヌとクロダイの違いと見分け方・釣り方・食べ方も読んでみてくださいね。
締め方と血抜きで鮮度に差が出る
釣った後の扱い方でも、鮮度に差が出ます。資料は、魚が暴れて死ぬと鮮度落ちが早く不味くなる、と前置きしています(チヌに限らない魚一般の話です)。血を抜かずに置いておいた場合も、私は味の面で不利になると考えています。
北海道立総合研究機構 釧路水産試験場の記事(「試験研究は今」No.664)は、冒頭で「魚が暴れて死ぬと鮮度落ちも早く、不味くなる」と書いています。そのため、釣り人や漁業者の一部では、生きている魚のエラや尾ビレの付け根、延髄(脳の後ろ側の部分)を切って血を抜く方法が行われてきた、という説明です。これが活締めと呼ばれる方法ですね。
同じ資料によると、魚は水揚げされると暴れ、体の中のATP(生きるためのエネルギーになる物質)が急に減って、死後硬直が始まります。活締めには、この死後硬直を遅らせる、つまり鮮度を保つ効果がある、とされています。
血抜きについては、ニジマスを使った試験で、エラを切るのが効果的だったと報告されています。エラは1枚切っても4枚切っても同じくらいの効果で、包丁でもハサミでも同じくらいだったそうです。ただし、魚が死んでからだと血の抜ける量はかなり少なくなる、とも書かれています。さらに、効率のよい血抜きと鮮度を保つことを両立するには、延髄を切ってからすぐにエラを切るのがよい、とまとめられています。
魚の生臭さについては、環境省の化学物質のファクトシートに、トリメチルアミンは魚が腐敗したときの臭いの主要成分です、と書かれています。チヌに限った話ではありませんが、釣った後の扱いで鮮度を落とさないことが、臭いを出さないことにもつながる、と私は考えています(チヌの臭いを直接調べた資料は見つかっていません)。
北海道立総合研究機構の試験はニジマスで行われたものです。チヌで同じ数値になるとは限らないので、時間などは目安として受け止めてください。(出典:北海道立総合研究機構「「活締め」と「脱血」の効果的方法」)
市場で安い魚という見方もある
チヌがまずいと言われる背景には、味そのものとは別に、市場価格が安い魚という見方もあるようです。安い魚イコールまずい魚、というイメージが広がりやすいのかもしれません(ここは私の推測です)。
徳島県の調査報告は、目的の説明の中で、クロダイなどは市場価格が安く、漁獲されても生きたまま放流されることが多い、と書いています。岡山県農林水産総合センター水産研究所のコラムでも、クロダイの食害が激しくなっている背景として、魚価の低下と漁獲圧の減少による資源量の増加など諸説があること、食文化や市場価値の変化に伴って漁獲対象としての魅力が下がっている可能性もあることが紹介されています。
一方で、同じ岡山県のコラムを書いた研究員は、子どもの頃から塩焼きや刺身で美味しく食べてきたと書き、クロダイを利活用できる魚としています。水産庁も、クロダイは釣り人には人気だけれど、まだあまり知られていないので、もっと知ってもらいおいしく食べてもらいたい、という形でプロジェクトを始めています。賛同メンバーには、兵庫県、岡山県、広島県、香川県、千葉県などの府県や、研究機関が名を連ねています。同じ資料には、活魚は高級魚です、とも書かれていて、値段の評価も地域や状態で分かれると言えそうです。
つまり、市場で安いことと、食べてまずいことは別の話です。値段の評判がそのまま味の評判として語られている部分もある、と考えておくと、ネットのまずいという声に振り回されにくくなりますよ。
チヌがまずいのはなぜかを知って、おいしく食べる手順
ここからは、チヌがまずいのはなぜかを踏まえて、釣り人が自分でできることを紹介します。旬を選ぶこと、釣った直後の締め方と持ち帰り、帰宅後の下処理、そして臭いが気になる個体の料理の選び方の4つです。魚が育った環境や食べてきたものは選べませんが、時期と処理は釣り人が変えられます。刺身で食べたい場合の寄生虫や食中毒の注意もこの章でまとめ、最後に、刺身にするか加熱料理にするかを決めるための判断の目安を表にしています。釣り場から帰ってきたときに見返してもらえるとうれしいです。
旬の秋から冬に食べるのがいちばんの近道
チヌをおいしく食べたいなら、旬の秋から冬に釣った個体を選ぶのがいちばんの近道です。資料の旨味や脂についての記述は、この時期に集まっています。
岡山県の研究ポスターは、月ごとの分析の結果をまとめて「旬は秋〜冬」と書いています。前の章の表のとおり、DAIWAの解説の10月の脂肪含量、水産庁の冬季の脂の記述もこの時期です。Hondaの釣魚図鑑のベストシーズンにも10〜11月が入っているので、秋は釣りやすさと味の両方で狙い目の時期と言えそうです。ほかの海域でも同じ月に同じ傾向になるとは限らないので、旬の月は目安として受け止めてくださいね。
旬の個体なら、刺身や塩焼きの身だけでなく、頭やアラも使えます。水産庁の資料は、頭やアラはみそ汁やスープにすると、うま味たっぷり、でも後味はすっきりの出汁がとれる、と紹介しています。1尾を余さず楽しめそうですね。
反対に、6月ごろや夏場のチヌは、持ち帰るなら加熱料理を前提に考えておくと安心です。6月に獲れた個体で加熱の試験をした結果を、後の見出しで紹介します。
鮮度を落とさない締め方と持ち帰りの手順

釣ったら生きているうちに締めて血を抜き、そのあとは冷やし続けて持ち帰る。私は、これが臭みの面でも大事だと考えています(臭いを直接調べた資料は見つかっていないので、鮮度を保つための手順として紹介します)。北海道立総合研究機構の試験結果と、大阪府の食中毒予防の資料をもとに、流れを整理します。
- 釣れたら、なるべく暴れさせないように取り込む
- 生きているうちに延髄を切って締め、続けてエラを切る(エラは片側1枚でもよい)
- 海水を入れたバケツなどに入れ、海水の中で5〜15分ほど血を抜く(ニジマスの試験での目安で、チヌでの試験は見つかっていません)
- 血が抜けたら、氷を入れたクーラーボックスで冷やして持ち帰る
手順の2と3は、北海道立総合研究機構の資料にもとづいています。資料は、魚を空中に出しておくと血液が固まるので、血抜きは必ず海水中で行い、置いておく時間は5〜15分間としています。エラを切る道具は、包丁でもハサミでも同じくらいの効果だったとされているので、使い慣れたほうで大丈夫です。
手順の4は、食中毒の予防のためでもあります。大阪府の資料によると、腸炎ビブリオという食中毒の原因菌は、海の河口部や沿岸部にすみ、37℃前後なら10分で倍に増えるほど増え方が速く、4℃以下ではあまり増えません。チヌは河口付近でも釣れる魚なので、釣った後は冷やし続けることを意識しておきたいですね。
潮氷の作り方やクーラーへの入れ方は、ほかの魚の例ですがエラを切る血抜きの手順と潮氷での持ち帰り方も参考になると思います。
海水を汲んで血抜きをするなら、ロープ付きの水汲みバケツがあると堤防の上からでも作業しやすくなります。水を汲むときは、足元と転落に十分注意してくださいね。たとえば次のような商品があります。価格や在庫は変動するので、購入前に各ショップで確認してくださいね。
エラを切るのは、魚をさばくためのフィッシュナイフや、釣り用のハサミでも行えます。刃物を使うので、魚が暴れたときに手を切らないよう、タオルなどで押さえてから作業しましょう。たとえば次のような商品があります。
臭みの元を落とす下処理とさばき方

家に帰ったら、すぐに内臓を取り、中骨に付いた血ワタまでていねいに掃除しましょう。帰るまでに時間がかかるときは、釣り場で内臓を出しておくことも考えておくと安心です。血や内臓をきれいに落としておくことが、臭みの取り方のいちばんの基本になると私は考えています。
Hondaの釣魚図鑑のクロダイのさばき方では、次の流れが紹介されています。
- 専用のウロコ引きで胴体全体のウロコを引き落とし、ヒレ際に残ったウロコは包丁の切っ先でこそげ落とす
- 胸ビレと腹ビレに沿って両側から包丁を入れて頭を切り落とし、腹を割って内臓を取り出す
- 中骨に多量に付いている血ワタに切っ先で筋目を入れ、竹製のササラや歯ブラシでこすって掃除する
- 水洗いしたあと、水気をふき取る
刺身用の節身にするときは、3枚おろしにしたあとで血合骨を薄くそぎ取り、皮を引く流れになっています。頭をあら煮や酒蒸しにする場合も、エラや血ワタを掃除する、とされています。
内臓を早めに取るのは、寄生虫の面でも大事です。厚生労働省は、アニサキスによる食中毒の予防として、丸ごと1匹で購入した場合は速やかに内臓を取り除くこと、内臓を生で食べないこと、目視で確認してアニサキス幼虫を取り除くことを呼びかけています。アニサキス幼虫は、寄生している魚介類が死んで時間がたつと、内臓から筋肉に移動することが知られている、とも書かれています。厚生労働省のページで寄生する魚として挙げられているのはサバやアジなどで、クロダイは名前が出ていませんが、寄生しないと書かれているわけでもありません。釣った魚も同じ考え方で扱っておくのが安心です。
洗うときは水道水で大丈夫です。大阪府の資料では、腸炎ビブリオは塩分を好み真水に弱いので、魚介類は真水でよく洗い、魚介類を扱った手指や調理器具もよく洗うことが予防方法として挙げられています。
Hondaのさばき方でも最初に専用のウロコ引きを使っているように、ウロコ引きがあると下処理がかなり楽になります。台所で使うなら、ウロコが飛び散りにくい形をうたった商品もあります。価格や在庫は変動するので、購入前に各ショップで確認してくださいね。
臭いが気になる個体は加熱料理に回す
身を少し焼いてみて臭いが気になる個体は、刺身にせず加熱料理に回すのがおすすめです。6月に獲れた個体を加熱すると旨味後味が上がったという試験結果と、香りの強い食材で臭みが気にならなかったという調理例が、資料にあります。
岡山県の研究では、味が落ちるとされている6月に漁獲されたクロダイを、茹でる・蒸す・焼く・電子レンジの4種類の方法で加熱し、味覚センサー(人間の舌の構造を模した、味の濃さを数値で表すセンサー)で加熱前と後の味を比べています。その結果、すべての調理法で「旨味後味」が上がった、とされています。研究ポスターの表をそのまま並べると、次のとおりです。
| 調理方法 | 旨味先味 | 旨味後味 | 塩味 |
|---|---|---|---|
| 生 | 0.0±0.3 | 0.0±0.8 | 0.0±0.9 |
| 蒸 | -0.1±0.3 | 2.8±0.8 | 1.6±1.2 |
| 茹 | -0.3±0.1 | 2.6±0.2 | 0.4±0.6 |
| 焼 | 0.5±0.0 | 6.5±0.5 | 0.7±0.6 |
| レンジ | 0.4±0.1 | 5.4±1.4 | 1.5±1.0 |
表は加工前を0として補正した値で、平均値±標準偏差で示されています。数字だけを見ると、旨味後味がいちばん大きく上がったのは焼いたもので、次が電子レンジでした。ポスターでは、蒸すことで旨味後味と塩味が上がるとも紹介されています。ここで言う塩味は、塩分の少ない魚肉などでは味の濃さを示すもの、と説明されています。(出典:岡山県農林水産総合センター水産研究所「クロダイの旬とおいしい食べ方の研究」)
大事な注意点として、この試験が測ったのは味の濃さで、臭いではありません。加熱すれば臭みが消える、という結果ではないんですね。研究は、旬以外の時期でも加熱調理で旨味を補う工夫をすればよりおいしく食べられる、とまとめていますが、試験に使ったのは6月の個体です。
臭いについては、新潟県の資料の調理例が参考になります。三枚におろしたクロダイにハーブソルトで下味をつけ、ニンニクをオリーブオイルで炒めて香りを立ててから焼き、トマトと水で煮るアクアパッツァにしたところ、ニンニクとスパイスを使ったことで臭みもなくとてもおいしく仕上がった、と書かれています。1回の調理例ですが、臭いが気になる個体の料理を選ぶヒントになりますね。
刺身にするか加熱するかの判断の目安
資料をもとに、私なりの判断の目安を表にまとめました。資料がこの順番を示しているわけではありません。
| 個体の状態 | おすすめの食べ方 | 理由 |
|---|---|---|
| 秋〜冬の旬に釣り、生きているうちに締めて冷やして持ち帰った個体で、焼いて試しても臭いが気にならない | 刺身・塩焼き・煮付けなど何でも | 旬の時期は旨味が強い傾向(岡山県)・冬は脂がのる(水産庁)。刺身は内臓の早めの除去と目視の確認が前提 |
| 6月ごろや夏場の個体、または焼いて試すと少し臭いが気になる個体 | 皮を引いた身で、アクアパッツァのようにニンニクや香味野菜を合わせる加熱料理 | 夏場は臭みが出ることがある(新潟県)・ニンニクとスパイスで臭みもなく仕上がった調理例(新潟県)・6月の個体の加熱で旨味後味が上がった(岡山県) |
| 持ち帰りに時間がかかった、においや見た目に強い違和感がある | 無理に食べない | 腐敗したときの臭いの成分の記述(環境省)・食中毒の予防(大阪府) |
皮を引くかどうかは、資料に臭いとの関係が書かれていたわけではありません。Hondaのさばき方でも刺身用の節身にするときは皮を引いているので、臭いが少し気になる個体は皮を引いたほうが食べやすいかなと思う、という私の考えです。
加熱するときは、中心まで十分に火を通しましょう。厚生労働省は、事業者向けの予防方法として、アニサキスは70℃以上、または60℃なら1分の加熱を挙げています。大阪府は、腸炎ビブリオは60℃10分間の加熱で死滅するとしています。調理後はできるだけ速やかに、2時間以内に食べることも、大阪府の予防方法に入っています。
生で食べるかどうか迷ったら、加熱料理にするのが安心です。生食の判断や体調に不安があるときは、自分だけで決めないでくださいね。寄生虫や食中毒の最新の情報は、厚生労働省や自治体の公式サイトをご確認ください。
チヌがまずいと言われることについてよくある質問
チヌは冷凍すれば臭みが取れる?
冷凍で臭みが取れるかどうかを調べた資料は、今回探した範囲では見つかりませんでした。なので、臭み取りの目的で冷凍することはおすすめしにくいです。
冷凍は、どちらかというと寄生虫の対策として知られています。厚生労働省は、事業者向けの予防方法として、アニサキスは-20℃で24時間以上の冷凍を挙げています。これは魚の中心部までその温度で凍っていることが前提の目安です。家庭の冷凍庫がこの温度になるかは機種によって違い、身の厚い魚では中心まで凍るのに時間もかかるので、家庭の冷凍だけで安心とは言い切れません。生で食べるか迷ったら、加熱料理にしましょう。
酢締めや醤油漬けにすれば刺身でも安心?
寄生虫の面では、安心とは言えません。厚生労働省は、一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません、と書いています。
味付けで臭いが気になりにくくなることはあるかもしれませんが、生で食べるなら、内臓を早めに取ること、目視で確認することが前提です。迷ったら加熱料理にしましょう。
チヌの内臓や白子は食べられる?
私はおすすめしません。厚生労働省は、アニサキスの予防として、内臓を生で食べないでくださいと呼びかけています。チヌの内臓の味や安全性を調べた資料も見つからなかったので、身をおいしく食べることに集中するのが無難かなと思います。
頭やアラを使いたい場合は、水産庁の資料にあるように、みそ汁やスープにすると、うま味たっぷりの出汁がとれますよ。
チヌがまずいと言われるのはなぜかのまとめ
チヌがまずいと言われるのはなぜかを、資料をもとに整理してきました。チヌは本来、水産庁が大変おいしい魚と紹介している白身魚です。味の差が出やすいのは、時期、釣った場所、釣った後の処理の3つで、そこに市場価格が安いという見方が重なっている、というのがこの記事の結論です。
- 夏場は臭みが出ることがあり(新潟県)、6月は味が落ちるとされる。岡山県の分析では旨味が強い傾向は10〜2月を含むグループで、7月もこちら側に入っていた
- 生息環境や生息場所によって臭みが出ることがある。川や河口・東京湾のチヌを場所だけで決めつけず、焼いて試してから料理を決める
- 食べ物と臭いの関係は、資料では確かめられなかった
- 釣ったら生きているうちに締めてエラを切り、海水の中で血を抜いて(ニジマスの試験で5〜15分)、冷やして持ち帰る
- 帰宅したら早めに内臓を取り、血ワタを掃除して真水で洗う
- 臭いが気になる個体は、皮を引いて香りの強い食材と合わせる加熱料理に。6月の個体の加熱で旨味後味が上がった試験結果がある
チヌをおいしく食べるために、釣り人ができるのは、旬を選ぶ、すぐ締めて血を抜いて冷やし続ける、早めに下処理する、臭いが気になる個体は料理を選ぶ、の4つです。味の差が出やすい条件のうち、時期と処理は自分で選べますよ。
この記事で紹介した数値や時期は、資料に書かれていることをもとにした一般的な目安です。正確な情報は公式サイトをご確認ください。食中毒や寄生虫が心配なとき、体調に不安があるときは、最終的な判断は専門家にご相談ください。次にチヌが釣れたときは、季節と処理を意識して、ぜひおいしく味わってみてくださいね。
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