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万年筆は左利きでも使える|書けない・汚れる原因と紙の向き・持ち方・LHペン先
左利きでも万年筆はすらすら書ける?書きにくさの原因と、紙・持ち方・ペン先の整え方
万年筆に興味はあるけれど、自分は左利きだから無理かもと迷っていませんか。試し書きで線がかすれた、紙に引っかかって書けない、手の側面がインクで汚れる。どれも左利きの人がつまずきやすいところなので、左利きと万年筆は相性が悪いように思えてしまいますよね。
結論から言うと、左利きでも万年筆は使えます。書きにくさの多くは、左手で横書きをするときに起きやすいペンを押す動きと、書いたばかりの文字の上を手が通ることから来ていて、紙の置き方や持ち方、ペン先の選び方で軽くできるものが多いんです。左利き用として作られたペン先もあり、LAMYのLHニブのように、LAMYの万年筆(LAMY 2000を除く)ならペン先だけを替えて左利き向けにできるものもあります。
この記事では、左利きで万年筆が書けない、汚れる、と感じる原因を順番にほどき、左利きの書き方のコツ、紙の向き、持ち方の調整、左利き用ペン先の違い、おすすめの選び方、インクと紙の組み合わせまでまとめました。症状からどこを直せばいいかを1枚で見られる早見表も用意したので、今の悩みに近いところから読んでみてくださいね。
- 左利きで万年筆が書きにくくなる3つの原因
- 紙を傾ける・持ち方を整えるなど、道具を買う前に試せる直し方
- LAMYのLHニブなど左利き用ペン先の仕組みと選び方
- 手が汚れにくい字幅・インク・紙の組み合わせ
万年筆が左利きだと書きにくい理由と、まず直すこと
左利きの人が万年筆で困るポイントは、大きく分けて、引っかかる・かすれる、手やページが汚れる、手首が疲れる、の3つです。どれも左手そのものの問題というより、右手で書く前提の文字の流れや道具の作りと、左手の動きがかみ合っていないことから起きています。この章では原因をひとつずつ見ていき、道具を買い替える前に試せる紙の向きと持ち方の直し方、そして症状から直す順番を決める早見表までをまとめます。左利き用の万年筆を探す前にここを読んでおくと、自分に要るのがペン先の交換なのか、置き方と持ち方の見直しなのかを切り分けやすくなります。手持ちの万年筆と、いつも使っているノートや手帳を手元に置いて、試しながら読み進めてみてくださいね。
左利きで万年筆が書けないと感じる3つの原因

まず全体像からいきますね。左利きで万年筆が書きにくい原因は、主に次の3つに整理できます。
1つめは、ペン先を紙に押しつけるように動かしてしまうことです。日本語の横書きも英語も、文字は左から右へ進みます。右手で書くとペンは手のほうへ引かれる形になりますが、左手で書くとペンは手の先へ押し出される形になります。万年筆のペン先は、2枚に分かれた先端(切り割りをはさんだ左右のペンポイント)が紙の上をすべる作りなので、押す向きに動かすと先端が紙の繊維にかかりやすくなり、引っかかりやかすれにつながることがあります。
2つめは、書いたばかりの文字の上を手が通ることです。左から右へ書き進めると、左手は書き終えた文字のすぐ上を追いかけるように動きます。万年筆のインクは水性のものが多く、紙にのってから乾くまでに少し時間がかかるので、乾く前に手の側面が触れると文字がこすれ、手もページも汚れてしまいます。
3つめは、汚れを避けようとして手首を不自然に曲げてしまうことです。文字の上に手を置かないように、手首を内側にぐっと曲げて上から書く姿勢になる人は少なくありません。STABILOはこの姿勢を窮屈な姿勢と説明しています。ペンの角度や向きもずれやすくなり、インクが紙に届きにくくなることもあると考えられます。
この3つは別々に見えて、つながっていることも多いと考えられます。押して書くから引っかかる、汚れるから手首を曲げる、手首を曲げるからペン先の向きがずれてかすれる、という流れです(メーカーの説明ではなく、ここまでの内容をもとにした整理です)。なので、どれか1つだけを直すより、紙の向きと持ち方を先に整えてから、必要ならペン先を替える、という順番で考えるのが近道かなと思います。
なお、文具メーカーのSTABILOは、左利きの子どもが書くことを覚えるときに苦労しやすいのは利き手そのもののせいではなく、身の回りの道具が右利き向けに作られていることが多いからだと説明しています。これは子どもの学習についての説明ですが、大人が万年筆で苦労するときも、道具と姿勢の組み合わせを見直す余地はありそうです。
押して書く動きが引っかかりとかすれを生む
引っかかりとかすれは、左利きの人が万年筆を試したときにいちばん出やすい悩みです。原因を少し詳しく見てみましょう。
万年筆は、ペン芯からペン先へインクが細い溝を伝って流れ、毛細管現象(細いすき間に液体が吸い寄せられる働き)で先端まで届く仕組みです。プラチナ万年筆は、万年筆はほぼ筆圧がいらない筆記具で、必要以上に筆圧をかけるとなめらかに書けないこともあると説明しています。さらに、筆圧をかけすぎると切り割りが広がり、ペンポイントまでインクが伝わらなくなるとしています。
ここで左手の「押す」動きが関係してきます。押して書くと、紙の抵抗に負けないように無意識に力が入ってしまうことがあります。力が入りすぎると切り割りが開き、インクの流れが途切れてかすれる。さらにペン先の角が紙の繊維に引っかかる。こうした悪い循環が起きることがある、と考えられます。
もう1つ見落としやすいのが、ペン先の向きのずれです。プラチナ万年筆は、正しく書くためのポイントとして「角度」と「向き」の2つを挙げ、筆記角度はおよそ45〜60度の範囲、向きについては「ハート穴に空を見せよう」として、ペン先の表側を上に向けて、左右のペンポイントの両方が紙に触れるように持つことを勧めています。左手で書くとき、とくに手首を曲げて書く人は、ペンが軸を中心に回ってペン先が横を向き、左右どちらか一方のペンポイントだけが紙に当たってしまうことがある、と考えられます。そうなるとインクが紙に届かず、線がかすれたり細くなったりします。
LHニブを紹介した記事(Impress Watch・2021年)でも、左利きの筆者が試し書きでインクがまったく出ないことがよくあったと書いています。理由ははっきり分けられませんが、押す力と向きのずれが重なっている可能性はあります。万年筆の故障を疑う前に、まずは力を抜いて、ペン先の表が上を向いているかを見てみてください。新しくインクを入れた直後なら、プラチナ万年筆はインクがペン芯・ペン先に浸透するまで3〜5分ほど待つとしているので、少し待ってから試すのも大事です。
引っかかりやかすれが出たときに確かめたいのは、次の3点です。
- ペン先の表(ハート穴のある面)が真上を向いているか
- ペンを紙に対して立てすぎていないか(目安は45〜60度)
- 線を引くときに紙へ押しつける力が入っていないか
この3点を直しても引っかかりが残る場合は、ペン先の形そのものが左手の動きに合っていない可能性があります。そのときは、後半の章で紹介する左利き用のペン先や丸みのあるペン先を検討すると、ぐっと楽になることがありますよ。
手が文字の上を通ると汚れる・にじむ
次は汚れの話です。左利きの人が万年筆で横書きをすると、書いた直後の文字の上を手の小指側が通っていきます。STABILOは、左手で書くときはペンを紙の上で押し進める必要があり、右利きはペンを引くと説明したうえで、そのために左利きの人は書いたばかりの文字を書く手で覆ったりこすったりしやすいとしています。
万年筆のインクは、ボールペンの油性インクと比べると紙にのってから乾くまでに時間がかかるものが多いです。乾く前に手が触れれば文字はかすれ、手の側面には青や黒の跡がつきます。そのまま次の行へ進むと、今度は手についたインクが紙に移る。左利きの人が万年筆は汚れると感じるのは、だいたいこの流れです。
汚れを減らす方向は、大きく3つあります。
- 手が書いた文字の上を通らない姿勢にする(紙の向き・手の位置を変える)
- 紙にのるインクの量を減らす(細めの字幅を選ぶ)
- インクが乾くまでの時間を短くする、または待つ(紙とインクの組み合わせ・吸取紙)
このうち、お金をかけずにすぐ試せるのが1つめの姿勢です。次の項目で紹介する「紙を傾ける」方法は、汚れと手首の疲れの両方に効きやすいので、最初に試してほしいところですね。2つめと3つめは、道具選びの章で詳しく扱います。
ちなみに、手帳のように行が短く、1行書くごとに手を持ち上げやすい紙面では、汚れが出にくいことがあります。逆に、便せんやA5ノートの横罫に長い文章を書くときは、手が文字の上にとどまる時間が長くなり、汚れやすくなります。どんな紙に何を書くことが多いかも、対策を選ぶときの手がかりになりますよ。
紙を時計回りに傾けてフックの形をほどく
ここからは、道具を替える前に試せる直し方です。いちばん手軽で効果を感じやすいのが、紙やノートの置き方を変えることです。
STABILOは、左利きの人が右利きの人と同じ紙の置き方で書こうとすると、書いたばかりの文字を手で覆ったりこすったりしやすくなり、そのために手首をかぎ(フック)のように曲げた窮屈な姿勢になってしまうと説明しています。そして対策として、紙やノートを時計回りにおよそ45度回して置くことを勧めています。こうすると手が文字の上ではなく下側にくるので、フックの姿勢が要らなくなる、という考え方です(出典:STABILO「Learning to write as a lefty」)。
この助言はもともと子どもが文字を書き始めるときのためのもので、STABILOは大人については述べていません。ただ、手が文字の上を通らないようにするという考え方は、大人が万年筆で横書きをするときにも当てはまりそうです。紙を時計回りに傾けると、横書きの行が右下がりの斜めになり、左手は行の下側から書き進める形になります。すると次のような変化が期待できます。
- 書いた文字の上を手が通らないので、こすれや手の汚れが減る
- 手首を内側に曲げずに済むので、ペン先の表が上を向いたまま保ちやすい
- 腕全体で横に動かせるので、押しつける力が入りにくい
試すときのコツは、いきなり45度ぴったりにしようとしないことです。STABILOの数字も「およそ」なので、まずは少しずつ傾けて、手が文字に乗らない角度を探してみてください。机の広さや紙の大きさ、座る位置でも楽な角度は変わります。左利きの人と右利きの人が並んで座るなら、右利きの人が右側に座るとお互いの腕がぶつかりにくい、という点もSTABILOは挙げています。
傾けた紙がずれて書きにくいときは、下敷きを敷く、ノートを開いた状態で手前の角を少し押さえる、など固定の工夫をすると安定します。手帳なら、書くページだけ開いて手前に引き寄せ、斜めに置くだけでも書きやすさが変わることがあります。
紙の向きを変えるだけで、引っかかり・汚れ・手首の疲れがまとめて軽くなることがあります。左利き用のペン先を買う前に、まずは手持ちの万年筆と紙で、時計回りに少しずつ傾けて書きやすい角度を探してみてください。
ペンを回さず、ハート穴を上に向けて持つ

紙の向きを整えたら、次は持ち方です。左利きの人の書き方は人によってかなり違い、ここでは大まかに次の3つの型に分けて整理してみます。
- 手が行の下側にくる書き方(紙を傾けたときに自然になる形)
- 手首を曲げて、行の上側から書く書き方(いわゆるフックの形)
- 手を行の横に置き、ペン先を立てて真横から書く書き方
どの型でも、万年筆で守りたいのは先ほどの2つのポイントです。ペン先の表(ハート穴のある面)を上に向けることと、紙に対しておよそ45〜60度の角度で持つこと。プラチナ万年筆は、持ち方が少しずれると流れが止まり、万年筆ならではのすらすら感がなくなってしまうと説明しています。
左手で書くときに起きやすいのが、ペンを持つうちに軸が少しずつ回ってしまうことです。手首を曲げる書き方をしていると、ペン先の表が自分のほうや左側を向きやすくなります。書き始める前に、キャップを外したペン先を目の高さで見て、ハート穴が真上を向いていることを確かめ、その向きのまま握る習慣をつけるとずれにくくなります。軸に印や平らな面がある万年筆なら、指を置く位置を決めておくのも手です。
角度については、立てすぎにも寝かせすぎにも注意です。左手で押して書く人は、引っかかりを避けようとしてペンを立て気味にしがちですが、立てすぎると先端の角が紙に当たりやすくなります。反対に寝かせすぎると、ペンポイントの丸い部分ではなく横の面が紙に触れてしまいます。45〜60度はあくまで目安なので、線がかすれずに出る角度を、少しずつ変えながら探してみてください。
力の入れ方も見直したいところです。万年筆は筆圧がほとんどいらない筆記具なので、紙にのせて動かすだけで線が出るのが理想です。押して書く左手では、とくに横線で力が入りやすいので、横線だけ意識して軽くする、腕ごと動かして指先の力を抜く、と意識するだけでも書き味が変わることがあります。
どうしても今の書き方を変えにくい人もいますよね。長く身についた書き方を急に変えると、字の形が崩れたり疲れたりすることもあります。その場合は無理に直さず、今の書き方に合うペン先を選ぶ、という考え方で大丈夫です。たとえばLAMYには、ペンポイントが傾いたオブリークのペン先(OM・OB・OBB)があり、LAMYは「手首を内側に捻って持つ方」向けと説明しています(LAMYの日本語サイトでは、OM・OBはゴールドのペン先のみ、OBBはLAMY 2000のみの展開とされています)。ただし、左利きの人の書き方に合うかどうか、手首の疲れが減るかどうかまではLAMYは述べていないので、試すなら販売店で書き比べてからにしてください。
症状別にどこから直すかの早見表

ここまでの内容を、症状から直す順番を決められるように1枚の表にまとめました。上の行ほどお金がかからず、すぐ試せる順に並べています。
| 今の症状 | 考えられる原因 | まず試すこと | それでも続くとき |
|---|---|---|---|
| 横線で紙に引っかかる | ペンを押す動き・押しつける力・ペンの立てすぎ | 紙を時計回りに傾ける/力を抜いて腕で動かす/角度を45〜60度の範囲で探す | 丸みのあるペン先や左利き用ペン先(LAMYのLHなど)を試す |
| 線がかすれる・インクが出ない | ペン先の向きのずれ(ハート穴が横を向く)・筆圧のかけすぎ | 書く前にハート穴が真上かを見る/握っている間に軸が回っていないか確かめる/インクを入れた直後なら3〜5分ほど待つ | 左利き用ペン先に替える/販売店で試し書きしてペン先の相性を見る |
| 手の側面やページが汚れる | 乾く前の文字の上を手が通る | 紙を傾けて手を行の下側に置く/書いた行に手を戻さない | 細めの字幅にする/吸取紙を使う/乾きやすい紙とインクの組み合わせを探す |
| 手首や指が疲れる | 汚れを避けるためのフックの姿勢・強い握り | 紙を傾けて手首を伸ばす/握る力をゆるめる | 握りやすい軸の万年筆を販売店で書き比べる |
| 書き始めの1画目が出ない | ペン先の向きのずれ・インクの乾き | ハート穴を上にしてから紙に置く/キャップをこまめに閉める | インクの出が落ちていれば洗浄や点検を検討する |
表の使い方は簡単で、いちばん困っている症状の行を選び、左から順に試していくだけです。たとえば「汚れる」と「引っかかる」の両方があるなら、どちらの行にも出てくる「紙を傾ける」から始めるのが効率的ですね。
表の右端は道具の見直しです。紙の向きと持ち方を整えたうえで、それでも症状が残るときに考えればじゅうぶんです。最初から左利き用の万年筆を探すより、今の書き方で何が起きているのかを先に見たほうが、ペン先選びも外れにくくなります。
ここで挙げた原因と対策は、一般的な傾向をもとに整理したものです。書き方の癖、手の大きさ、使う紙によって合う方法は人それぞれなので、正確な情報は各メーカーの公式サイトや取扱説明書をご確認ください。ペン先の調整や修理が必要そうなときの最終的な判断は、販売店やメーカーの窓口に相談するのがおすすめです。
左利き用の万年筆を選ぶときのペン先・インク・紙
紙の向きと持ち方を整えても書きにくさが残るなら、道具の出番です。この章では、左利き用ペン先が普通のペン先と何が違うのか、手持ちのペンを左利き向けにできるLAMYのLHニブ、そのほかのメーカーの左利き向けモデル、そして汚れにくさに関わる字幅・インク・紙の選び方までを順番に見ていきます。最後によくある質問と、記事全体のまとめを置いています。左利き用と書かれた万年筆やペン先は、表記の意味や売られ方が右利き用と少し違うので、買ってから思っていたのと違ったとならないための確かめ方もあわせて紹介します。どのメーカーの情報が公式のもので、どれが紹介記事や販売店の情報なのかも分けて書いているので、選ぶときの判断材料にしてください。
左利き用ペン先とは何が違うのか
左利き用のペン先は、ひとことで言うと、押して書いても紙に引っかかりにくく、左手の角度でもインクが紙に届きやすい形に整えられたペン先です。メーカーごとに作り方は違いますが、公表されている情報から共通点を拾うと、次のようになります。
LAMYは、左利き用のLHペン先について、左利きの人が引っかかりやインクのにじみ(こすれ)なく楽に書けるよう特別に設計したもので、そのために特別な斜めのカットを施していると説明しています。また、同社のペン先の分類では、LHはMと並んで丸みのあるペン先(Rounded nibs)に分類され、LHは左利き向けに最適化されたペン先と説明されています。
LHニブを紹介した記事(Impress Watch・2021年)では、ペン先がほんのわずかに左右非対称で、先端の丸い突起(ペンポイント)も大きめだと紹介されています。先端が丸く大きいと、押す向きに動かしても角が紙の繊維にかかりにくくなるので、引っかかりの軽減につながる、という理屈ですね。
ここで注意したいのが、左利き用の表記は字幅ではないという点です。LAMYは、EF・F・M・Bなどの略号は紙の上の線の幅(字幅)を表すものの、AとLHは例外で、Aは万年筆の初心者、LHは左利きユーザーのニーズに応えるために設計されたペン先だとしています(出典:LAMY 万年筆ペン先ガイド)。つまり「LH」と書かれていても、細字なのか中字なのかは別に確かめる必要があります。先ほどの紹介記事では、LHニブの線の太さは右利き用のM(中字)相当でやや太め、と書かれていました。
左利き用ペン先を試す価値があるのは、たとえば次のような場合です(ここまでの内容をもとにした目安です)。
- 紙を傾けても、横線を書くときの引っかかりが残る
- 押して書く癖があり、普通のペン先だと線が途切れやすい
- 試し書きで、右利き用のペン先だとインクがほとんど出なかった
反対に、紙の向きを変えただけで快適に書けるようになった人や、手を行の下側に置いて書ける人は、普通のペン先のままで足りることもあります。左利きだから必ず左利き用が要る、というわけではないので、ここは自分の書き方で決めてくださいね。
LAMYのLHニブは交換だけで左利き用になる
左利き用のペン先を手軽に試したい人にとって、いちばん現実的な選択肢がLAMYのLHニブです。LAMYは、同社の万年筆に使える交換用のペン先を用意していて、ペン先だけを付け替えることで書き味を変えられる仕組みになっています。
LAMYの説明では、同社の万年筆は基本的にどのペン先とも組み合わせられ、例外はLAMY 2000だけです。サファリやアルスターのようなLAMYの定番の万年筆なら、本体はそのままでLHニブに付け替えられる、ということですね。LHは、同社のスチール製ペン先(Z50)のラインに用意されています。
ペン先の交換も、専用の工具は要りません。LAMYが紹介している手順は次のとおりです。
- 小さな硬貨か、万年筆のキャップのふちを、ペン先の先端あたりに片手でそっと押し当て、机の上に置く
- 万年筆をまっすぐ後ろへ、軽い力で引く(古いペン先は机の上に残る)
- 新しいペン先をガイドレールに沿って、カチッと止まるまで差し込む
作業の前には、ペン先のまわりのインクを拭いておくと手や机を汚しにくいです。ペン先はとても薄い金属なので、こじったり曲げたりしないよう、まっすぐ抜いてまっすぐ差すのがポイント。不安な人は、購入する販売店に交換を相談するのも安心ですね。
入手するときの注意もあります。LAMYの日本語サイトでは、EF(極細字)・F(細字)・M(中字)以外のペン先の万年筆は、実店舗では取り扱いの対象外か、取り扱い数が限られている場合があるので、事前に問い合わせてから来店することを勧めています。LHも、文具店の店頭に並んでいないことは十分ありえます。店頭で買いたい人は電話などで在庫を確かめ、通販で買う人は商品名や型番に「LH」とあるか、並行輸入品かどうか、販売元や保証の扱いまで確認しておくと安心です。
また、LAMYは、ペン先は好みやニーズで選ぶものなので、信頼できる取扱店で実際に書き比べて試すことを勧めています。LHニブも、合う人と合わない人がいるはず。可能なら試し書きをして、紙を傾けた姿勢で横線がすっと出るかを見てみてください。
なお、LAMYには初心者向けのAペン先もあります。LAMYはAについて、丸みのある形が慣れない手の筆圧の不ぞろいを補い、紙への引っかかりを防ぐもので、とても丈夫だと説明しています。左利き専用ではありませんが、力が入りやすい人の候補として、比べてみる価値はあるかもしれません。
LHニブ単体と、LHのペン先が付いた状態で売られているサファリはこちらから探せます。並行輸入品も多いので、購入前に、ペン先の表記(LH)と対応機種、価格・送料・販売元や保証の扱いを各ショップでご確認ください。
ペリカン・STABILO・セーラーの左利き向けモデル
LAMY以外にも、左利き向けのモデルを用意しているメーカーがあります。公表されている情報の出どころと合わせて整理しておきますね。
STABILOは、子ども向けの学習用万年筆「EASYbirdy」に、左利き用と右利き用の専用モデルを用意しています。滑りにくいグリップが正しい持ち方を身につける助けになること、ペン先の角度を3段階に調整できて手の位置に合わせられること、ペン先が覆われた作りで指がインクで青くなるのを防ぐことなどを、特徴として挙げています。ペン先はA・M・EFの3種類で、EFは欧州では販売されていないとされています。対象はSTABILOの表記で5〜8歳の子どもなので、大人向けの道具としてではなく、左利きのお子さんの最初の1本の候補として見るのがよさそうです。
ペリカンの子ども向け万年筆「ペリカーノジュニア」については、グリップの表面にある大中小3つのくぼみに指を合わせると、自然に正しい持ち方ができると比較記事(マイベスト)で紹介されています。このくぼみは持ち方の練習のための工夫で、左利き専用の工夫ではありません。左利き向けなのはペン先のほうで、国内の通販でも「L」「左利き用」と書かれたペリカーノジュニアの正規輸入品が出品されています(右利き用は「A」の表記)。海外の販売店(LarryPOST)には、ペン先を中字・細字・左利き用(Left Handed)から選べるペリカーノの商品もあります。同じシリーズでも右利き用と左利き用があるので、買うときは商品名に左利き用の表記があるかを必ず確かめてください。
国内メーカーでは、セーラー万年筆の「レフティ」が、左利き用の万年筆として紹介記事(Impress Watch)や比較記事(マイベスト)で取り上げられています。比較記事では、ペンポイントを丸くしたうえで左側の形をカットしていると紹介されています。ただ、メーカー公式の現行の品ぞろえまでは確かめられなかったので、気になる人はセーラー万年筆の公式サイトや取扱店で、販売状況と仕様を確認してから選ぶのが確実です。
ここまでの内容を、出典の種類と合わせて表にまとめました。
| メーカー・モデル | 左利き向けの工夫 | 字幅の表記 | 向いている人 | 情報の出どころ |
|---|---|---|---|---|
| LAMY LHペン先(Z50) | 引っかかりとこすれを抑える特別な斜めのカット・丸みのあるペン先 | LHは字幅ではない(紹介記事ではM相当とされる) | LAMYの万年筆を持っている・ペン先だけ替えて試したい人 | メーカー公式(LAMY)・紹介記事 |
| STABILO EASYbirdy(左利き用) | 左利き用の専用モデル(滑りにくいグリップ)・ペン先の角度を3段階で調整・ペン先を覆う作り | A・M・EF(EFは欧州では販売なし) | 書き方の練習をする子ども(5〜8歳向け) | メーカー公式(STABILO) |
| ペリカン ペリカーノ・ペリカーノジュニア | 左利き用はLのペン先(国内通販の商品名)・くぼみつきのグリップは持ち方の練習用(ジュニア) | L=左利き用(右利き用はA) | 持ち方が安定しない人・子ども | 比較記事・国内通販の商品名・海外の販売店 |
| セーラー万年筆 レフティ | ペンポイントを丸くし、左側の形をカット(比較記事の紹介) | 商品ごとに確認 | 国内メーカーの左利き向けを探している人 | 紹介記事・比較記事(現行品は公式で確認) |
表の右端の列にあるように、メーカー公式で確かめられるものと、比較記事や販売店の情報だけのものがあります。仕様や販売状況は変わることがあるので、正確な情報は各メーカーの公式サイトをご確認ください。どれを選ぶか迷ったときは、まず左利き用のペン先そのものを試せるLAMYから入り、グリップの形まで欲しくなったら子ども向けモデルも比べる、という順番がわかりやすいと思います。
持ち方が安定しない人向けの選択肢として、ペリカーノジュニアの左利き用はこちらから探せます。右利き用と並んで売られていることがあるので、商品名の「左利き用」の表記を確かめてから選んでくださいね。
字幅は細めから、インクと紙は乾きやすさで選ぶ
最後は、汚れにくさに関わる字幅・インク・紙の選び方です。ペン先の形が引っかかりに効くのに対して、こちらは主に、手が文字に触れても汚れにくくするための工夫になります。
字幅は、迷ったら細めから試すのがひとつの目安かなと思います。線が細いほど紙にのるインクの量は少なくなるので、乾くまでの時間が短く感じられることが多く、手でこすったときの汚れも小さくなりやすいからです。なお、LAMYは字幅について、書く文字が小さいほど細いペン先、大きな文字には幅広のペン先がよく選ばれる、と文字の大きさで選ぶ考え方を示しています。手帳の小さなマスに書くことが多いなら、EFやFが候補になりますね。ただし、細い字幅ほど紙あたりが硬く感じられ、押す動きで引っかかりを感じることもあります。引っかかりが気になる人は、丸みのあるMやLHを試し、汚れは紙の向きで避ける、という組み合わせも考えられます。手帳に合うペンの太さや長さをもっと比べたい人は、手帳用ペンをホルダーに入る太さ・長さで選ぶ方法も参考になりますよ。
インクについては、同じ万年筆でもインクの種類で乾き方やにじみ方が変わります。一般に、乾きの早さを優先するとにじみや裏抜けが出やすくなるなど、性質の間で一長一短があるので、使う紙との組み合わせで試すのが近道です。インクを替えるときは、ペンのメーカーが勧めるインクを使う、ほかのインクと混ぜない、替える前にペンを洗う、といった基本を守ってください。顔料と染料の違いや、裏抜けの表記の見方は、顔料と染料・裏抜けの表記から選ぶジャーナリング用のペンの記事で整理しています。
紙は、インクを吸い込む速さで汚れやすさが変わります。インクが紙の表面に残りやすい紙は、線がきれいに出るぶん乾くまでに時間がかかることがあります。反対に、吸い込みの早い紙は乾きは早いものの、にじみや裏抜けが出やすくなります。どちらが合うかは、インクとの組み合わせ次第です。ノートや手帳を選ぶときに、罫線の種類や紙質の違いを比べたい人は、罫線・紙質・綴じ方で比べる日付なし手帳と方眼ノートの選び方も見てみてください。
道具以外の小さな工夫もあります。
- 書いたページの上に吸取紙や薄い紙を1枚置き、その上に手をのせて次の行を書く
- 書き終えたページはすぐに閉じず、少し置いてから閉じる
- 手の小指側が触れる位置に、使い捨ての紙を1枚はさんでおく
- 長い文章は1行ごとに手を浮かせ、書いた行に手を戻さない
インクの乾く速さやにじみ方は、インクの種類・紙・字幅・部屋の湿度などで変わります。ここで紹介した傾向はあくまで一般的な目安です。新しいインクや紙を使うときは、大事な書類や手帳の本番ページの前に、端の余白や別の紙で試し書きをしてから使ってください。
まとめると、汚れ対策は、紙の向き・細めの字幅・紙とインクの組み合わせの3つを重ねていくイメージです。どれか1つで完璧にする必要はなく、組み合わせて自分の書き方に合う形を探していけば大丈夫ですよ。
左利き用のペン先を付けた万年筆をノートや手帳と一緒に持ち歩くなら、キャップをしっかり閉めたうえで、ペンケースに入れておくと安心かなと思います。手持ちの万年筆の長さと太さが収まるかは、ショップの寸法表記で確かめてください。
万年筆と左利きについてよくある質問
左利きで縦書きをするときも同じ対策でいいですか?
縦書きは行の進む向きや手の位置が横書きと違うので、汚れやすい場所や楽な紙の向きも変わります。この記事で紹介した紙の傾けは横書きを前提にした方法なので、縦書きでは紙を少しずつ回しながら、手が書いた行に触れない位置を探してみてください。ペン先の向き(ハート穴を上にする)と角度の目安は、縦書きでも同じです。
今持っている万年筆のペン先を左利き用に調整してもらえますか?
万年筆の専門店やメーカーが開く調整の機会では、ペン先の当たりを書き方に合わせて整えてもらえる場合があります。対応の可否や費用は店やメーカーによって違うので、事前に問い合わせてください。自分でペン先を削ったり曲げたりすると元に戻せなくなることがあるので、調整は販売店やメーカーに相談するのが安全です。
左利きの子どもに万年筆を持たせても大丈夫ですか?
STABILOは、左利きの子どもも右利きの子どもも、基本的には同じように書くことを覚えられるとしたうえで、左利き用のグリップを用意した学習用万年筆を出しています。紙を傾ける置き方は、手が文字の上を通るのを防ぐための工夫です。STABILOの学習用万年筆は、左利き用のグリップを正しい持ち方を覚える助けとし、ペン先を覆う作りで指がインクで汚れるのを防ぐとしています。学校で使えるかどうかは、先に学校の決まりを確かめておくと安心です。
左利きで万年筆を楽しむためのまとめ

左利きでも万年筆は使えます。書きにくさの正体は、左手で横書きをするときにペンを押す動きと、書いた文字の上を手が通ること、そしてそれを避けようとして手首を曲げる姿勢でした。ここを順番に整えれば、引っかかり・かすれ・汚れは軽くできることが多いです。
直す順番をもう一度まとめておきますね。
- 紙やノートを時計回りに少しずつ傾け、手が行の下側にくる角度を探す(STABILOは子どもの書き方の助言として、およそ45度回す置き方を勧めている)
- ペン先の表(ハート穴)を上に向け、紙に対しておよそ45〜60度で、力を抜いて持つ
- それでも引っかかるなら、丸みのあるペン先や左利き用のペン先(LAMYのLHなど)を試す
- 汚れが気になるなら、細めの字幅・紙とインクの組み合わせ・吸取紙で手が触れても汚れにくくする
左利き用のペン先は、表記が字幅を表さないこと、店頭に並んでいないことがある点に注意です。買う前に、字幅と対応機種、販売元や保証の扱いを確かめておきましょう。
万年筆の書き心地は、書き方・手の大きさ・紙・インクの組み合わせで大きく変わります。ここで紹介した方法はどれも一般的な目安なので、正確な情報は各メーカーの公式サイトや取扱説明書をご確認ください。ペン先の調整や不具合が気になるときの最終的な判断は、販売店やメーカーの窓口に相談するのがおすすめです。
左利きだからとあきらめず、まずは手持ちの紙を少し傾けるところから。あなたの手に合う書き方とペン先が見つかるといいですね。
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