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万年筆のインクが出ない原因と直し方|水洗い・つけ置きの手順と予防のコツ
万年筆のインクが出ないのはなぜ?原因の見分け方と、家でできる直し方
久しぶりに万年筆を取り出したら、紙にペン先を当ててもインクが出ない。新品のカートリッジを差したのに1文字も書けない。書き始めだけかすれる、途中で線が途切れる。万年筆のインクが出ないときの困りごとは、だいたいこのあたりかなと思います。
せっかくの1本だから、壊れたのかと不安になりますよね。でも、インクが出ないときによくある原因は、インクの乾燥による詰まりや、カートリッジの差し方、ペンの持ち方、紙との相性といった、家で確かめられるものです。水洗いやつけ置き、ぬるま湯での洗浄で戻ることもあります。
この記事では、パイロットやプラチナ萬年筆が公開している取扱いの案内をもとに、インクが出ない原因を症状から見分ける方法と、カートリッジ式・コンバーター式それぞれの洗い方、やってはいけない直し方、修理に出す目安、出ない状態を防ぐ保管のコツまでを順番に整理しました。
読み終えるころには、手元の万年筆がいまどの状態なのか、次に何をすればいいのかが見えてくるはずです。
- 万年筆のインクが出ない原因を症状から見分ける方法
- カートリッジ式とコンバーター式の水洗いとつけ置きの手順
- ペン先を傷めないために避けたい直し方と修理に出す目安
- インクが出ない状態を防ぐ保管と毎日の使い方
万年筆のインクが出ない原因は症状から見分ける
万年筆のインクが出ないといっても、原因はひとつではありません。新品なのか、久しぶりに使ったのか、書き始めだけなのか、特定の紙だけなのか。症状の出方によって、疑うべき場所がかなり絞れます。この章では、よくある6つのパターンを順番に見ていきます。すぐ下に、症状と原因、まず試すことを1枚にまとめた表を置いたので、先に表で全体をつかんでから、手元の状態に近い見出しを読むと早いですよ。
見分けるときに手がかりになるのは、「いつから出ないか」と「どこで出ないか」の2つです。買ってすぐなのか、しばらく使っていなかったのか、インクや紙を替えたあとなのか。そして、1文字も出ないのか、書き始めだけなのか、特定の紙だけなのか。この2つをメモしておくと、原因の候補が自然と1つか2つに絞れます。
| 症状 | 考えられる原因 | まず試すこと | それでも出ないとき |
|---|---|---|---|
| 新品・交換直後から1文字も出ない | インクがペン先まで届いていない・カートリッジの差し方が違う | 空でないか確かめ、取扱説明書どおりに差し直す(パイロットは初回に指で静かにつまんでペン先へ送り出す) | 水洗いしてから入れ直し、それでも出なければ販売店やメーカーに相談 |
| 久しぶりに使ったら出ない | 乾燥で固まったインク成分や異物でペン先・ペン芯が詰まる | 水かぬるま湯で洗う | 一晩つけ置き→専用クリーナー→メーカーの修理窓口の順に進む |
| 書き始めだけ欠ける | 軸を捻って持ち、片側のペン先が浮いている | ペン先を正面に向け、力を入れずに書く | どの持ち方でも欠けるならペン先を点検 |
| 特定の紙に書いたあと途切れる | FAX用紙・感熱紙・インクジェット専用紙のコーティング剤がペン先に詰まる | その紙をやめてペン先を洗う | 洗っても戻らなければ修理に相談 |
| インクを替えてから出が悪い | メーカー違いのインク・対応していないペンへの顔料インク・混ぜたインク・古いインク | 中身を抜いて洗い、同じメーカーの新しいインクを入れる | 洗っても戻らなければ修理に相談 |
| 落とした・筆圧が強いあとからかすれる | ペン先の曲がりや切り割の開き | 自分で曲げ直さずに使用をやめる | 修理に出す |
新品やカートリッジ交換直後に出ないときの確認
新品の万年筆やカートリッジを替えたばかりで1文字も書けないときは、壊れているよりも「インクがまだペン先まで届いていない」ことを先に疑います。万年筆は、カートリッジやコンバーターに入ったインクが、ペン先の下にある「ペン芯」という部品の細い溝を伝ってペン先まで流れていく仕組みです。最初の1回は、この通り道がまだ空っぽなんですね。
パイロットの取扱いの注意では、カートリッジ式を初めて使うときは、カートリッジを差し込んでから指で静かにつまみ、ペン先にインキを送り出してから使うよう案内しています。新品なのに出ないときは、まずこの「送り出し」をしたかどうかを思い出してみてください。
差し込み方で出なくなることもある
もうひとつ多いのが、カートリッジの差し込み方です。パイロットのよくある質問では、カートリッジを回しながら差し込むと蓋がふさがり、インキが出なくなる可能性があるとして、まっすぐ差し込むよう説明しています。逆向きに差すと、インクの蓋を破るための内部の部品が壊れるおそれがあるとも書かれています。
プラチナ萬年筆の取扱説明書では、ペン先を上に向けた状態でゆっくり回しながら、先端のステンレスボールがインクの中に落ちるまで深く差し込む方法になっています。つまり、メーカーによって正しい差し方が違うということ。手元の万年筆と同じメーカーの取扱説明書を見て、差し方を合わせるのがいちばん確実かなと思います。
カートリッジとコンバーターを取り違えていないか
パイロットの使用説明書には、初めてカートリッジを使う場合はコンバーターを引き抜くよう書かれている機種があります。購入時にコンバーターが付いている万年筆だと、カートリッジを差したつもりで実は空のコンバーターのままだった、というすれ違いが起こることもあります。軸を外して、何が付いているかを一度目で確かめましょう。カートリッジを透かして見て、そもそも中身が空になっていないかも、このときに一緒に見ておくと確実です。
コンバーター式の場合は、吸入するときの姿勢も関係します。パイロットのよくある質問では、ペン先を首の部分までインキに浸して吸入すること、ペン先を斜めにすると吸入できなくなること、瓶のインキ残量が少ないと吸入できないことを案内しています。ただ、浸す深さは機種によって指示が違い、パイロットのプッシュ式コンバーターの使用説明書では、ペン先を半分までインキに入れ、先端を瓶の底に当てないよう書かれています。手元の説明書の指示に合わせてください。吸ったつもりで中身がほとんど入っていないと、すぐにかすれてしまいます。
カートリッジはメーカーや機種によって形が違い、合わないものが多くあります。替えを買うときは、手持ちの万年筆と同じメーカーの、対応するカートリッジかどうかを商品名で確かめてから選ぶのが安心ですよ。正しく差し直し、洗っても新品のままインクが出ない場合は、無理に使い続けず、購入した販売店やメーカーに相談してみてください。
久しぶりに使うと出ないのはインクの乾燥と詰まり
数週間から数か月ぶりに使った万年筆が書けない。これは万年筆のインクが出ないときの、よくあるパターンのひとつです。パイロットは、万年筆は長時間使用しないとインキが出にくくなり、その多くは乾燥で固まったインキ成分や異物でペン先や内部(ペン芯)が詰まっていることが原因だと説明しています(出典:パイロット「インキの出が悪いのですがどうすれば直りますか?」)。
万年筆のインクは水が多くを占める液体です。キャップを閉めていても、長く置いておくと少しずつ水分が抜け、ペン先の先端やペン芯の細い溝でインクの成分が濃くなり、やがて固まります。ペン先の細いすき間は、紙にインクを染み出させるための通り道なので、ここがふさがると、カートリッジにインクが残っていても書けなくなるわけです。
固まり方は放置した期間とインクで変わる
プラチナ萬年筆のお手入れの資料では、しばらく使わないときは洗ってから保管するよう勧めたうえで、洗わずに放置するとインクが固まって書けなくなると書いています。ここからは一般的な目安の話になりますが、数日なら先端だけが乾いていて、少し書いているうちに戻ることもあり、数か月単位になると内部まで固まっていると考えておくのが無難です。
どこまで固まるかは、放置した期間だけでなく、置いていた場所の温度や湿度、使っているインクの種類でも変わります。そのため「何日放置したら書けなくなる」と一律には言えません。あくまで一般的な目安として、短期間なら軽い洗浄で、長期間なら一晩のつけ置きまで見込んでおくと慌てずに済みます。
まず試すのは洗うこと
乾燥による詰まりなら、基本の対処は水かぬるま湯で洗うことです。パイロットも、この場合はぬるま湯で内部を洗ってから使うよう案内しています。洗い方の詳しい手順は、次の章の「水洗いの手順」と「一晩のつけ置き」で順番に説明します。
ここで大事なのは、インクを出そうとしてペン先を紙に強く押しつけたり、何度もこすりつけたりしないことです。固まったインクは力では溶けません。先にペン先を傷めてしまうと、洗っても元の書き味に戻らなくなることがあります。
書き始めだけかすれるのは持ち方と角度

インクは入っていて、書き進めると普通に線が出るのに、書き始めの1画目だけ欠ける。このパターンは詰まりより、持ち方を疑ったほうが早いかもしれません。
パイロットのよくある質問では、書き始めの文字が欠ける原因として、無意識に捻った持ち方をして片側のペン先が浮いた状態になり、紙面にインキを伝えられなかったことを挙げています。対策は、ペン先をなるべく正面に向けたまま書くことです。
ペン先は2枚の先端で紙に触れている
万年筆のペン先をよく見ると、中央に「切り割」という細い切れ目が入っていて、先端は左右2つに分かれています。インクはこの切り割を伝って紙に届くので、左右の先端が両方とも紙に触れていないと、インクがうまく移りません。ボールペンの感覚で軸をくるっと回して持つと、片側だけが紙に当たり、書き始めがかすれやすくなります。
確かめ方はかんたんです。ペン先の表側(刻印がある面)を真上に向けたまま、軸を寝かせぎみに持って、力を入れずに横線を何本か引いてみてください。これで書き始めから線が出るなら、ペンではなく持ち方の問題だったということになります。
筆圧はかけなくていい
パイロットは、万年筆はほとんど筆圧をかけなくても、インキの染み出しで書ける筆記具なので、ボールペンのような強い筆圧は必要ないと説明しています。あまり強い筆圧は、ペン先の切り割を広げてしまう可能性があるとも書かれています。
かすれると、ついぎゅっと押しつけたくなりますよね。でも、押すほど切り割が開いてインクの流れが乱れ、かえってかすれる悪循環に入ることもあります。書き始めがかすれるときほど、軽く、ペン先の向きをそろえて書くのがコツです。
紙のコーティングでペン先が詰まることもある
いつもの紙では書けるのに、ある紙に書いたあとからインクが途切れるようになった。この場合は、紙のほうに原因があるかもしれません。
パイロットのよくある質問では、FAX用紙や感熱紙、インクジェットプリンター専用紙は薬品でコーティングされているため、ペン先が表面のコーティング剤を削り取ってしまい、ペン先が詰まって書けなくなることがあると説明しています。インクジェット対応のはがきに宛名を書いたあとに書けなくなった、という流れなら、まずこれを疑ってよさそうです。写真用紙など、表面がつるつるした加工紙でも、同じことが起きる可能性があります。
削りかすが詰まったときの対処
削り取ったコーティング剤が切り割やペン芯の溝に入り込むと、インクの通り道がふさがります。パイロットのよくある質問は原因の説明までなので、ここからは一般的な対処になりますが、まずは乾燥の詰まりと同じようにペン先を洗って、改善するかを試します。洗ったあとは、問題の紙に書くのをやめて、普通の筆記用の紙で試し書きをします。洗っても戻らないときは、メーカーの修理窓口に相談しましょう。
紙そのものの書き心地や、裏抜けのしにくさを選ぶ考え方は、日付なし手帳と方眼ノートの紙質や罫線の選び方で整理しています。万年筆で書くノートを探しているなら、あわせて見てみてください。
紙が原因かどうかの見分け方
紙が原因かを見分けるには、同じ万年筆で、いつも問題なく書けているノートやコピー用紙に書いてみるのがいちばんです。別の紙なら普通に出るなら、その紙との相性。どの紙でも出ないなら、すでに詰まりが残っているか、ほかの原因です。はがきや封筒など、表面が加工されているかどうか分かりにくい紙は、目立たない端で小さく試し書きしてから本番に書くと安心ですよ。
インクの種類と混ぜ方が合っていない
インクを替えてから出が悪くなった、別のメーカーのボトルインクを入れたらかすれるようになった。この場合は、インクとペンの相性を疑います。
パイロットのよくある質問では、パイロット製以外のインキも使うことはできるものの、メーカーごとにインキの粘度や成分が違うため合わないものもあり、スムーズな筆記ができないことがあると説明しています。さらに、顔料系のインキはパイロットの万年筆では不具合の原因になるので使わないよう案内しています。プラチナ萬年筆も、自社の商品にはプラチナの補充用品を使うよう取扱説明書で求めています。
インクを混ぜない、古いインクを入れない
パイロットは、色によって成分が違うためインキの色を混ぜることは勧めておらず、同じ色でも古いものと新しいものを混ぜて使うことは控えるよう案内しています。取扱いの注意でも、ほかのインキを混ぜて使ったり、古いインキを使ったりすると故障の原因になると書かれています。
ボトルの残りを足しつぎしたり、開けてから時間がたったインクを入れたりしたあとで出が悪くなったなら、いったん中のインクを抜いて洗い、同じメーカーの新しいインクで入れ直すのが近道です。インクの色を変えるときも、パイロットは水洗いしてから新しい色を入れるよう案内しています。
染料と顔料の違いも知っておく
万年筆のインクには、水に溶ける色素を使った染料インクと、水に溶けない細かい粒を使った顔料インクがあります。顔料インクは水に強い反面、乾くと固まりやすく、対応していないペンに入れると詰まりの原因になりやすいと言われます。染料と顔料の違いや、ペン選びとの関係はジャーナリング向けのペンの選び方で、染料と顔料の表記の見方を整理しているので、インク選びで迷ったときに読んでみてください。
手元の万年筆でどのインクが使えるかは、機種ごとに違います。正確な情報は、各メーカーの公式サイトや取扱説明書をご確認ください。
ペン先の曲がりや部品の傷みを疑う目安
洗ってもインクが出ない、ペン先の左右の先端の高さがずれて見える、落としてから書き味が変わった。ここまで来たら、ペン先や内部の部品が傷んでいる可能性を考えます。
プラチナ萬年筆の取扱説明書では、ペン先に無理な力を加えると、ペン先が曲がったり、インクの流れが悪くなったりすることがあると注意しています。パイロットも、万年筆は落としたりすると故障の原因になると書いています。机から落としてペン先から着地した、キャップをせずにかばんに入れていた、といった心当たりがあるなら、詰まりより先に変形を疑ったほうがいいかもしれません。
自分で見られるチェックポイント
明るい場所でペン先を正面と横から見て、次の点を確かめます。
- 左右の先端の高さがそろっているか(片側だけ浮いたり沈んだりしていないか)
- 切り割が根元から先端まで均一な細さか(先端だけ大きく開いていないか)
- ペン先とペン芯の間に大きなすき間ができていないか
- ペン先が軸の中心からずれて斜めに付いていないか
どれかに当てはまるなら、洗浄だけでは直りにくいと考えたほうがいいかもしれません。ペン先を指やピンセットで曲げ直そうとすると、かえって傷が広がることがあるので、そのまま修理の相談に回すのがおすすめです。
吸入式の古い万年筆は部品の劣化も
カートリッジ式でもコンバーター式でもない、本体に直接インクを吸い上げる吸入式の古い万年筆では、部品の劣化でインクを吸えなくなることがあります。パイロットのよくある質問では、旧型の吸入専用式万年筆でインキを吸入できない場合について、吸入ゴムの劣化が考えられるので吸入ゴムの交換が必要になり、修理として預けるよう案内しています。レバーなどが作動しない場合は、無理に動かすと破損の原因になるとも注意しています。
長年しまっていた万年筆で、どうやってもインクが入らないときは、レバーを力ずくで動かさず、そのままメーカーの修理窓口に相談してみてください。
万年筆のインクが出ないときの直し方と予防
原因の見当がついたら、次は直し方です。乾燥やコーティングの詰まり、インクの相性のどれでも、家でできる対処の中心は水洗いになります。この章では、カートリッジ式とコンバーター式の洗い方、一晩のつけ置きとぬるま湯の目安、やってはいけない直し方、修理に出す判断、そしてインクが出ない状態を防ぐ保管と使い方までをまとめます。
先に順番だけ押さえておくと、①水ですすぐ、②落ちなければ一晩つけ置く、③それでもだめなら専用のクリーナーかメーカーの修理窓口、の3段階です。いきなり強い手段に進まず、軽い対処から順に試すのが、ペン先を傷めないいちばんの近道かなと思います。洗う前には、インクを替えた日や放置していた期間など、前の章で見た手がかりを思い出しておくと、どこまで手をかけるかの見当がつけやすくなりますよ。
水洗いの手順はカートリッジ式とコンバーター式で違う

水洗いは、インクの補充方法によって少し手順が変わります。洗う前に、軸を外して、カートリッジ式なのか、コンバーター式なのかを確認しておきましょう。用意するのは、水を入れたコップと、ペン先の水気を拭く柔らかい布やティッシュです。
カートリッジ式の洗い方
軽い詰まりなら、首軸をコップの水に浸けて、ペン先を下に向けて水を通すだけで戻ることもあります。パイロットも、インキの出が悪いときはぬるま湯で内部を洗うよう案内しています。それで戻らないときは、時間をかけて洗う手順に進みます。プラチナ萬年筆のお手入れの資料では、一晩のつけ置きを含む次の流れが紹介されています。
- キャップと胴を外して、ペン先の付いた首軸の部分を取り出し、カートリッジをゆっくり外す
- 水かぬるま湯を入れたコップに首軸を一晩ほど浸け、たまったインクを出す
- ペン先を下に向け、上から水を通すようにして、インクの色が出なくなるまですすぐ
- 柔らかい布でペン先の水分を取り、日光の当たらない場所で自然乾燥させる
コップの水がすぐ色づくうちは、水を替えながら何度か繰り返します。水がほとんど色づかなくなったら、洗浄はひと区切りです。
コンバーター式の洗い方
コンバーターを使っている場合は、まずコンバーターの中のインクを出し切ります。そのあと、ペン先をコップの水に浸けて、水を吸って吐き出す動作を繰り返すと、内部まで洗えます。プラチナ萬年筆の資料でも、この方法でかんたんに洗えると案内されています。
吸っては出すを繰り返し、出てくる水に色が付かなくなったら完了です。パイロットの使用説明書には、カートリッジに切り替えるときはコンバーターに残ったインキを水洗いし、乾燥させてから保管するよう書かれています。コンバーターを外して保管するときも、中を洗って乾かしておくと、次に使うときに詰まりにくくなりますよ。
洗うときに守りたいこと
パイロットは洗い方の注意として、洗浄時にペン(ペン先)とペン芯を首から抜かないこと、コンバーターの付け外しを頻繁に行うと接続口が緩んでくる場合があること、ノック式の「キャップレス」は本体内部が複雑な構造なので水に浸さないことを挙げています。透明な首軸は、水に浸けると内部の隙間に入り込んだ水分が見える場合があるものの、性能には問題ないとも書かれています。
ペン先を外したくなる気持ちは分かりますが、ここは分解せずに、首軸ごと洗うのが基本です。キャップレスのように洗い方が違う機種もあるので、迷ったら取扱説明書を先に確認してください。
一晩のつけ置きとぬるま湯40℃の目安
軽く洗っても色がなかなか抜けない、まだ書けない。そんなときは、つけ置きで時間をかけて固まったインクをゆるめます。
その前に、水に浸けてよい機種かどうかを確かめておきましょう。パイロットは、ノック式のキャップレスは本体内部が複雑な構造なので水に浸さないよう案内しています。また、プラチナ萬年筆の資料では、首軸が透明素材の場合はカバーの内側に水が入りこみ、インクの色が残ってしまうことがあるとして、一晩水につける手順を飛ばしてすすぎに進むよう注意しています。迷ったら、先に取扱説明書を確認してください。
プラチナ萬年筆のお手入れの資料では、水かぬるま湯を入れたコップに首軸を一晩ほど浸けて、たまったインクを出す方法を紹介しています。ぬるま湯の温度は40℃くらいを目安にし、熱すぎると万年筆の部品が変形してしまうので注意するよう書かれています(出典:プラチナ萬年筆「より快適に!万年筆のケア方法」)。
ぬるま湯を使うなら、温度計で40℃前後を確かめるのが確実です。温度計が無いときは、無理にお湯を使わず水でもかまいません。プラチナ萬年筆の資料も、水もしくはぬるま湯としています。熱湯や沸かしたてのお湯は、部品の変形につながるので使いません。
つけ置きのあとの仕上げ
一晩つけ置きしたら、もう一度ペン先を下に向けて水を通し、色が出なくなるまですすぎます。コンバーター式なら、吸って吐く動作をもう一度繰り返します。それから柔らかい布で水気を取り、直射日光の当たらない場所で自然乾燥させます。プラチナ萬年筆の資料は、十分に乾かしてから使うよう勧めています。
乾ききらないうちにインクを入れると、残った水でインクが薄まり、最初の数行の色が淡くなることがあります。基本は、十分に乾かしてからインクを入れましょう。
それでも落ちないときは専用のクリーナー
つけ置きでもインクが落ちないときのために、プラチナ萬年筆は万年筆専用のインククリーナーキットを案内しています。資料によると、まず付属のスポイトを首軸につけてコップの中で水洗いし、次に洗浄液を水またはぬるま湯に溶かしてうすめた洗浄液を作り、首軸を一昼夜つけ置きしたあと、流水で洗浄液を洗い流して布で水分を拭き取る、という流れです。詳しいやり方はキット付属の手順に従うよう書かれています。
後で触れるとおり、万年筆にアルコールなどの薬品は使わないのが基本です。このキットは、メーカーが万年筆用に用意した専用品という位置づけになります。専用の洗浄液を使うときは、自分の万年筆のメーカーが案内しているものを選ぶのが安心です。
やってはいけない直し方と修理に出す目安

インクが出ないと、なんとか今すぐ書けるようにしたくなりますよね。ただ、焦ってやった直し方で、詰まりより大きな傷みを作ってしまうことがあります。メーカーが避けるよう案内していることを中心に、やらないほうがいい直し方をまとめておきます。
- 熱湯や熱すぎるお湯に浸ける(部品が変形するおそれ)
- アルコールなどの薬品で拭く・洗う(素材を傷めるおそれ)
- ペン先とペン芯を首から抜いて分解する
- 紙にペン先を強く押しつけてインクを出そうとする
- インクを出そうとして激しく振る
それぞれの理由
プラチナ萬年筆の資料では、アルコールは使わないよう強く注意したうえで、キャップや胴軸が汚れたときは柔らかい布で乾拭きするのが基本としています。取扱説明書でも、濡れた布や金属磨き、薬品は使わないよう書かれています。パイロットも、劣化するおそれがあるので万年筆の表面をアルコールで拭かないよう案内しています。
振ってインクを出そうとするのも避けたいところです。プラチナ萬年筆の取扱説明書では、万年筆を落としたり激しく振ったりするとインクが飛び出すことがあると注意しています。詰まりは振っても取れず、服や机を汚すだけになりがちです。強く押しつけるのがよくない理由は、前の章で見たとおり、ペン先の曲がりや切り割の開きにつながるからです。
修理に出す目安
次のどれかに当てはまるなら、家での対処は切り上げて、メーカーの修理窓口や購入した販売店に相談するのがおすすめです。
- つけ置きを含めて洗っても、インクの出が戻らない
- ペン先の左右の高さがずれている、曲がって見える
- 落としたあとから書き味やインクの出方が変わった
- 吸入式で、どうやってもインクを吸い上げられない
パイロットは、ぬるま湯で洗っても改善されない場合はほかの問題が生じている可能性があるとして、筆記具修理の問い合わせフォームへの相談を案内しています。修理の受け付け方法や費用は、メーカーや機種、状態によって違います。正確な情報は公式サイトをご確認ください。最終的な判断は、メーカーや販売店などの専門家にご相談ください。
インクが出ない状態を防ぐ保管と使い方

インクが出なくなるよくある原因の乾燥は、使っていない間に進みます。ということは、置き方と使い方を少し意識するだけで、防ぎやすくなるということです。メーカーが案内している予防のポイントを、毎日のことと、しばらく使わないときに分けて見ていきます。
予防のいちばんの近道は、毎日少しでも書くことです。プラチナ萬年筆は、万年筆にとって一番のケアは毎日少しでも使うことだとしていて、パイロットも頻繁に使うことは万年筆にとって最もよいお手入れだと書いています。日付と天気を1行書くだけでも、インクがペン先まで流れ続けるので、乾いて固まる時間を作りにくくなりますよ。
インクで書く道具には、ペン先をボトルインクに浸して書くガラスペンもあります。インクのつけ方や書き方、使い終わりの洗い方はインクのつけ方から洗い方・保管までの手順で紹介しています。
毎日使うときの置き方
パイロットは、書いていないときはキャップをしっかり閉めておくよう案内しています。インキの乾燥を防ぐだけでなく、万一落としたときにペン先を守ることにもなるからです。書いている途中で考えごとをするときも、こまめにキャップを閉めるくせをつけておくと安心です。
机に置くときの向きは、プラチナ萬年筆の資料によると、上向きだとインクが出にくく、下向きだと漏れやすくなるので、横向きに寝かせて置くのが理想的とされています。ペン立てに立てっぱなしにしているなら、ペントレーや机の上に横に寝かせて置くように変えてみてください。
あわせて、ペン先に付いた紙の繊維や汚れも、ときどき柔らかい布で拭き取ります。パイロットは、知らないうちにペン先や内部に汚れが付くので、拭き取ったり、ときどき洗ったりするよう案内しています。プラチナ萬年筆の取扱説明書では、3か月に1回はペン先を水かぬるま湯で洗ってお手入れするよう書かれています。これは一般的な目安なので、使う頻度やインクに合わせて調整してください。
持ち歩くときとしばらく使わないとき
持ち運ぶときは、振動でインキが漏れだすことがあるので、キャップをしっかり閉めて激しい衝撃が加わらないようにし、できるだけペン先を上向きにするよう、パイロットが勧めています。机の上では、上向きだとインクが出にくく下向きだと漏れやすいので横向き、かばんの中では振動による漏れを防ぐために上向き、と置き場所で向きを変えるイメージです。手帳と一緒に持ち歩く場合のペンの太さや長さの選び方は、手帳用ペンの選び方で、ホルダーに入る太さと長さを比べているので参考にしてみてください。
長期間(目安として数週間以上)使わない予定があるなら、インクを入れたまましまわないのがおすすめです。パイロットは、長期間使用しないときはインキを抜き、内部を洗ってから保存するよう案内しています。プラチナ萬年筆も、しばらく使わないときは洗ってから保管すること、直射日光や紫外線を避け、風通しのよい涼しい場所で保管することを勧めています。紫外線に長く当たると、軸の色が変わったり装飾を傷めたりする可能性があるそうです。
洗って乾かした万年筆は、キャップを閉めて、ペンケースや箱に入れ、机から転がり落ちたりほかの物とぶつかったりしにくい場所にしまっておくと安心です。ペンケースに入れて持ち歩くなら、手持ちの万年筆の全長をキャップを閉めた状態で測り、ケースの内寸に収まるかを確かめてから選びましょう。
万年筆のインクが出ないときによくある質問
コンバーターにインクが満タンまで入らないのは不良ですか?
不良とは限りません。パイロットは、コンバーター40について、インキを吸入するときにペン芯の中の空気も一緒に吸い込むため、内部をすべてインキで満たすことはできない構造だと説明しています。規定量の0.4mlを吸入したあとも空気の部分が多く残るのは正常とのことです。ほかのコンバーターの規定量は、機種ごとの取扱説明書で確認してください。
洗ってインクが出るようになったら、今度はペン先から漏れてきました。故障ですか?
パイロットは、正常な万年筆でも、振動が加わったり温度変化で内部の空気が膨張したりすると、インキがペン先から出てしまうことがあり、故障ではないと説明しています。気になる場合は拭き取って使えばよいとのことです。持ち運ぶときはキャップをしっかり閉め、できるだけペン先を上向きにしておきましょう。
洗ったあと、すぐにインクを入れて書いてもいいですか?
基本は、十分に乾かしてからです。プラチナ萬年筆は、洗ったあとは柔らかい布で水分を取り、日光の当たらない場所で自然乾燥させて、十分に乾かしてから使うよう勧めています。水が残ったままだとインクが薄まり、書き出しの色が淡くなることがあります。
万年筆のインクが出ないときのまとめ
万年筆のインクが出ないときは、まず症状から原因を絞るのが近道です。新品や交換直後ならカートリッジの差し方と送り出し、久しぶりならインクの乾燥による詰まり、書き始めだけなら持ち方、特定の紙のあとなら紙のコーティング、インクを替えたあとならインクの相性、落としたあとならペン先の傷みを疑います。
- 詰まりの基本の対処は水かぬるま湯で洗うこと(ぬるま湯はプラチナ萬年筆の案内で40℃くらいが目安・熱湯は使わない・メーカーの指定があればそちらを優先)
- 落ちないときは一晩のつけ置き、それでもだめなら専用のクリーナーやメーカーの修理窓口へ
- アルコール・分解・強く押しつける・激しく振るは避ける
- 予防は毎日少しでも書くこと、キャップを閉めること、しばらく使わないなら洗ってから保管すること
万年筆は、インクの通り道がとても細い筆記具です。そのぶん詰まりやすい反面、正しく洗うことで元に戻ることもある道具です。焦って力で直そうとせず、洗う、待つ、乾かすの順で落ち着いて向き合ってみてください。
手元の万年筆の正しい扱い方は、メーカーや機種によって違います。正確な情報は公式サイトや取扱説明書をご確認ください。洗っても戻らないときや、ペン先の変形が気になるときの最終的な判断は、メーカーや販売店などの専門家にご相談ください。
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