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ラテアートのスワンの描き方|羽・首・頭の手順とコツ、難易度と練習の順番
ラテアートのスワンがうまく描けない?羽・首・頭の3つに分ければ、形が見えてきます
ハートやリーフが描けるようになってくると、次はラテアートのスワンに挑戦してみたくなりますよね。カップの上で羽を広げた白鳥が浮かんでいると、それだけで特別な1杯に見えます。ただ、動画を見ながら作り方をまねしても、羽がつぶれたり、首が太くなったり、頭が消えたりと、なかなか白鳥の形になってくれないものです。
スワンの難易度が高く感じるのは、実は1つの絵を一気に描こうとするからかもしれません。スワンの書き方を解説しているバリスタやメーカーの資料を読むと、多くは羽・首・頭といったパーツ(その間にウイングや体を挟む資料もあります)を順番に組み合わせて描いています。イラストを描くときに輪郭をパーツに分けて考えるのと同じで、パーツごとのやり方とコツがわかれば、どこでつまずいているのかも見えてきますよ。
この記事では、ミルクフォーマーのメーカー「Lattiz」が公開しているラテアート大会の優勝経験者による解説、エスプレッソマシンのメーカー「デロンギ」の解説、日本のバリスタやコーヒー店の解説などを読み比べて、家庭でスワンを描くための手順を整理しました。解説によって手順の順番や呼び方が違うので、その違いを表にまとめています。
後半では、崩れたスワンの形から原因を見分ける表と、練習の進め方、スワンの次に挑戦したい種類まで紹介します。読み終えるころには、次の1杯でどのパーツを直せばいいかの見当がつきやすくなるかなと思います。
- スワンを形づくる羽・首・頭の仕組みと難易度
- 解説ごとに違うスワンの作り方の比較
- 羽・首・頭を描く注ぎ方の手順とコツ
- 崩れた形から原因を見分ける方法と練習の順番
ラテアートのスワンの仕組みと難易度を知る
ラテアートのスワンは、いきなり注ぎ方から覚えるより、先にどんなパーツでできているかを知っておくと練習がぐっと楽になります。この章では、まずスワンの形の仕組みを説明し、そのうえで難易度と、先に描けるようにしておきたい模様を見ていきます。
続けて、解説ごとに違うスワンの作り方を表で並べ、最後にスワンを描く前のミルクとカップの準備を確認します。解説によって手順の順番や言葉の使い方が少しずつ違うので、ここではひとつのやり方に決めつけず、それぞれの資料が何と書いているかを並べてから、家で最初に試すならどこからがよさそうかを書いていきます。スワンは基本の模様の組み合わせなので、この章を読むと、自分がいまどの模様まで描けていて、スワンのどのパーツで苦労しそうかの見当もつけやすくなるはずです。
スワンは羽・首・頭を組み合わせた模様

結論から言うと、スワンは1つの絵ではなく、いくつかのパーツを順番に描いて組み合わせた模様です。ここを理解しておくと、うまくいかないときにどのパーツで崩れたかを切り分けられるようになります。
ラテアートのクラスを開いているコーヒー店ELEPHANT COFFEEは、スワンを「4つのパーツを順番に描いているだけ」と説明していて、そのパーツをWing(翼)、Feather(羽)、Neck(首)、Head(頭)の4つに分けています。さらに、スワンはロゼッタ系のデザインの発展形で、特にウイングロゼッタの技術がベースになる、とも書いています。
海外の解説も、組み合わせという点では同じです。バリスタ歴10年のIvan Bez氏が運営するLatte Art Guideは、スワンをロゼッタ・チューリップ・ハートの3つの技法を組み合わせたものとし、そこに首を作るためのドラッグ(drag=引きずる)という技法が加わると説明しています。ミルクフォーマーのメーカーLattizの解説でも、ロゼッタのように波打たせて羽を作り、ピッチャーを引いて首を描き、小さなハートで頭を描く、という流れになっています。
まとめると、多くの解説に共通する骨組みは次の3つです。
- 羽:ロゼッタ(リーフ)の模様を、真ん中ではなく片側に沿って切って作る
- 首:羽の根元のあたりから、細い線を引いて作る
- 頭:首の先に小さなハートを描いて作る
ELEPHANT COFFEEの4パーツは、この「羽」の部分を、下側のウイングと、その上に重ねる羽(Feather)の2つに分けて数えている形です。のりのカフェのバリスタの解説でも、ウイングを描いてからその上にリーフを描いて羽にするパターンが紹介されています。
ここでひとつ注意したいのが、呼び方のずれです。海外の解説でwing(翼)と書かれているのは、ロゼッタを片側に沿って切った部分のこと。一方、ELEPHANT COFFEEと、のりのカフェのウイングから描くパターンの解説では、「ウイング」は先に描く土台の模様のことで、その上に重ねる部分を「羽」や「リーフ」と書いています(のりのカフェの別の記事では、リーフを切った部分を「翼部分」と呼んでいます)。動画や解説を見比べるときは、言葉より形を見て、どの部分の話をしているかを確かめると混乱しにくいかなと思います。
この記事では、ロゼッタ(リーフ)を片側に沿って切って作る部分を「羽」、その下に先に描く土台を「ウイング」と呼んで書いていきますね。
スワンの難易度と先に覚えたい模様
スワンの難易度は、ラテアートの中では高めです。Latte Art GuideやHome Espresso Labは、ハートやロゼッタなどの基本の模様に慣れてから挑戦するよう勧めていて、のりのカフェのバリスタは、まだ描けない模様の練習をスワンと並行して進めるよう書いています。
Latte Art Guideは、スワンは安定した手と技術が要るので、基本の模様に慣れてから挑戦するのがおすすめだとしています。のりのカフェのバリスタも、スワンは基本的に難易度が高めで、ハート・リーフ・ウイングなどいろいろなテクニックが組み合わさっているため、最初から自分の好みのバランスで描くのは難しいだろう、と書いています。そのうえで、リーフの延長から描くパターンについて、まだリーフが上手に描けない場合はリーフの練習を同時並行で進める必要があるとしています。
家庭向けのエスプレッソ解説サイトHome Espresso Labは、もう少しはっきりした順番を示しています。ハートを最初に練習し、30〜50個描いてからチューリップへ、チューリップを50〜80個描いてからロゼッタへ進み、スワンに取りかかるのはロゼッタが安定してから。ロゼッタは100個以上描いてからスワンを考える、という目安です。ロゼッタについては、家で練習する人の多くがここで伸び悩み、筋肉に動きを覚えさせるには数週間かかるとして、毎日の練習で4〜8週間が現実的だとも書いています。
英国のコーヒー会社カフェ・ド・モンド(Cafe du Monde・cafedumonde.co.uk)の解説の言い方も参考になります。ハートは描きやすい模様のひとつで練習を始めるのにぴったり、チューリップは少しだけ難しい、ロゼッタは始めるのは簡単だが極めるのは難しい、と紹介されています。スワンはそのロゼッタの技術を使う模様なので、難易度が上がるのは自然なことですね。
ここから考えると、スワンに挑戦する前に確かめておきたいのは次の3つです。
| 先に描けるようにしたい模様 | スワンのどこで使うか | 関係を書いている資料 |
|---|---|---|
| ハート | 頭(首の先に小さなハートを描く) | Latte Art Guide、Lattiz、カフェ・ド・モンド、のりのカフェ |
| ロゼッタ(リーフ) | 羽(片側に沿って切る) | Latte Art Guide、Lattiz、Nomad Coffee、のりのカフェ |
| チューリップ | 体(ハートのように小さく揺らしながら少し前へ押す) | Latte Art Guide |
チューリップをどこで使うかは、解説によって違います。Latte Art Guideは、羽の下端で小さく揺らして小さな丸い体を作るときに、チューリップのように少し前へ押すと書いています。一方、Home Espresso Labは、4〜6段のチューリップを体として描くやり方を紹介しています。どちらにしても、スワンは、ハートを描いて止め、また描くという動きの組み合わせなので、ハートとチューリップが安定していると、ロゼッタの次の段階に進みやすくなるかなと思います。
まだハートが安定しないうちは、焦らずハートから練習するのが近道です。ハートの注ぎ方とミルクの準備は、ラテアートのハートを泡立てと注ぐ高さから解説した記事で詳しくまとめています。
解説ごとに違うスワンの作り方を比べる

スワンの作り方は、大筋の順番は似ていますが、ウイングや体を挟むかどうか、首と頭のどちらを先に描くかといった細部が解説によって違います。どれが正しいというより、組み立て方の違いだと考えるとわかりやすいですよ。
読み比べた解説の手順を、パーツの順番がわかるように並べると次のようになります。
| 資料 | 1 | 2 | 3 | 4 |
|---|---|---|---|---|
| Lattiz(大会の優勝経験者の解説) | 半月が見えるまで注いで止める | ロゼッタのように波打たせ、片側に沿って切って羽にする | 羽の下端からピッチャーを手前へ引いて首、上でU字に曲げる | 近づけて小さなハートを描き、持ち上げて仕上げる(頭) |
| カフェ・ド・モンド | 半月が見えるまで注いで止める | 手前へ小さく波打たせ、片側に沿って注いで羽にする | 羽の下端から上へ注いで首、上でU字に曲げる | 近づけて小さなハート、持ち上げてくちばし(頭) |
| Latte Art Guide | カップの片側にロゼッタを描き、横に沿って切って羽にする | 羽の下端で小さく揺らして体を作る | 手前へ引いて首、上でU字に曲げる | 小さなハートを描いて通す(頭) |
| Nomad Coffee | ロゼッタを描く(羽) | ロゼッタの外側を切る | 注ぎを止めずに首を描く | ハートで顔を描く |
| のりのカフェ(リーフの延長のパターン) | 少し手前側にリーフを描く | 真ん中ではなく奥側の片方を切る(羽) | 切った根本のあたりから首 | ハートで頭 |
| ELEPHANT COFFEE | ミルクを振りながら前進してウイング | ウイングの根元から真っすぐ後ろへ下がって羽 | 羽を切ったあと、首を真っすぐ下へ | 首から少し離して小さなハート(頭) |
| Home Espresso Lab | カップのback(後ろ側)3分の1に4〜6段のチューリップ(体) | ピッチャーを上げて止め、カップのfront(前側)へ移る | 小さな丸(頭)を描き、曲線を後ろへ引いて体とつなぐ(首) | 体を通して切り、しっぽのとがりを足す |
こうして並べると、7つの解説のうち6つは羽(ロゼッタやリーフ)→首→頭の順で、Home Espresso Labだけが体→頭→首の順になっていることがわかります。羽を描く前にウイングという土台を描くかどうか、首の前に小さな体を作るかどうかも、解説によって違います。
方向の言い方もそろっていません。首を描く動きは、LattizとLatte Art Guideは手前へ引く(towards you)、カフェ・ド・モンドは上へ注ぐ(upwards)、ELEPHANT COFFEEは「首はまっすぐ下へ引きます」と書いています。これは、どこから見た向きで説明しているかの違いと考えられるので、言葉の上下にとらわれず、羽の根元から首が伸びていく形を写真や動画で確かめるのがおすすめです。
家で最初に試すなら、私の考えでは、多くの解説が採っている「羽→首→頭」の順から始めるのがよさそうです。のりのカフェのバリスタは、2つのパターンのうちリーフの延長から描くほうが、個人的には難易度が低いと思うと書いています。一方で、ウイングを描いてから羽・首を描くパターンのほうが難しいものの、今後いろいろなパターンのスワンを描くときにはこちらの技術が必要になる、とも書いているので、慣れてきたら挑戦してみるといいですよ。
スワンの前に整えるミルクとカップ
スワンも、ハートと同じくミルクの泡とカップの準備が土台になります。注ぎ方の練習に入る前に、次のポイントだけは整えておきたいところです。
まずミルクです。デロンギは英語の解説で、冷たい全乳のほうがよいミルクの泡になり、これが模様のもとになるマイクロフォーム(とても小さな泡)でできていると説明しています。泡立ての温度は140°F(摂氏に換算すると60.0℃)を超えないように見る手順です。(出典:De’Longhi『Latte art, step by step』)牛乳の選び方や温度の目安はメーカーによって数字が少しずつ違うので、詳しくは先ほど紹介したハートの記事の表を見てみてくださいね。泡立てたミルクやスチームノズルの蒸気は熱いので、やけどをしないよう、ピッチャーとノズルの扱いには気をつけてください。
スワンならではのポイントとして、カフェ・ド・モンドとLattizはどちらも、泡立てたミルクのピッチャーをよく回してなじませ、注ぐ前に上のほうの泡を少し捨てる、という手順を入れています。理由までは書かれていませんが、私の考えでは、羽や首の細い線を描くために、ピッチャーの中の泡の量を整えておく手順だと受け取っています。
次にエスプレッソです。Nomad Coffeeは、まずおいしいエスプレッソと、きちんと泡立てたミルクが必要だとしたうえで、絵を描くためのコントラストが出るよいキャンバス(土台)を作ることから始めています。デロンギも、泡立てたミルクがのる安定したクレマ(エスプレッソの表面の茶色い泡の層)を作ることが大切だと書いています。
エスプレッソに使う豆を通販で探すなら、コーヒー豆の専門ECサイトもあります。扱っている豆や価格、送料は変わることがあるので、購入前にサイトで確かめてくださいね。
カップは、Home Espresso Labが、口が広く内側が丸いカップを勧め、背の高いまっすぐなカップは表面が小さすぎるとしています。ロゼッタについても、少し広めのカップ(6〜8オンス=約180〜240mlのカプチーノボウルなど)のほうが、背の高い12オンス(約360ml)のマグより向いているという書き方です。スワンは羽・首・頭を1つの面に並べるので、表面の広いカップのほうが余裕を持って描けるかなと思います。
飲み物の種類で言うと、Home Espresso Labはカプチーノとフラットホワイトが最も描きやすく、ラテは表面は広いもののミルクの量が多いぶん泡の質を保つのに技術が要る、と書いています。カプチーノとラテの泡の量の違いは、泡の量と比率で比べるカプチーノとラテの違いでまとめています。
デロンギは、描いた模様がお客さんの正面を向き、カップの取っ手がお客さんから見て右側に来るように、カップを取っ手で持つか手のひらで包んで持つ、と書いています。これはお店で出すときの持ち方の話ですが、私の考えでは、家で描くときも、仕上がりを見る人の側から見て白鳥がまっすぐになるよう、取っ手の位置を決めてから注ぎ始めると向きがそろいやすくなります。
ピッチャーについては、Home Espresso Labが、ラテアート用には注ぎ口がとがって細いものを選び、丸い注ぎ口のものは避けるよう書いています。羽や首の細い線を描くスワンでは、注ぎ口の形も見ておきたいところです。ラテアート用をうたうミルクピッチャーには、注ぎ口のとがったシャープスパウトの製品もあります。容量や注ぎ口の形は商品によって違うので、購入前に各ショップで確かめてください。
カップは、先ほどのとおり口が広いものが描きやすいとされています。エスプレッソマシンのメーカーが出しているカプチーノ用のカップもあるので、手元のカップが細長いなら候補にしてみるといいかも。容量や形、価格は購入前に各ショップで確かめてくださいね。
ラテアートのスワンの描き方と崩れたときの直し方
ここからは、ラテアートのスワンを実際に描く手順です。前の章の比較で多くの解説が採っていた「羽→首→頭」の順に沿って、パーツごとに注ぎ方とコツを見ていきます。手順の大きな流れはLattizとカフェ・ド・モンドの解説を軸にし、ほかの解説で補える点を足していきますね。
後半では、崩れたスワンの形から原因を見分ける表と、練習の進め方、スワンの次に挑戦したい種類を紹介します。数字はそれぞれの資料の書き方をそのまま写したもので、マシンやカップによって合う値は変わるので、あくまで一般的な目安として読んでください。最初から3つのパーツを完璧にそろえる必要はありません。まずは羽だけ、次に羽と首、と段階を踏んで、1杯ごとにどのパーツがうまくいったかを見ていくと、上達の手ごたえがつかみやすいですよ。
羽を描く:ロゼッタの片側に沿って切る

スワンの羽は、ロゼッタ(リーフ)を描く途中で、真ん中ではなく片側に沿ってミルクを通すことで作ります。ELEPHANT COFFEEは、スワンの大きさはウイングで決まると書いているので、私の考えでは、ウイングと羽の部分にいちばん時間をかけて練習するのがよさそうです。
1. 注ぎ始めて、半月が見えたら止める
Lattizの解説では、ラテアートではいつもカップを少し傾けておき、細い流れでエスプレッソにミルクを注ぎます。このとき白い点が出てきたら、その上から流れを当てて消してかまわないそうです。そのあとピッチャーを下げて動きの半径を広げ、注ぎ口がコーヒーのすぐ上、ピッチャーから遠いほうのカップの縁から約1.5cmの位置に来るようにして、半月の形が見えるまで注いで止めます。
デロンギも、注ぎ始めは高さ5cmくらいからで、カップを少しずつ起こしながら注ぎ口がコーヒーにほとんど触れるところまで近づけ、カップが半分ほど満たされたら流れを強める、と書いています。模様を描くのはカップがほぼいっぱいになる注ぎの終わりのほうで、注ぎ口は液面のすぐ上、という説明です。私の考えでは、高めから注ぎ始めて、近づけて白を浮かべるという点はハートと同じ流れだと捉えておくとわかりやすいかなと思います。
2. ロゼッタのように手前へ波打たせる
もう一度流れを入れて、ロゼッタを描くときのように、波打たせながら手前へ動かしていきます。Lattizとカフェ・ド・モンドは、どちらもこの部分を、ロゼッタのように手前へ波打たせる動きとして説明しています。
揺らし方について、Home Espresso Labは、ロゼッタの揺らしは腕ではなく手首の動きで、ピッチャーの先が左右合わせて1〜2cmほど動く小さな動きだとしています。初心者の多くは揺らしすぎて、はっきりした葉ではなく波打った線になってしまう、とも書いています。同サイトは、腕で揺らすと波打った線になり、手首で揺らすとはっきりした葉になるとして、ひじを固定して手首だけで揺らすよう勧めています。
3. 真ん中ではなく片側に沿って切る
ここがスワンならではの動きです。ふつうのロゼッタは最後に真ん中をまっすぐ切りますが、スワンでは、Lattizの言い方では、ロゼッタの波の中心に流れを通す代わりに、ロゼッタの片側に沿って流れを引くことで羽を作ります。のりのカフェのバリスタも、リーフでは真ん中を切るが、スワンではリーフを羽にしたいので片側に沿って切る、と書いています。どちら側を切るかについては、のりのカフェは「奥側、片方を切る」としています。
羽を描く位置のコツも見ておきましょう。のりのカフェのバリスタは、首と頭を描く部分を考えて、リーフを少し手前側に描くと後が描きやすくなるとしています。ウイングから描くパターンでは、ウイングをカップの真ん中か少し下あたりに描くと、羽・首・頭を描く場所を広く取れて描きやすい、という書き方です。
ELEPHANT COFFEEのウイングは、9回ミルクを振りながら前進し、取手の奥側でピッチャーを上げてミルクを止める描き方です。その上の羽(Feather)は、ウイングの根元から斜めではなく真っすぐ後ろへ下がり、ミルクが浮いたら振り始めて、そのままカップの奥側へ下がる、と書いています。羽が育つと同時に、ウイングも自然に持ち上がるそうです。
のりのカフェのバリスタが挙げるバランスのポイントの1つ目は、羽の高さです。羽はカップの縁ぎりぎりを狙うくらい高く描くのがよく、首や頭のほうが羽より上に出てしまうと見た目のバランスが崩れる、という説明です。ELEPHANT COFFEEも、スワンの大きさはウイングで決まり、大きく広がったウイングほど優雅なスワンになる、と書いています。
首を描く:羽の根元からすばやく引く
首は、羽を切り終えたところから、注ぎを止めずに細い線を引いて描きます。コツとして、のりのカフェのバリスタはすばやく引くこと、Latte Art Guideは注ぎ口を表面に近づけたままにすることを挙げています。
Lattizの解説では、羽の下端に着いたらすぐに、ピッチャーを手前へ引いて首を作り、カップの上のほうまで来たら首をU字に曲げます。カフェ・ド・モンドも、羽の下端に来た瞬間に、また上へ向かって注いで長い首を作り、上まで来たらU字を描いて首の曲がりを作る、と説明しています。Nomad Coffeeは、ロゼッタの外側を切ったら、ミルクを注ぐのを止めずに首を描くとしています。
注ぎ口の高さについては、Latte Art Guideが大事なポイントを書いています。首を描くときはピッチャーをコーヒーのクレマに近づけたままにしておくことが大切で、それは泡を後ろへ引きずるように描きたいから、という説明です。私の考えでは、Home Espresso Labが、高い位置から注ぐとミルクがクレマの下に押し込まれ、表面から0.5〜1cmまで近づけるとミルクが表面にのって白く残ると説明していることとも関係していると考えられます。
のりのカフェのバリスタが挙げるポイントの2つ目は、首を引く速さです。ここで手が遅くなると首が太く、重たい形になりやすいので、さっと一息に引くのがよいとしています。同じ筆者の別の記事でも、テンポよく素早く引くとシャープな首になると書かれています。
首を描き始める位置は、のりのカフェのバリスタが「どこから首を描き始めるか」は初心者が悩むポイントの1つだと書いているところです。多くの解説は、羽の下端や、切った根本のあたりから描き始めるとしています。ELEPHANT COFFEEは、羽を切ったあとにできたスペースを使って、ウイングにぶつからないように進むよう書いていて、首を斜めに描く必要はないとしています。
首をU字に大きく曲げようとすると、羽にぶつかって形がつぶれることがあります。ELEPHANT COFFEEは、首がウイングに干渉するのは首を曲げすぎているからで、自然にできたスペースを使ってまっすぐ下がるよう勧めています。私の考えでは、U字の曲がりは、羽から離れた側で小さめに作るくらいの意識から始めるといいかも。
頭を描く:小さなハートで仕上げる
頭は、首の先に小さなハートを描いて仕上げます。スワンの最後のパーツなので、ピッチャーのミルクが少なくなっていることを頭に入れておくのがコツです。
Lattizの解説では、ピッチャーをコーヒーに近づけて小さなハートを注ぎ、そのあと持ち上げて細い流れにしてハートを仕上げます。カフェ・ド・モンドも、頭を描くときはピッチャーを少し近づけて正確にし、小さなハートを注いで、持ち上げながらくちばしを作る、と説明しています。Latte Art Guideは、ピッチャーを止めたまま左右に揺らしてミニハートのような小さな丸を作り、持ち上げて細く安定した流れにして、丸の中を通す、という書き方です。
頭の大きさについては、解説によって注意の向きが違うので、両方知っておくと便利です。のりのカフェのバリスタが挙げるポイントの3つ目は、頭のハートを少し大きめに描く意識です。最後はピッチャーに残るミルクが少なく、頭が小さくなったり欠けたりしやすいので、流れを少し多めにして描き切るとよい、という説明です。
一方、ELEPHANT COFFEEは、よくある失敗として頭が大きすぎることを挙げ、スワンが重たい印象になるので、頭は小さく、首とのバランスを意識するよう書いています。また、首から少し離れた位置で小さなハートを描くこと、近すぎると首に干渉して形が崩れることも書いています。
一見反対のことを言っているようですが、のりのカフェはミルクが足りなくて頭が欠ける失敗を、ELEPHANT COFFEEは頭が大きすぎて重たく見える失敗を防ぐための話です。私の考えでは、自分のスワンの頭が欠けやすいなら流量を少し多めに、頭が大きくなりがちなら小さめに、と仕上がりに合わせて調整するのがよさそうです。
頭まで描くには、ピッチャーにミルクを残しておく必要があります。Home Espresso Labは、多くの初心者のスワンが、頭と首がはっきりしないせいで、しっぽのついたチューリップのように見えてしまうと書き、頭をはっきり区切って注ぎ、首を意図して描くよう勧めています。羽を描く段階でミルクを使いすぎていないかも、あわせて見てみてくださいね。
崩れたスワンの形から原因を見分ける

スワンがうまくいかないときは、崩れたパーツから原因を見分けると、次の1杯で何を変えればいいかがはっきりします。解説に書かれている失敗と直し方を、形ごとにまとめると次のようになります。
| 崩れた形 | 考えられる原因 | 直し方 | 資料 |
|---|---|---|---|
| 全体が窮屈で小さい | ウイングが小さい | かさあげ(模様を描く前にカップの量を増やす段階・この記事での補足)を少なくする、ウイングに使うミルクを増やす | ELEPHANT COFFEE |
| 首や頭が羽より高く、バランスが悪い | 羽の位置が低い | 羽をなるべくカップのぎりぎりまで高く描く | のりのカフェ |
| 羽が左右非対称 | 斜めに動いている | 初めはカップの中心線をまっすぐ下がることを意識する | ELEPHANT COFFEE |
| 首が太い、ぼてっとする | 首をゆっくり引いている | 首はさっとすばやく引く | のりのカフェ |
| 首がウイングにぶつかる | 首を曲げすぎている | 自然にできたスペースを使ってまっすぐ下がる | ELEPHANT COFFEE |
| 頭が小さい、欠ける | ピッチャーのミルクが少なくなっている | 最後のハートは少し流量を多めに、気を抜かずに描く | のりのカフェ |
| 頭が大きすぎて重たく見える | 頭のハートが大きい | 頭は小さく、首とのバランスを意識する | ELEPHANT COFFEE |
| 頭が首にくっついて崩れる | 頭を首に近づけすぎている | 首から少し離れた位置で小さなハートを描く | ELEPHANT COFFEE |
| しっぽのついたチューリップに見える | 頭と首がはっきりしていない | 頭をはっきり区切って注ぎ、首を意図して描く | Home Espresso Lab |
見直すときの私のおすすめは、1回に変えるのを1つだけにすることです。たとえば首が太いときに、羽の位置も、首を引く速さも、頭の大きさも一度に変えてしまうと、どれが効いたのかわからなくなります。表の上から順に、崩れているパーツに当てはまる行を1つ選んで試してみるのがおすすめです。
また、羽そのものが描けていないときは、スワンより先にロゼッタの段階でつまずいている可能性があります。Home Espresso Labは、ロゼッタの葉が波打った線になるのは腕で揺らしているからで、ひじを固定して手首だけで揺らすよう書いています。葉がまったく出ないなら揺らす速さが遅すぎる、葉がくっついて塊になるならピッチャーを手前へ動かす速さが遅すぎる、というのが同サイトの見立てです。羽の形がロゼッタとして崩れているなら、私の考えでは、いったんロゼッタだけの練習に戻るのも近道かなと思います。
泡立ての段階でつまずいていると、注ぎ方をいくら直しても形になりにくいこともあります。白い線がぼやける、泡がぶつぶつ残るといった状態が続くときは、ミルクの温度と泡立ての手順のほうを見直してみてください。ハートの記事でまとめた、失敗したハートの形から原因を見分ける表も、白が浮かばないといった泡立ての問題を見つけるのに役立ちますよ。
スワンの練習の進め方と次に挑む種類

スワンの練習は、パーツを1つずつ安定させていくのが近道です。ELEPHANT COFFEEは、スワンが難しく感じる最大の理由は全部を一度に描こうとするからで、ひとつずつ完成させればスワンは驚くほどシンプルになる、と書いています。
まずはウイングロゼッタを安定させる
ELEPHANT COFFEEは、まずはきれいなウイングロゼッタを描けるようになることを勧めています。同店が「今村式」と呼ぶ考え方では、「真っ直ぐ下がる」「真っ直ぐ進む」「真っ直ぐ逃げる」を基本にして、複雑な斜めの動きを減らすことで成功率が大きく上がるとしています。私の考えでは、ウイングと羽が毎回同じ大きさ・同じ高さで描けるようになってから首と頭を足すと、崩れたときの原因も見つけやすくなると考えられます。
ハートの次によく練習される模様には、ハートを途中で止めて重ねるチューリップもあります。重ね方はハートを重ねて描くチューリップの解説で紹介しています。
水で動きを練習して、写真で記録する
Home Espresso Labは、最初の20回はエスプレッソの代わりにカップに水を入れて、注ぎの高さを下げる動き、手首だけの揺らし、前へ通して切る動きを練習する方法を紹介しています。水なら材料費がかからず、30分で20回練習でき、ミルクやエスプレッソの出来のばらつきと切り離して動きだけを練習できる、という理由です。水の上には模様は出ないので、あくまで手の動きを覚えるための練習と考えておくといいかなと思います。また同サイトは、うまくいった1杯はすべて写真に撮り、日付順のフォルダに保存しておくと、言葉のメモより上達が目に見えてやる気が続く、とも書いています。
練習で毎日何杯もエスプレッソを飲むことになるので、同サイトは、1日5杯ずつ注ぐ30日の練習計画について、1日5杯がカフェインの許容量を超えるなら、1日2〜3杯に減らして期間を2倍の60日にするよう書いています。1回分のエスプレッソの量はマシンや淹れ方によって違うので、杯数だけで判断せず、体調に合わせて無理のない量で続けてくださいね。妊娠中・授乳中の方やカフェインに敏感な方は、特に控えめにしておくのが安心です。カフェインのとり方で気になることがあれば、医師などの専門家に相談してください。
スワンの次に挑戦したい種類
スワンの次の目標としては、スワンの仕組みを応用した模様があります。ELEPHANT COFFEEは、ウイング・羽・首・頭の4パーツの構造を理解すると、クラウンスワン(Crown Swan)、フェニックス(Phoenix)、ダブルスワン(Double Swan)、ウイングチューリップスワン(Wing Tulip Swan)など、さまざまな発展形のデザインに応用できるとしています。そのうえで、まずはシンプルなスワンを安定して描けるようになることを目標にしよう、と書いています。
Home Espresso Labも、ピーコック(孔雀)やフェニックス、いくつもの花を組み合わせた模様などは、スワンと同じ考え方でできていると説明しています。チューリップを重ねて体のボリュームを出し、自由な曲線でパーツをつなぎ、最後に切って形をはっきりさせる、という組み立てです。のりのカフェのバリスタも、スワンにはさまざまな描き方・形があると書いているので、基本のスワンが描けるようになったら、別の形のスワンを探してみるのも楽しいですよ。
道具を足す楽しみ方もあります。デロンギは、ラテアートの技法を、ピッチャーから直接注いで模様を作るフリーポアと、先にミルクを注いでから道具で表面に描くエッチングの2つに分けて紹介していて、エッチングではチョコレートシロップ、つまようじ、ステンシル、ナイフなどがよく使われるそうです。Home Espresso Labも、エッチングはフリーポアで描いた模様に細かいところを描き足すのに使われる、と書いています。ただし同サイトは、エッチングの道具やチョコレートソース、ステンシルは注ぐ技術そのものを飛ばしてしまう近道で、練習には要らないとしているので、練習の目的に合わせて使い分けるといいかなと思います。
エスプレッソを淹れる道具からそろえたい場合は、マキネッタとエスプレッソマシンの違いを抽出圧力と価格から比べた記事も参考にしてみてください。
ラテアートのスワンについてよくある質問(FAQ)
スワンは途中で注ぐのを止めてもいいのですか?
解説によって違います。Latte Art Guideは、スワンは1回の注ぎで作るとしていて、Nomad Coffeeも、ロゼッタの外側を切ったら注ぎを止めずに首を描くとしています。Lattizとカフェ・ド・モンドは、最初に半月が見えたところで一度止め、もう一度注いで羽を描き始める手順です。Home Espresso Labのように、体を描いたあとにピッチャーを上げて止め、カップのfront(前側)へ移ってから頭と首を描くやり方もあります(原文のfront・backが手前・奥のどちらを指すかは、同サイトの中でも書き方がそろっていません)。まずは手本にする解説を1つ決めて、その手順どおりに練習すると迷いにくいですよ。
スワンはラテアートの中でも定番の模様ですか?
デロンギは、代表的な古典デザインの例としてハート、ロゼッタ、スワンを挙げています。Lattizの解説では、ラテアートで何度も優勝しているNick Vink氏(2017年にブダペストで行われた世界大会ではムース〈ヘラジカ〉を描いたと紹介されています)が、お気に入りの模様の1つとしてスワンの描き方を解説しています。大会でスワンがどう扱われているかまでは、これらの資料には書かれていません。(出典:Lattiz『Learn how to make the perfect latte art swan』)
スワンが描けなくても、ラテの味は変わりませんか?
デロンギは、ラテアートはよりおいしい味を約束するものではないものの、作り手の細部へのこだわりや、見た目にも楽しい1杯を出したいという気持ちの表れだと説明しています。スワンの形がうまくいかなくても、ミルクの泡立てとエスプレッソがきちんとできていれば、ラテそのものは楽しめます。練習中の1杯も、気楽に味わってくださいね。
ラテアートのスワンはパーツごとに練習しよう
ラテアートのスワンは、羽・首・頭のパーツを順番に組み合わせた模様です。多くの解説は、ロゼッタ(リーフ)を片側に沿って切って羽を作り、羽の根元から首を引き、首の先に小さなハートを描いて頭にする、という流れで描いています。うまくいかないときは、崩れたパーツから原因を見分けて、1つずつ直していくのが近道です。
この記事のポイントを振り返っておきますね。
- スワンの難易度は高め。基本の模様に慣れてから挑戦するか、描けない模様の練習を並行させる
- 解説によって手順の順番や呼び方が違うので、手本にする解説を1つ決めて練習する
- 羽はロゼッタの真ん中ではなく片側に沿って切る。のりのカフェはカップのぎりぎりまで高く描くことを勧めている
- 首は、Latte Art Guideは注ぎ口を表面に近づけたまま、のりのカフェはさっとすばやく引くことをコツに挙げている
- 頭は首から少し離して小さなハートで。欠けやすいなら流量を少し多めに、大きくなりがちなら小さめに
- 崩れた形は表で原因を見分け、1回に変えるのは1つだけにする
ミルクの温度やスチームノズルの使い方は、マシンによって違います。正確な情報はお使いのマシンや牛乳のメーカーの公式サイトをご確認ください。機器の扱いで迷ったときの最終的な判断は、メーカーや販売店にご相談くださいね。まずはきれいな羽を1つ描くところから、気楽に練習してみてください。
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