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アオリイカのオスメスの見分け方|斑点・腕・大きさと味の違いの有無まで
アオリイカのオスメスは斑点で見分ける|腕・内臓・大きさで確かめる方法も
釣れたアオリイカを手にして、これはオスなのかメスなのか気になったことはありませんか。スマホの写真を見返しながら迷っている方も多いかなと思います。
アオリイカのオスメスの見分け方で最初に見るのは、胴にある斑点の形です。今回調べたダイワとシマノの解説では、細長い・スジ状の斑点がオス、短い・丸みのある斑点がメスと紹介されています。
ただ、模様は体の色の変化で見え方が変わります。そこでこの記事では、交接腕と呼ばれる左の第4腕、さばいたときの精巣や卵、そして大きさとオスの割合を徳島県の調査データで集計した表まで、順番に整理しました。
後半では、春の産卵期にオスとメスがペアを組む話や産卵期の地域差、オスとメスで味の違いはあるのか、卵を持ったメスを釣ったときの考え方も扱います。気になるところから読んでみてくださいね。
- ダイワとシマノの解説では、胴の斑点が細長い・スジ状ならオス、短い・丸い形ならメス
- 模様は体の色の変化で見え方が変わるので、迷ったら左の第4腕(交接腕)と内臓で確かめる
- 成熟した個体なら、さばくとオスは精巣と精莢、メスは輸卵管の透明な卵が見られる
- 徳島県の鞆浦漁協の定置網(冬〜春先)のデータでは外套長30cm以上の95.0%がオスだが、大きさだけで1杯は決められない
アオリイカのオスメスを見分ける4つの手がかり
結論から言うと、アオリイカのオスメスを見分ける手がかりは、胴の斑点・左の第4腕・さばいたときの内臓・大きさの4つです。いちばん手軽なのは斑点の形で、ダイワとシマノの初心者向けの解説がこの方法を紹介しています。
ただし、体の色や模様は生きている間も〆た後も見え方が変わります。そのため斑点で迷ったときは、オスの交接腕や、成熟した個体なら精巣・卵で確かめる流れがおすすめかなと思います。
この章では、斑点の見方、色と模様が変わる理由、腕の確かめ方、内臓での見分け方を順に紹介します。最後に徳島県の調査データを集計して、大きいイカほどオスが多いのかを数字で確認していきますね。
胴の斑点が棒状ならオス、点状ならメス

ダイワの解説では、胴の斑点が細長い棒状ならオス、短い点状ならメス。釣ったあと、まず見てほしいのがここです。
ダイワの初心者向けの釣り入門(エギングの解説)では、「オス・メスの判断は胴体の斑点で識別できます。細長い棒状ならオス、短い点状ならメスです。」と説明されています。
シマノの初心者向けの解説(アオリイカの調理方法のページ)でも、「アオリイカのオスとメスの見分け方は簡単だ。体表に点在する斑点が横にスジ状に伸びるのがオス、丸みを帯びた形ならメスだ。」と書かれています。このページは調理方法の解説なので、さばく前に斑点を見ておく、という流れでも使いやすいかなと思います。
2社の言い方は少し違います。ダイワは “細長い棒状/短い点状”、シマノは “横にスジ状に伸びる/丸みを帯びた形” という表現です。
今回調べたダイワとシマノの解説では、オスは細長く伸びた斑点、メスは短く丸い斑点、という向きでそろっています。写真で見比べるときは、1つひとつの斑点が横に長く伸びているか、丸っこいかに注目してみてください。スマホで撮るなら、胴の斑点がはっきり写るように撮っておくと、あとから見比べやすくなりますよ。
研究者が登場する記事にも、同じ趣旨の説明があります。シマノの「エギングを科学する」実釣編の記事(広島大学の海野徹也教授と湯川マサタカさんが登場する記事)では、写真の説明に「斑紋(体の模様)によってオスかメスかを判別することができる。」という説明が付いています。
ここで1つ紛らわしいのが、横縞の話。zen-ika.com のイカ図鑑のアオリイカの項には「外套膜背面から鰭基部にかけて断続的な淡色横縞がある.」とありますが、これはアオリイカという種の特徴として書かれたもので、オスとメスを分ける目印としては書かれていません。
なお、斑点でどのくらいの確率で当たるのかを示した数字は、今回調べた資料には見当たりませんでした。斑点の形がどちらとも言いにくいときは、このあと紹介する腕や内臓でも確かめるのが安心です。
これからエギングでアオリイカを狙う方は、エギングのタックル選びと道具一式もあわせてどうぞ。
まずは胴の斑点を見て、細長いか丸いか。これを最初のチェックにしてみてくださいね。
体の色と模様は興奮や〆で変わる
アオリイカの体の色や模様は、生きている間の状態や、〆たかどうかで変わります。斑点を見るときは、この前提を知っておくと迷いにくくなりますよ。
徳島県の徳島水研だより第68号(アオリイカの〆方と透明感)によると、生きているアオリイカは、体色を調整する「色素胞」と呼ばれる細胞を拡大・縮小させて、さまざまな色彩や模様を見せます。群れやペアで行動するアオリイカは、コミュニケーションに色素胞を使っていると言われている、とも書かれています。
同じ資料では、色素胞を拡大させた状態では黒っぽく見えるものの、〆ると神経系による色素胞の制御ができなくなるため色素胞が縮み、透明感のある状態になると説明されています。
徳島水研だより第64号の写真説明でも、色素胞が開いて全体的に黒っぽくなった状態と、ナイフで頭部と外套膜をつなぐ神経を切断して活け〆し、色素細胞が縮んで透明になった状態が並べて紹介されています。なお第68号では、ナイフ〆は脳から外套膜につながる神経を切るため、外套膜のみが透明になると説明されています。
生きているときの色にも意味があるようです。シマノの実釣編の記事では、白と黒のどちらが活性が高いかという問いへの海野教授の答えは白で、記事では「白は透明になろうとしている色で、エサから見えにくい色になろうとする、つまり捕食モードにあるということ。逆に黒はイカ墨の擬態でもある警戒モードになる。」と説明されています。同じ記事には「水槽に釣ったアオリイカを入れての実地トーク。体色が黒いのは警戒している証拠だ。」という一文もあります。体全体が黒っぽく見えるときは、色の濃さと斑点の形を分けて考えてみるのも1つの方法かなと思います。
さらに、ダイワのコラム(Fish World)では、オスの片側にメス、反対側に警戒すべき別のオスがいるとき、「すると、そのオスは自分のカラダの色を右と左でまったく異なる色を呈することがしばしばあります。」と書かれています。体の左右で色が違うこともあるなんて、ちょっと驚きですよね。
こうした資料から言えるのは、斑点や模様は見え方が変わるものだ、ということ。一方で、〆る前と後でどちらが斑点を見やすいか、何分くらいで見えにくくなるかといったタイミングは、今回調べた資料では確かめられませんでした。
斑点や模様が見にくいと感じたら、斑点だけで決めずに、オスの左の第4腕(交接腕)や、さばいたときの精巣・卵でも確かめてみてください。
左の第4腕の形で確かめる方法
アオリイカのオスは、左の第4腕が交接腕という特別な形になっています。交接腕は、オスがメスに精莢を渡すための腕。斑点で迷ったときは、この腕の先端を見るのが1つの方法です。
zen-ika.com のイカ図鑑のアオリイカの項には、「雄の左IV 腕は交接腕化し,先端の25%ぐらいは吸盤がなく円錐の肉嘴が2 列に並ぶ.」と書かれています。
左IV腕は左の第4腕のこと。腕の先から4分の1くらいの範囲に吸盤が無く、代わりに円錐形の肉の突起(肉嘴)が2列に並んでいる、という意味です。見るときは、腕の付け根より先端の部分に注目してみてください。
この腕の役割について、徳島県の研究紹介は「♂イカは左第4 腕を使って精莢を雌の受精嚢と口唇部に植え付ける。」と説明しています(出典:徳島県「解明されつつあるアオリイカの生活史の全容と人工産卵礁の開発」)。精莢は、中に精子が保存される包みのようなもの。オスはこの腕を使ってメスに渡すわけですね。
注意したいのは、長い2本の腕と取り違えないことです。阿嘉島臨海研究所のアムスルだよりには「ご存知のように、イカには腕が10本ありますが、このうち2 本は餌を捕えるために発達した触腕です。」とあります。
同じ資料では、イカ全般の話として、雄には触腕の他に形が特殊化した1本(種によっては2本)の腕があり、これで精子のつまった精包を壊さないように雌に渡す(交接)と説明されています。つまり交接腕は、エサを捕らえる長い触腕とは別の腕です。
では、どの腕が第1腕で、どこから数えて第4腕になるのか。じつは、腕の数え方は今回調べた資料には書かれていませんでした。腕は10本あるので、どれが第4腕かは慎重に確かめたいところです。
腕の番号の数え方は、図鑑の図を見たり、釣具店や詳しい人に聞いたりして確かめてからチェックするのがおすすめです。
斑点がはっきりしないときは、左の第4腕の先に吸盤の無い部分があるかどうか。これが2つ目のチェックポイントになります。斑点と腕の両方を見て同じ答えになれば、判断の材料が増えます。それでも迷いが残るときは、次の内臓のチェックへ進むと整理しやすいかなと思います。
さばいたときに精巣と卵で確かめる

さばいたときに精巣と精莢の発達が見られればオス、輸卵管の中に透明な卵がたくさん見られればメスです。ただし、これは成熟した個体の話という点は押さえておきたいところ。
徳島県の研究紹介の写真説明では、オスについて「成熟した♂イカの生殖腺。精巣と精莢の発達がみられる。」と書かれています。
メスについては「成熟した♀イカの生殖腺。成熟した♀では輸卵管内に大量の透明卵がみられ、卵を包む寒天状物質を分泌する包卵腺の発達がみられる。」とあります。
同じ資料では、メスの口唇部と受精嚢に植え付けられた精莢も写真で紹介されています。口唇部の精莢は産卵期が進むにつれて脱落するものの、長期間活性を持つそうです。
釣りの場面での例もあります。シマノの実釣編の記事(長崎県での7月の実釣・産卵末期)では、400gクラスでも卵を持っていたことに出演者のふたりが驚く様子が紹介され、写真には「胴のうっすら白い部分が卵。精子を打たれた跡もある成熟個体、サイズこそ小さいが立派な親イカだ。」という説明が付いています。
ダイワのコラムでも、筆者が6月上旬の船釣りで釣ったアオリイカを家でさばいたところ、卵巣がかなり大きくなっていたと書かれています。
さばき方は、シマノの解説によると「イカを捌く手順は、まず胴体から内臓ごと下足を引き抜いて、胴体を甲とエンペラに分離する。」という流れです。内臓を引き出すときに、生殖腺の様子も一緒に見ておくと判断の材料になります。
一方、成熟する前の個体で同じように見分けられるかは、今回の資料では確かめられませんでした。内臓で分からないときは、無理に決めなくて大丈夫ですよ。
ここまでの手がかりを、出典ごとに表にまとめておきます。
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| 手がかり | オスの特徴 | メスの特徴 | 確かめやすさ・限定 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 胴の斑点 | 細長い棒状 | 短い点状 | 体の色の変化で見え方が変わる(徳島県の資料) | ダイワ(初心者のための釣り入門)/色の変化は徳島水研だより第68号 |
| 胴の斑点 | 横にスジ状に伸びる | 丸みを帯びた形 | 体の色の変化で見え方が変わる(徳島県の資料) | シマノ(ソルト初心者釣り教室)/色の変化は徳島水研だより第68号 |
| 左の第4腕 | 交接腕化し、先端の25%ぐらいは吸盤が無く肉嘴が2列に並ぶ | —(資料に記載なし) | 腕の数え方は資料に無い | zen-ika.com のイカ図鑑 |
| 左の第4腕 | この腕で精莢を雌の受精嚢と口唇部に植え付ける | — | 腕の役割の説明 | 徳島県(生活史と人工産卵礁の研究紹介) |
| 内臓(生殖腺) | 精巣と精莢の発達 | 輸卵管内に大量の透明卵、包卵腺の発達 | さばいたときに見る。成熟した個体の話 | 徳島県(生活史と人工産卵礁の研究紹介) |
| 大きさ(外套長) | 30cm以上の95.0%がオス | 30cm未満ではメスの方が多い(オス41.2%) | 大型定置網の2024年11月〜2025年3月のデータ。1杯は大きさだけで決められない | 徳島県(水産資源調査・令和6年)をFreeLife Designで集計 |
大きいイカほどオスが多いかをデータで確認

徳島県の鞆浦漁協の大型定置網(冬〜春先)のデータを集計すると、大きいイカほどオスの割合が高い傾向が出ました。ただし、外套長25〜30cmではほぼ半々で、1杯を大きさだけで決めることはできません。
大きさについては、ダイワのコラム(Fish World)に「たいがいカラダの大きいのがオス。」、シマノの解説に「とくに産卵期はペアになって接岸していることも多く、大型はオスである確率が高い。」とあります。ダイワは産卵期のペアの話として、シマノは「とくに産卵期は」と前置きして書いています。
産卵期とは別に、徳島県の公的な数字ではどうなっているか見てみました。使ったのは、徳島県の水産資源調査(令和6年)にある、鞆浦漁協で漁獲されたアオリイカの雌雄別の外套長組成の表です。2024年11月から2025年3月の5か月間、大型定置網でアオリイカの水揚げがあったときに、外套長の測定と雌雄の判別が依頼されています。
この表を外套長の区分ごとに5か月分足し合わせ、オスの割合を計算したのが次の表です。
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| 外套長の区分 | オス | メス | オスの割合 |
|---|---|---|---|
| 10〜15cm | 8 | 40 | 16.7% |
| 15〜20cm | 167 | 312 | 34.9% |
| 20〜25cm | 328 | 495 | 39.9% |
| 25〜30cm | 289 | 284 | 50.4% |
| 30〜35cm | 162 | 12 | 93.1% |
| 35〜40cm | 54 | 0 | 100% |
| 40〜45cm | 14 | 0 | 100% |
| 合計 | 1,022 | 1,143 | 47.2% |
この表は、徳島県の水産資源調査(令和6年)の鞆浦漁協の表を、11月〜3月の5か月分足し合わせてFreeLife Designで計算したものです(割合は四捨五入)。大型定置網で獲れたイカの数字で、釣りの釣果ではありません。冬〜春先(2024年11月〜2025年3月)のデータで、産卵期のペアを調べたものでもない点に注意してください。雌雄の判別方法や、区分の境目(30cmちょうどなど)の扱いは原文に書かれていません。また、外套長は胴の長さで、重さではありません(出典:徳島県「水産資源調査・評価推進委託事業(生物情報収集調査)」)。
表を見ると、外套長30cm以上は242杯のうち230杯(95.0%)がオスで、35cm以上ではメスは0杯でした。逆に10〜15cmでは、48杯のうちオスは8杯(16.7%)と少なめです。
ところが25〜30cmでは、オス289杯・メス284杯でほぼ半々(50.4%)。30cm未満をまとめると、オス792杯・メス1,131杯で、オスの割合は41.2%とメスの方が多くなります。
この傾向は、ダイワのコラムやシマノの解説の言い方と同じ向きです。徳島県の研究紹介にある、7月1日を孵化日と仮定した成長曲線の説明でも「雄の方が成長がよく、漁獲の多い年は成長がよく、近年の高水温化傾向により大型化傾向にある。」と書かれています。
表の読み方の要点は2つです。外套長30cm以上ならオスの割合がかなり高いこと、そして30cm未満ではオスとメスが入り混じっていること。大きさは目安にとどめて、斑点・腕・内臓とあわせて判断するのがおすすめです。
アオリイカのオスメスと産卵期の行動・持ち帰り方
ここからは、オスかメスかを見分けたあとに気になる話です。結論から言うと、オスとメスの行動の違いがよく紹介されているのは産卵期です。ダイワのコラム(Fish World)では、産卵期にオスとメスが一対のペアを組み、オスがメスに寄り添う様子が紹介されています。
一方で、産卵期そのものは地域や資料によって幅があります。オスとメスで味がどう違うかを比べた資料も、今回調べた範囲では見つかりませんでした。
この章では、ペアの行動、地域ごとの産卵期、産卵を終えた親イカ、味の違い、卵を持ったメスを釣ったときの考え方を順に見ていきます。徳島県の公的資料、ダイワとシマノの解説、四国水族館の資料などを、出典ごとに分けて紹介しますね。
春の産卵期にオスとメスがペアを組む

答えを先に言うと、産卵期のアオリイカはオスとメスが一対のペアになって行動する、とダイワのコラム(Fish World)で紹介されています。オスはメスのそばを離れず、産卵が終わるまで付き添うそうです。
関東周辺の話として書かれたコラムでは、産卵期になると産卵場所にアオリイカが集まり、そこでオスとメスが出会う流れが書かれています。原文では「アオリイカは産卵期になると、どこからともなく産卵場所にぞくぞくと集まってきます。オスとメスとがそこで出会い、一対のカップルができます。」という表現です。
ペアができたあとのオスの動きも細かく書かれていて、「そのときも、ペアのオスは、きちんと産卵場に案内し、そのメスが卵を生み終わるまでそばにいます。生み終わるとまた寄り添って、その場をペアで去ります。」とのこと。なんだか律儀ですよね。
本州の話として書かれた同じダイワの別のコラムでも、オスはメスの前で体の大きさを誇示して気を引こうとし、ほかのオスが来れば喧嘩して追い払うと紹介されています。写真の説明には、撮影者からメスを守るためにオスが間に入ってきた場面も載っていますよ。
ただし、ペアの世界は平和なだけではないようです。関東周辺のコラムには「あるオスとオスとがメスをめぐって喧嘩しているすきに、一瞬フリーになっているメスを横取りすることも少なくありません。」とも書かれています。
公的資料にも、ペアに近い場面が出てきます。徳島県の資料には、県が開発した人工産卵礁で産卵するメスをオスが見守る写真が載っています。また、1回の観察で1個体のメスに大きさの違う精莢がいくつも植え付けられていたことから、「複数の♂による交接が行われている可能性があると推測できる。」とも書かれています。
つまり、1対のペアが見られる一方で、メスが複数のオスと交接している可能性もある、ということですね。シマノの記事では、広島大学の海野教授が、1杯のメスに対して何杯のオスが産卵行動に関わっているかを調べていると紹介されています。
同じ記事には、産卵は日中で、産卵期でも群れの個体数が多いと産卵しない個体も多いことが書かれています。さらに海野教授の話として、産卵の間隔が10日前後あり、その間は動きまわって捕食しているとも紹介されていました。
ペアの話は、あくまでコラムや研究紹介の範囲の観察です。釣りの場でペアをどう狙うかといった方法は、今回調べた資料には書かれていませんでした。産卵期はオスとメスが寄り添って過ごす季節、くらいに覚えておくとよいかなと思います。
産卵の時期は地域と資料で幅がある
結論として、アオリイカの産卵期は1つの時期に決めにくく、地域や資料によって幅があります。今回調べた資料だけでも、春とするもの、4~9月とするもの、6~7月とするものなどがありました。
まずは出典ごとに並べてみますね。
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| 出典 | 地域・対象 | 産卵期の書き方 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 徳島県「解明されつつあるアオリイカの生活史の全容と人工産卵礁の開発」 | 徳島県 | 4~9月(6か月間) | 産卵盛期は5~7月 |
| ダイワ Fish World アオリイカ vol.4(コラム・年の記載なし) | 本州 | 6~7月 | カジメやアラメといった海藻に卵を産み付ける |
| ダイワ Fish World アオリイカ vol.1(コラム・年の記載なし) | 関東周辺 | 6月中旬~8月一杯ぐらい | — |
| シマノ ソルト初心者釣り教室「調理方法 -レシピ-」 | 地域の記載なし | 春 | 産卵期はペアになって接岸していることも多いと紹介 |
| 四国水族館 プレスリリース(2024年7月) | 地域の記載なし | 4月から9月 | 寿命は1年と短いと説明 |
| 阿嘉島臨海研究所「アムスルだより No.6」(1994年) | 沖縄・慶良間 | 冬に大きく成長し、交接・産卵のため岸に近づく | 月の記載なし |
表のとおり、徳島県の資料は4~9月、関東周辺のコラムは6月中旬~8月一杯ぐらいと、書き方がかなり違います。沖縄・慶良間の資料では、冬に大きく成長して交接・産卵のため岸に近づくと書かれていて、季節そのものが違って見えますね。
徳島県の資料では、産卵期が4~9月の6か月間に及ぶため、早生まれと遅生まれで大きさが大きく異なると説明されています。8~9月に産卵されてふ化した個体は小型のまま冬を過ごすので、年間を通して小型の個体が見られるそうです。
別の徳島県の資料(徳島水研だより第64号)では、日本本土の藻場や産卵礁で4~9月に産卵された卵は1か月足らずでふ化し、その年の10~12月には体重300~1,000gに育つと書かれています。
卵の房(卵嚢)に入る卵の数も、資料によって書き方が違います。ダイワのコラムでは3~4粒、zen-ika.com のイカ図鑑では通常5個、阿嘉島臨海研究所の資料では5~9個入るタイプと2個しか入っていないタイプの2つがあるとされています。
どれが正しいというより、資料ごとの対象や書き方の違いと受け止めるのが無難かなと思います。釣りに行く海の産卵期を知りたいときは、その地域の漁協や都道府県の情報を確かめてみてください。
産卵を終えた親イカがオスとメスで残すもの

先に答えると、徳島県の資料では、産卵を終えた親イカの多くは、メスは体内に卵を、オスは精巣を残したまま死んでしまうと説明されています。原文は「多くの個体の場合、♀の親イカは体内に卵を、♂イカは精巣を残しながら斃死する。」です。
これは産卵礁の周りで死んでいた親イカの写真につけられた説明文で、同じ説明の中に「アオリイカの寿命は約1 年である。」とも書かれています。前の章で見た精巣や卵が、最後まで体の中に残っているということですね。
寿命については、今回調べた徳島県・シマノ・四国水族館の資料が、約1年または1年と書いています。徳島水研だより第64号では「寿命は約1年で,翌年の4~9 月に産卵した後,親イカは産卵ともなう疲弊のため死んでしまいます」と説明されています。シマノの解説は、ときに4kgを超える大型に育つイカだが寿命は一年。四国水族館のプレスリリースは、寿命は1年と短い、という書き方です。
同じ第64号では、徳島県で漁獲量が8月にいちばん少なくなる理由として、前年生まれの親の大部分が産卵後に死に、その年に生まれた群れもまだ小さくて漁獲の対象にならないからだと説明されています。産卵後に親イカがいなくなることが、漁獲量の動きの説明にも使われているわけです。
では、死んだ親イカはどうなるのでしょうか。シマノの記事では、年魚とされるアオリイカの死んだ個体を見ないのはなぜか、という湯川マサタカさんの疑問が紹介されています。
これに対する海野教授の答えは「そう、多分ね、ウツボとか何かが食べると思いますよ、すぐに」というもの。多分と前置きした話なので、確かめられた事実というより、研究者の見立てとして受け止めておくのがよさそうです。
産卵のあとに死ぬのはオスもメスも同じで、違うのは体に残しているもの、というのがこの節のポイント。ただし徳島県の資料が書いているのは多くの個体の場合の話で、すべての個体に当てはまるとまでは書かれていません。
前の章で見たとおり、精巣や卵が発達しているのは成熟した個体の特徴です。さばいたときにそれがはっきり見えたら、成熟した個体かもしれない、と考えるヒントになりますね。
オスとメスで味に違いはあるのか
結論から言うと、オスとメスで味を比べた資料は、今回調べた公的資料やメーカーの解説では見つかりませんでした。なので、どちらがおいしいとは言えない、というのが正直な答えです。
ここでは、資料で確かめられない味の説は紹介しないことにします。そのかわり、雌雄に関係なく分かっていることをまとめますね。
まず、徳島県の資料(徳島水研だより第64号)では、徳島産アオリイカの良さとして「まずは何と言っても甘みが強く味が良いことです。」と書かれています。エキス成分を調べたところ、甘みを持つアルギニン、グリシン、プロリン、アラニンなどの遊離アミノ酸が多量に含まれていたそうです。
同じ資料には「秋冬期のアオリイカは成長期にあり,大きさの割に肉厚で身が柔らかく甘みが強いのが特徴です。」ともあります。これは季節の話で、オスとメスを比べたものではない点に注意してください。
シマノの解説でも、食べ応えのある厚い身が特徴で、少し寝かせればねっとりした甘みが堪能できると紹介されています。こちらも雌雄の区別はありません。
味のまわりの話として、〆方の試験もあります。徳島水研だより第68号(出典:徳島県「アオリイカの〆方と透明感」)では、野〆したアオリイカは6時間もすると筋肉が透明感を失って真っ白になった一方、ナイフ〆・ヘラ〆・ハンマー〆では12時間たっても透明感が残っていたと報告されています。
そのうえで、4つの〆方の中ではハンマー〆が作業性と鮮度管理の面で有利とされています。急いで強く叩きすぎてイカの眼が飛び出さないよう注意が必要、とも書かれていました。
ただ、この試験は出荷を前提に、透明感や白さといった見た目を比べたものです。味そのものを測った試験ではないので、〆方で味がこう変わる、とまでは言えません。資料の中でも、他の〆方には気付いていないメリットもあるかもしれない、と控えめに添えられていますよ。
市場では透明度が鮮度を計るものさしとされている、とも同じ資料にあります。釣ったあとの見た目の鮮度を保ちたいなら、持ち帰りの道具も見直しておきたいところ。保冷の道具を選ぶときは、釣り用クーラーボックスの選び方も参考にしてみてください。
卵を持ったメスを釣ったときの判断
答えを先に言うと、卵を持ったメスを持ち帰るか放すかは、まずその釣り場のルールを確かめ、そのうえで決めるのがよいかなと思います。リリースの基準を一律に定めたルールは、今回調べた資料には見当たりませんでした。
ただ、地域によっては決まりや呼びかけがあります。ダイワのコラムでは関東周辺について「8月は禁漁とか、7月中旬から8月一杯まできちんと禁漁としているエリアも多く、この辺はマナーを守りたいですね。」と紹介されています。禁漁の期間や区域は、エリアによって違うということですね。年代が書かれていないコラムの話なので、今のルールは地元で確かめてください。
徳島県の資料(アオリイカ産卵床効果調査)では、近年アオリイカの漁獲量が減っているとしたうえで、漁業者が産卵床(イカ柴)を作ったり、産卵期の親イカや小型イカのリリースを釣り人に呼びかけたりして、資源管理に努めていると書かれています。
産卵床の取り組みはほかでも紹介されています。ダイワのコラムには、漁協単位で山から椎の木などを切ってきて海中に沈める所も多いとあります。四国水族館のプレスリリースでは、NPO法人黒潮実感センターが地元の小学生と一緒に産卵床を海に沈め、アオリイカの保全に取り組んでいると紹介されていました。
背景として、徳島県の資料には「親の数に対して自然界に卵嚢が多量に付着できるような産卵場は少ないようだ。」という一文もあります。卵を産める場所そのものが限られているかもしれない、という見方ですね。
釣りに行く前に確かめておきたいこと
- その海域に禁漁の期間や区域がないか
- 漁協や都道府県が親イカや小型イカのリリースを呼びかけていないか
- 持ち帰りについて地元の決まりや呼びかけがないか
正確な情報は、各都道府県・漁協の公式情報や資料の原文をご確認ください。
ルールの範囲なら、持ち帰るのも放すのも1つの選択です。迷ったときは、資源を残すために放すという選択肢もある、と頭の片隅に置いておくくらいでいいかなと思います。最終的な判断は、地元の漁協や釣具店、詳しい専門家にご相談ください。
持ち帰る場合も放す場合も、取り込みは落ち着いて。ダイワの入門解説では、足場が高い堤防だと大きいイカは胴の中に水が入って重く抜き上げられないため、タモ網を使い、イカの頭から入れるよう紹介されています。
足場の高い堤防でタモ網を扱うときは、足元の安全も忘れずに。釣り用ライフジャケットの選び方もあわせてチェックしておくと安心です。
卵を持ったメスを釣ったら、まず釣り場のルールを確認。そのうえで、持ち帰るか放すかを選ぶ、という順番で考えるのがおすすめです。
大きいイカの取り込みに使うタモ網は、たとえば次のような玉網と柄のセットがあります。枠の大きさや柄の長さ、価格は販売店で違うので、購入前に各ショップで確認してください。
アオリイカのオスメスについてよくある質問
秋の小さな新子でもオスメスは見分けられる?
小さい個体の見分け方を示した資料は、今回は見つかりませんでした。広島大学の海野教授が登場するシマノの実釣記事では、「模様や腕など、オスとメスの性差はあるが、どの段階でオスとメスになるのかはいまは分かってはいない。」と紹介されています。
徳島県の調査の表では外套長10~15cmの区分でもオスとメスが数えられていますが、どうやって見分けたかは原文に書かれていません。どう判別した数字なのかは分からないので、小さい個体の内訳は参考程度に見ておくのがよさそうです。
釣りではオスとメスのどちらが多く釣れる?
釣りで釣れるオスとメスの割合を調べた資料は、今回は見つかりませんでした。参考になるのは、前の章で紹介した徳島県の調査です。鞆浦漁協の大型定置網で2024年11月~2025年3月に獲れた2,165杯では、5か月の合計でオスの割合は47.2%、月ごとに見ると42.3~52.5%でした(FreeLife Designで計算)。
ただ、これは定置網で獲れた数字で、エギングなどの釣りの釣果ではありません。釣り方や時期、場所によってどうなるかは、この数字からは分からないと考えておくのがよさそうです。
産卵期のオスの体に傷が多いのはなぜ?
ダイワのコラム(Fish World)では、オス同士の争いが理由として紹介されています。「また力の拮抗したオス同士だと、触手でつかんで噛み付いたり、かなり激しい闘争を繰り返します。だから産卵期に突入すると、オスのカラダはキズだらけになることが多いようです。」とのことです。
これは関東周辺の話として書かれたコラムの筆者の観察で、傷の多さを数えた調査ではありません。その点は頭に入れておいてくださいね。
アオリイカは1年以上生きることもある?
徳島県の資料では、寿命は約1年とされています。冬や春にも体重100gの小型から3kgを超える大型までいろいろな大きさが獲れるため、1年中産卵している、1年以上生きる、といった疑問が寄せられるそうです。
これに対して同じ資料は、日本本土の産卵期は概ね4~9月で、早い時期に生まれたものは秋には1、2kgを超える大型に育ち、遅く生まれたものは翌春が来てもわずか100~200gほどで親になる、と説明しています。生まれた時期の差で大きさがばらつく、ということですね。
なお、ダイワのコラムの筆者は、船釣りで見た3.1キロのアオリイカがたった一年で育ったとは信じられない、と書いています。これはあくまで筆者の感想として受け止めておくとよいかなと思います。
アオリイカのオスメスの見分け方まとめ
アオリイカのオスメスは、まず胴の斑点の形で見分けて、迷ったら腕や内臓で確かめる。これがこの記事の結論です。最後に、前半と後半の要点を整理しておきますね。
- 斑点:今回調べたダイワとシマノの解説では、細長い棒状や横にスジ状に伸びる斑点がオス、短い点状や丸みを帯びた斑点がメス
- 色と模様:体の色や模様は色素胞の働きで変わり、〆ると透明感のある状態になるため、見え方はいつも同じとは限らない
- 腕:オスの左の第4腕は交接腕で、図鑑では先端の25%ぐらいに吸盤がなく円錐の肉嘴が2列に並ぶとされている
- 内臓:成熟した個体なら、オスは精巣と精莢、メスは輸卵管内の大量の透明卵と包卵腺の発達が見られる(徳島県の資料)
- 大きさ:徳島県の鞆浦漁協の定置網のデータでは、外套長30cm以上は242杯中230杯(95.0%)がオス。ただし25~30cmは50.4%とほぼ半々
大きさのデータは、大きいほどオスが多い傾向を示していますが、1杯を大きさだけで決めることはできません。全体のオスの割合は47.2%で、冬〜春先の定置網のデータという限定もあります。
産卵期には、オスとメスがペアを組む様子がダイワのコラムで紹介されています。産卵期は徳島県の資料で4~9月、関東周辺のコラムで6月中旬~8月一杯ぐらいなど、地域や資料で幅があります。
産卵を終えた親イカは、多くの場合メスは卵を、オスは精巣を体に残して死ぬと徳島県の資料に書かれています。味の雌雄差は、今回調べた資料では確かめられませんでした。
卵を持ったメスを釣ったときは、まず釣り場のルールを確かめて、持ち帰るか放すかを選んでみてください。数値はあくまで今回調べた資料の範囲の目安です。オスかメスかが分かると、釣ったアオリイカの見え方も少し変わるかもしれませんね。
持ち帰ると決めたアオリイカは、釣った直後に締めておくと身の透明感を保ちやすくなります。イカ締めで突く位置と持ち帰り方は目と目の間を突く手順と真水を避ける持ち帰り方で紹介しています。
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