天体観測に光害フィルターは必要?効果と選び方の基本

FreeLife Design 運営者 ケイ

こんにちは。FreeLife Design、運営者の「ケイ」です。

自宅のベランダや近所の公園から星を見ようとして、思ったより空が明るくてがっかりした経験はありませんか。街明かりで空全体がぼんやり白っぽくなって、星がほとんど見えない。そんなときに目に入るのが「光害カットフィルター」という道具です。

これを付ければ都会でも星がよく見えるようになるのかな、と期待したくなりますよね。ただ、先にお伝えしておくと、光害フィルターは万能な道具ではありません。効く対象がはっきり決まっていて、それ以外にはむしろ不利に働くことすらあります。ここを知らずに買うと、思ったほど変わらなかった、となりがちなんです。

とはいえ、条件が合えばしっかり仕事をしてくれる道具でもあります。大事なのは、自分の使い方がその条件に当てはまるかどうかを先に確かめること。この記事では、光害とは何かというところから、フィルターが実際に何をしているのか、どんな天体に効いてどんな天体には効かないのか、そして眼視と撮影で選び方がどう変わるのかまで順に整理していきます。

買うべきかどうか、買うならどれを選ぶべきか。読み終えるころには自分で判断できるようになっているはずですよ。

  • 光害とは何を指す言葉で、星がなぜ見えなくなるのか
  • 光害フィルターが遮っているものと、その仕組み
  • 効果が出る天体と、かえって不利になる天体の違い
  • 眼視と撮影それぞれで変わる選び方と確認したい点

天体観測で光害フィルターが求められる理由

まずは前提になる話から始めましょう。フィルターの説明に入る前に、そもそも街明かりが星の見え方に何をしているのかを押さえておくと、フィルターが何を狙った道具なのかが理解しやすくなります。

そもそも光害とは何を指すのか

「光害」は「ひかりがい」と読みます。日常であまり使わない言葉ですが、実は国が定義を示している用語なんですよ。

環境省が公表している光害対策ガイドラインでは、光害を「良好な光環境」の形成が、人工光の不適切あるいは配慮に欠けた使用や運用、漏れ光によって阻害されている状況、またはそれらによる悪影響としています(出典:環境省「光害対策ガイドライン」)。少し硬い言い方ですが、要するに人工の明かりが本来あるべき暗さを壊してしまっている状態のことですね。

同ガイドラインが対象としているのは、屋外を照らすすべての照明です。道路照明灯や防犯灯、街路灯といったものから、屋外広告物の照明、自動販売機や看板の照明、スポーツ施設や屋外作業場の照明、ライトアップなどの景観照明まで含まれます。こうして並べてみると、街の中でどれだけ多くの光が空に向かって漏れているかが想像できるのではないでしょうか。

ここで大事なのは、光害が星が見えないという話だけではないという点です。同ガイドラインでは、まぶしさによる不快感や、交通信号などの重要な情報が認知しにくくなること、野生動植物や農作物への悪影響も挙げられています。星を見る人にとっての問題であると同時に、もっと広い環境の問題でもあるわけですね。

つまり光害フィルターというのは、この「本来あるべき暗さが壊されている」状況に対して、観測する側から部分的に対処しようとする道具だということになります。原因そのものを消せるわけではない。この立ち位置を頭に置いておくと、後で出てくる効果の限界の話が腑に落ちやすいと思います。

街明かりが星を見えなくする仕組み

では、街明かりは具体的にどうやって星を見えなくしているのでしょうか。ここを押さえると、フィルターが何を狙っているのかが分かります。

ポイントは、星が消えているわけではないということです。星の光は都会でもちゃんと届いています。見えなくなるのは、背景である夜空そのものが明るくなってしまうからなんですね。

街の照明から上向きに漏れた光は、大気中の空気の分子や、水蒸気、ちり、そういったものに当たって散乱します。散乱した光は方向を変えて空全体に広がり、結果として夜空そのものがぼんやり光っている状態になる。この現象をスカイグローと呼ぶことがあります。空が薄い灰色や、場所によってはオレンジがかった色に見えるのはこのためです。

この散乱は空気中の水分やちりが多いほど強くなります。だから同じ場所でも、乾いた冬の晴れた夜と、湿度の高い夏の夜とでは空の明るさが違って感じられることがあるんですね。雨上がりで空気が洗われた日に星がよく見えた、という経験がある方もいるかもしれません。天気や季節でも条件は動くということです。

それともう一つ、光が漏れる方向の問題もあります。地面や看板だけを照らすように設計された照明と、上に向かって光が抜けていく照明とでは、空を明るくする度合いが変わります。環境省のガイドラインが屋外照明の使い方や漏れ光への配慮を求めているのは、この部分に対策の余地があるからですね。

星が見えるかどうかは、星の明るさと背景の明るさの差で決まります。真っ暗な背景に置かれた小さな光はよく目立ちますが、明るい背景に置かれた同じ光はほとんど分かりません。紙の上の鉛筆の線が、白い紙では見えても灰色の紙では見えにくくなるのと似た話です。

この差のことをコントラストと言います。都会で星が見えないのは、星が暗くなったからではなくコントラストが下がったから。だから対策の方向性は二つあって、ひとつは背景の明るさを減らすこと、もうひとつはそもそも明るい背景のない場所へ行くことです。光害フィルターは前者を狙った道具になります。

後者、つまり暗い場所へ移動するほうが効果としてははるかに大きいです。フィルターで得られる改善が数値でいえば控えめなのに対して、光害の少ない場所へ行けば見える星の数そのものが桁違いに変わります。全国の観測できる場所を探せる記事もありますので、遠征できる環境にある方はそちらから検討してみるのも手ですよ。フィルターは「動けない事情があるとき」の選択肢と考えると位置づけがはっきりします。

光害フィルターは何をしているのか

ここからが本題です。フィルターという名前のとおり、この道具は光を選り分けています。何を通して何を止めているのか、そしてなぜ対象によって効果が変わるのかを見ていきましょう。

特定の波長だけを遮る仕組み

望遠鏡の対物側にフィルターを取り付ける手元と、街明かりの光を遮り天体の光を通す経路を示した図
光害フィルターが光を選り分ける仕組み

光害カットフィルターがやっていることは、ひとことで言うと特定の波長の光だけを通さないことです。

光には色ごとに波長という長さの違いがあります。赤い光は波長が長く、青い光は短い。人工の照明は光源の種類ごとに、特定の波長に強いピークを持つという性質があります。たとえば水銀灯やナトリウム灯は、決まった波長のところだけが飛び抜けて強い光を出すんですね。

一方、私たちが見たい天体のうち、星雲と呼ばれるものは、こちらも特定の波長で光っています。ガスが電離して発する光なので、色が決まっているわけです。

この二つの波長がずれていれば、照明の波長だけを狙って遮り、天体の波長は通すという設計ができます。これが光害カットフィルターの原理です。フィルターメーカーのケンコー・トキナーも、街明かりなどの不要な光を除去して天体の光を透過させるフィルターとして製品を紹介しています(出典:ケンコー・トキナー「光害カットフィルター」)。

ここで注意したいのは、フィルターは光を増やす道具ではないということです。できるのは「減らす」ことだけ。背景の明るさを減らすことで相対的にコントラストを上げているのであって、星雲そのものが明るくなるわけではありません。むしろ天体側の光も多少は削られます。この点は後の話につながる重要なところです。

星景や夜景の撮影向けとして流通している光害カットフィルターの一例です。どの波長をどれだけ遮るかは製品ごとに設計が違うので、作例と仕様を見てから判断してくださいね。対応する口径は複数あるので、手持ちのレンズに合うものをご確認ください。

効果が出る天体と出ない天体

散光星雲や惑星状星雲には効果が期待でき、恒星や星団や銀河には不利になることを整理した表
効果が出る天体と出ない天体の比較

ここがこの記事でいちばん伝えたいところかもしれません。光害フィルターは、対象によって効いたり効かなかったりします。

理由は前の項目で説明した原理から出てきます。特定の波長で光っている天体に対しては、それ以外の波長を遮ることで背景だけを暗くできる。ところが、いろいろな波長の光を混ぜて出している天体に対しては、天体の光も一緒に削ってしまうんですね。

整理すると、こうなります。

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対象 光り方 フィルターの効き方
散光星雲 特定の波長で強く光る 効果が期待できる
惑星状星雲 特定の波長で強く光る 効果が期待できる
超新星残骸 特定の波長で強く光る 効果が期待できる
恒星(星そのもの) 幅広い波長で光る 暗くなるだけで不利
散開星団・球状星団 恒星の集まり 暗くなるだけで不利
反射星雲 星の光を反射している 暗くなるだけで不利
系外銀河 幅広い波長で光る 暗くなるだけで不利
月・惑星 太陽光の反射 用途が違う(別のフィルター)

表を見ると、効くのはガスが自ら光っているタイプの天体だけだと分かります。散光星雲、惑星状星雲、超新星残骸。この三つが主な対象です。

逆に、星団や銀河にはほとんど意味がありません。それどころか、フィルターを通すぶん全体が暗くなるので、かえって見えにくくなることがあります。「せっかく買ったのに何も変わらない」ではなく「悪くなった」と感じるケースがあるのは、この不一致が原因なんですね。

月や惑星を見たい場合も、必要になるのはこのフィルターではありません。アイピースと月面フィルターの優先順位をまとめた記事で、減光タイプの役割と買い足す順番を扱っていますので、目的が月ならそちらが近いと思います。

買う前に自分が見たい・撮りたい天体が何なのかをはっきりさせてください。星団や銀河、あるいは月や惑星が目当てなら、光害カットフィルターは目的の道具ではありません。効果が出る条件が限られているので、汎用の便利グッズとしては期待しないほうがいいです。なお製品ごとに透過する波長の設計は異なりますので、正確な情報は各メーカーの公式サイトをご確認ください。

LED照明の普及で変わってきたこと

もう一つ、近年の事情として押さえておきたい話があります。街の照明がLEDに置き換わってきたことで、従来のフィルターが効きにくくなってきているという指摘です。

これも原理から説明できます。フィルターが成立していたのは、水銀灯やナトリウム灯が「特定の波長だけ強い」という性質を持っていたからでした。狙いを絞れたから、そこだけを遮ることができた。

ところがLEDの白色光は、幅広い波長にわたって連続的に光を出します。ピークが立っていないので、狙って遮るべき場所がない。全部遮ろうとすれば天体の光まで一緒に消えてしまいます。遮る相手の性質が変わってしまったということですね。

街灯のLED化は省エネの観点から各地で進んでいますから、この傾向は今後も続くと考えられます。つまり、これから光害フィルターを検討する人は、昔の評判をそのまま当てにできない可能性があるということ。同じ製品でも、設置されている照明の種類が変わった地域では体感が違ってくるかもしれません。

とはいえ、これはフィルターが無意味になったという話ではありません。地域によってはまだ従来型の照明が多く残っていますし、撮影後の画像処理と組み合わせる使い方では別の意味も持ちます。ただ「都会でもこれさえあれば」という期待の持ち方は、以前より慎重にしたほうがいい状況だと思います。

◆ケイのワンポイントアドバイス

自分の観測場所にどんな照明が多いか、一度昼間に歩いて見てみるといいですよ。街灯の見た目で判断できることもあります。オレンジ色に光るのはナトリウム灯、白くて青みがかっているものはLEDであることが多いです。買う前の手がかりになります。

用途別に見る光害フィルターの選び方

効く条件が分かったところで、実際の選び方に移ります。ここで大きく分かれるのが、目で見るのか、写真に撮るのかという違いです。同じ光害フィルターという名前でも、求められるものがかなり変わってきます。

眼視で使う場合の考え方

望遠鏡や双眼鏡をのぞいて直接見る使い方を「眼視」と言います。この場合の判断は、実はけっこうシビアです。

理由は、人間の目は暗い対象の色や淡い差を見分けるのが苦手だから。カメラなら長時間光を溜めて差を強調できますが、目にはその機能がありません。フィルターで背景が少し暗くなっても、体感として大きく変わったとは感じにくいでしょう。

それでも眼視で効果を感じやすいのは、次のような条件がそろったときです。

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条件 理由
対象が散光星雲や惑星状星雲 フィルターが効く波長で光っているため
ある程度の口径がある 元の光量が少ないと、削った分の影響が大きい
目が暗さに慣れている 暗順応していないと差が分からない
周囲に直接の光源がない 目に入る余計な光はフィルターでは防げない

二つめの口径の話は見落とされがちです。フィルターは光を減らす道具なので、そもそも集められる光が少ない小口径の機材では、減った分がそのまま「暗くて何も見えない」につながることがあります。手持ちの機材との相性を考えてください。

三つめの暗順応も大切です。目が暗さに慣れるには時間がかかりますし、途中で明るい光を見ると振り出しに戻ります。この状態を保つ工夫については赤色ライトの必要性と使い方をまとめた記事で詳しく書いていますので、あわせて読んでみてください。フィルターを買う前にここを整えるだけで見え方が変わることもあります。

それと、淡い天体を見るにはそらし目という見方のコツもあります。道具を足す前に、見方のほうで拾える部分も残っているかもしれません。

星空撮影で使う場合の考え方

撮影で使う場合は、眼視とはだいぶ事情が変わります。こちらのほうが効果を実感しやすいと言っていいと思います。

理由は三つあります。まず、カメラは長時間の露光で光を溜められるので、フィルターで光量が減ってもシャッター時間を延ばして補えること。次に、撮影後の画像処理で差を強調できること。そして三つめが、色かぶりを抑えられるという撮影特有のメリットです。

三つめについて補足しますね。街明かりのある場所で長時間露光すると、写真全体がオレンジや黄色に染まってしまうことがあります。これを色かぶりと言います。後から補正することもできますが、元の段階で偏りが小さいほうが、処理の自由度は高くなります。フィルターはこの偏りを減らす方向に働くわけです。

撮影用として選ぶときに見ておきたいのは、次のような点でしょうか。

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確認する点 見方
カットする波長の範囲 広く切るほど効果は強いが色の偏りも出やすい
星の色が残るか 強く切る製品ほど星の色味が失われやすい
ソフト効果の有無 星をにじませて目立たせる機能が付いた製品もある
取り付け方式 レンズ前・レンズ後・カメラ内蔵など

一つめと二つめは表裏の関係にあります。広い範囲を切れば背景はよく暗くなりますが、そのぶん星の本来の色も削られて、写真全体が不自然な色調になることがある。どこで折り合いをつけるかは好みの問題でもあるので、作例を見て決めるのが実際的です。

光害カットに加えて、明るい星をわずかににじませるソフト効果を兼ねたタイプもあります。星座の形を分かりやすく写したいときに使われる仕組みですね。効果の強さは製品によって違うので、購入前に作例をご確認ください。

スマホで星空を撮りたいという方は、フィルターより先に固定の仕方を整えるほうが効果が大きいかもしれません。スマホアダプターの選び方を整理した記事もありますので、そちらも見てみてください。ぶれを止めるほうが先、というのはよくある話です。

取り付け方式とサイズの確認

レンズ枠に刻まれた口径表示と、ねじ込み式のフィルターを重ねた写真
取り付け方式とフィルター径の確認

意外とここでつまずく人が多いので、買う前の実務的な確認事項をまとめておきます。フィルターは機材に付かなければ意味がありません。

主な取り付け方式には次のようなものがあります。

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方式 付ける場所 確認すること
ねじ込み式(丸型) レンズ先端・接眼レンズ フィルター径(mm)が合うか
角型 専用ホルダーに差し込む ホルダーとサイズの規格
差し込み式 接眼部・アイピース側 スリーブの太さの規格
後付け式 レンズとカメラの間 機種ごとの対応可否

カメラレンズに付ける丸型の場合、必要なのはフィルター径という数値です。レンズの先端や、レンズキャップの裏に「⌀58」のように書かれていることが多いですね。この数字が合っていないと物理的に付きません。

望遠鏡で使う場合は、アイピース側に差し込む径の規格を確認してください。一般的な規格がいくつかあり、機材によって異なります。

それと、複数のレンズで使い回したいという場合は、いちばん大きい径に合わせて買い、小さいレンズにはステップアップリングという変換部品を使う方法があります。フィルターを何枚も買うより経済的です。ただし枠の厚みが増えるので、広角レンズでは四隅が暗くなることもあります。

製品ごとの対応機材や規格は表示が異なりますので、購入前には正確な情報を各メーカーの公式サイトでご確認ください。手持ちの機材との適合で迷ったときは、販売店に型番を伝えて確認するのが確実です。

複数のレンズで一枚を使い回すなら、径を変換するリングがまとめて入ったセットが便利です。いちばん大きい径に合わせてフィルターを買い、小さいレンズはリングで受けるという考え方ですね。対応する径の組み合わせは商品ごとに違うので、購入前にご確認ください。

買う前に確認しておきたい注意点

最後に、購入を検討している方に向けて、判断を誤りやすいポイントと、フィルターの前に試してほしいことをまとめておきます。ここを飛ばすと「買ったけど使っていない」になりがちなので、ぜひ目を通してください。

フィルターで解決しないこと

光害フィルターには、原理上どうしても手が届かない領域があります。期待をかけすぎないために、はっきりさせておきましょう。

まず、視界に直接入ってくる光には効きません。隣の家の外灯、自動販売機、通り過ぎる車のヘッドライト。これらは望遠鏡の中を通ってくる光ではないので、フィルターでは防げないんですね。目に直接入って暗順応を壊すタイプの光害には、遮光の工夫や場所の変更で対処するしかありません。

次に、薄雲や大気の状態にも効きません。空がかすんでいる、湿度が高い、上空の空気が揺らいでいる。こうした条件が悪いときは、フィルターを付けても改善しない場合があります。

そして、月明かりにも基本的には効果が薄いです。月の光は太陽光の反射なので幅広い波長を含んでいます。狙って遮る波長がないという点で、LEDと同じ事情ですね。満月に近い時期は、フィルターの有無より月齢を選ぶほうが確実です。

まとめると、フィルターが対処できるのは望遠鏡やレンズを通って入ってくる、特定の波長の人工光だけということになります。範囲がかなり限定されていると分かってもらえるでしょうか。

先に試したい光害対策

フィルターを買う前に、お金をかけずに試せることがいくつかあります。効果の大きさで言えば、こちらのほうが上回ることも珍しくありません。

順番としては、こう考えるといいかなと思います。

一つめは観測場所を変えること。同じ市内でも、住宅街の中と川沿いの開けた場所では空の暗さがまったく違います。まずは近所で少しでも暗い場所を探してみてください。数キロ移動するだけで景色が変わることもありますよ。

二つめは向きと時間を選ぶことでしょうか。街の中心部と反対側の空を狙う、街灯が消える深夜に見る、建物の陰に入って直接の光を遮る。工夫の余地はけっこう残されているものです。

三つめは目のコンディションを整えることです。暗い場所に入ってから目が慣れるまで時間を置く、スマホの画面を見ない、明るいライトを使わない。これは無料でできて、しかも効果がはっきり出ます。

四つめは対象を選ぶことです。都市部でも月や惑星、明るい恒星、二重星なら十分に楽しめます。淡い星雲に挑んで見えないと落ち込むより、条件に合った対象を選ぶほうが続けやすいですよ。基本的な進め方については天体観測の始め方をまとめた記事で道具・場所・時期の全体像を整理していますので、迷ったらそちらから見てみてください。

光害フィルターを買う前のチェックリスト

  • 見たい・撮りたい対象は散光星雲や惑星状星雲か(星団や銀河なら効果は薄い)
  • 眼視か撮影か(撮影のほうが効果を実感しやすい)
  • 手持ちの機材の口径は十分か(小口径では暗くなりすぎることがある)
  • 観測場所の街灯はLEDに置き換わっていないか
  • フィルター径や取り付け規格は機材と合っているか
  • 場所・向き・時間・暗順応など、無料でできる対策は試したか

それと、都市部で見るなら双眼鏡という選択肢も現実的です。手軽に持ち出せて視野が広いので、明るい対象を気軽に楽しむには向いています。倍率と口径で選ぶ双眼鏡の選び方もまとめてありますので、機材から見直したい方は参考にしてみてください。

天体観測の光害フィルターに関するよくある質問(FAQ)

光害フィルターを付ければ都会でも天の川は見えますか?

難しいと考えたほうがいいです。天の川は無数の恒星が集まって見えているもので、フィルターが効く「特定の波長で光る天体」には当てはまりません。恒星は幅広い波長で光っているので、フィルターを通すと背景と一緒に天の川自体も暗くなってしまいます。都市部で天の川を見たい場合は、フィルターより暗い場所へ移動するほうが現実的です。撮影であれば画像処理で浮かび上がらせられることもありますが、それでも元の空の暗さが結果を大きく左右します。

安い製品と高い製品では何が違うのですか?

主に、遮る波長の設計の精度と、ガラスやコーティングの質の違いです。狙った波長だけを鋭く切れる製品ほど、天体の光を残しながら背景だけを落とせます。安価な製品は切り方が緩やかで、天体の光まで一緒に削ってしまうことがあります。また、コーティングの質は反射やゴーストの出にくさに関わります。ただし高ければ自分の環境で効くとは限らないので、価格より「自分の対象と光源に合っているか」を先に確認してください。仕様は製品ごとに異なりますので、正確な情報は各メーカーの公式サイトをご確認ください。

フィルターを付けたままでも大丈夫ですか?

対象によっては外したほうがよいです。星団や銀河、月や惑星を見るときは、フィルターがあると光量が減るだけで利点がありません。散光星雲を見るときだけ付ける、という使い分けが基本になります。付け外しの手間を考えると、暗い中でも扱いやすい方式を選んでおくと運用が楽ですよ。なお、使わないときはケースに入れて保管し、レンズ面に指紋や汚れを付けないようにしてください。

ベランダからの観測でも効果はありますか?

条件によります。ベランダ観測では、空の明るさよりも近くの照明が直接目に入ることのほうが問題になりがちです。前述のとおり、視界に直接入る光にフィルターは効きません。まずは自室や隣室の明かりを消す、遮光の工夫をする、といった対策のほうが効きます。そのうえで散光星雲を狙うなら、フィルターの出番もあるという順番ですね。また、建物の壁や室外機から出る熱で空気が揺らぎ、像が乱れることもあります。これもフィルターでは解決しません。

光害そのものを減らすためにできることはありますか?

個人でできる範囲でも、いくつかあります。自宅の屋外照明を必要な範囲だけ照らす向きに調整する、明るさを過剰にしない、使わない時間帯は消すといったことですね。環境省の光害対策ガイドラインでも、屋外照明の適切な使用や漏れ光への配慮が示されています。星を見る側だけの問題ではなく、まぶしさや動植物への影響も含めた話なので、身近なところから見直してみるのも意味があると思いますよ。地域の照明については自治体の方針もありますので、詳しくはお住まいの自治体や公式の資料をご確認ください。

まとめ|光害フィルターは用途を決めてから選ぶ

ここまでの内容を整理しておきますね。

光害フィルターは、街明かりに含まれる特定の波長を遮ることで、背景の明るさを下げてコントラストを上げる道具です。国が定義する光害そのものを解決するわけではなく、観測する側から部分的に対処するための道具、という位置づけになります。

効果が出るのは散光星雲・惑星状星雲・超新星残骸のように、特定の波長で自ら光っている天体に限られます。恒星や星団、反射星雲、系外銀河には効果が乏しく、光量が減るぶんかえって不利になることもあります。ここが最も誤解されやすいところなので、購入前にご自身の目的と照らし合わせてみてください。

使い方でいえば、眼視より撮影のほうが効果を実感しやすいです。露光時間で光量の減少を補えますし、色かぶりを抑えられるという撮影ならではの利点もあります。眼視で使うなら、対象が星雲であること、機材にある程度の口径があること、暗順応ができていることがそろっているかを確認してください。

そして近年は、街灯のLED化によって従来型のフィルターが効きにくくなっているという事情もあります。昔の評判をそのまま当てにせず、自分の観測場所の照明がどんな種類かを見てから判断するのが安全です。

買う前に試せることも残っています。少しでも暗い場所へ移動する、街の反対側の空を狙う、目を暗さに慣らす、条件に合った対象を選ぶ。どれもお金がかからないうえに、フィルターより大きな変化をもたらすことが多いです。順番としては、これらを試してから、それでも足りない部分を埋める道具として検討する。この流れがいちばん失敗しにくいかなと思います。

なお、フィルターの仕様や対応機材、透過する波長の設計は製品ごとに異なりますので、購入前には正確な情報を各メーカーの公式サイトでご確認ください。手持ちの機材との適合や、ご自身の観測環境での効果について迷ったときは、最終的な判断は販売店やメーカーにご相談いただくのが確実です。あなたの星空の時間が、少しでも見やすいものになりますように。