光害とは?天体観測で星が見えない理由と避け方の基本

FreeLife Design 運営者 ケイ

こんにちは。FreeLife Design、運営者の「ケイ」です。

せっかく夜空を見上げたのに、星が数えるほどしか見えなくてがっかりしたことはありませんか。

その原因の多くは、街の明かりによる「光害」かもしれません。

光害というと「都会に住んでいる限りどうにもならない」と思われがちですよね。

でも実際は、見る場所・見る方角・見る時間を少し工夫するだけで、見える星の数はかなり変わってきます。

この記事では、光害の仕組みは要点だけにとどめて、「自分の空がどれくらい明るいのかを知る方法」と「光害を避けるための判断の手順」を中心にまとめました。

環境省の資料に出てくる目安や、光害マップの見方も紹介していきますね。

この記事で理解できること

  • 光害で星が見えにくくなる仕組みの要点
  • 環境省の6段階の目安で自分の空の明るさを知る方法
  • 光害の少ない場所と方角を選ぶ判断の手順
  • 時間・月・天気を組み合わせて光害を減らすコツ
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光害とは?天体観測で星が見えない理由

まずは「光害とは何か」と「なぜ星が見えなくなるのか」を、必要なところだけ押さえておきましょう。

ここを知っておくと、あとで紹介する場所選びや方角選びの理由がすっと理解できるはずです。

ポイントは、光害が「星そのもの」ではなく「空の背景」に起きている現象だということ。

仕組みは2つの見出しでコンパクトにまとめますので、気軽に読み進めてみてください。

「なんとなく街が明るいから見えない」と感じていた方も、どの光が、どんな形で星をじゃましているのかが分かると、対策の打ち方がぐっと具体的になります。

難しい計算や専門的な知識は使わないので、あなたの家の周りの夜空を思い浮かべながら読んでみてくださいね。

仕組みが分かれば、次の章からの対策もぐっと選びやすくなります。

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人工の光が夜の暗さを壊すこと

結論からいうと、光害とは人工の光が必要のない場所や方向にまで届いて、本来あるはずの夜の暗さを損なってしまう状態のことです。

国の資料では、光害を次のように定義しています。

「光害とは、『良好な光環境』の形成が、人工光の不適切あるいは配慮に欠けた使用や運用、漏れ光によって阻害されている状況、又はそれらによる悪影響のことである。」(出典:環境省「光害対策ガイドライン」)

少し硬い表現ですが、要するに、照明の使い方や光の漏れ方のせいで、本来あるはずの夜の暗さがじゃまされている状態だと考えればOKかなと思います。

この定義の中に出てくる「漏れ光」は、照明器具から出た光のうち、本来照らしたい範囲の外に出ていく光のことです。

天体観測で特に問題になるのが「上方光束」で、これは照明器具から出る光のうち、水平より上の方向へ向かう光を指します。

道路や駐車場を照らすつもりの照明でも、光の一部が空へ向かってしまうと、それが夜空の明るさにつながっていくわけですね。

ほかにも、住宅の中など照らすべきでない場所を外から照らしてしまう光は「侵入光」と呼ばれています。

また、視界の中に極端にまぶしい部分があったり、明暗の差が大きすぎたりして、ものが見えにくくなったり不快に感じたりする状態は「グレア」と呼ばれるもの。

グレアは、見る力そのものが落ちるタイプと、まぶしさで不快に感じるタイプの2つに大きく分けられます。

天体観測でいえば、すぐ近くの街灯がまぶしくて暗い星が見えにくくなるのは、まさにこのグレアの影響です。

ちなみに国の資料では、照明を設計するときの考え方として、地域を周りの明るさに応じて4つに分けています。

自然公園や里地のように本質的に暗く保つべき地域、村落部や郊外の住宅地、都市部の住宅地、そして大都市の中心部や繁華街という分け方です。

これは観測地を格付けするための分類ではありませんが、「住んでいる環境によって夜の明るさがかなり違う」というイメージをつかむには役立ちます。

ここで誤解しやすいのが、「光害=照明が悪いもの」という受け止め方です。

照明は夜の安全や暮らしに欠かせないもので、問題になるのはあくまで「不要な方向に漏れている光」のほう。

つまり光害は、明かりそのものではなく、必要のない場所や空へ向かってしまった光が夜の暗さを壊している状態だと押さえておきましょう。

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星が消えるのではなく空が明るくなる

街の照明から上に漏れた光が大気中の粒で散らばり、夜空全体が明るくなるスカイグローの仕組みを示した図解スライド
星が見えにくいのは空の背景が明るくなるから

街中で星が見えにくいのは、星の光が弱くなったからではなく、星の背景になっている夜空が明るくなってしまうからです。

空へ向かった人工の光は、大気中のちりや水分などの粒にぶつかって散らばり、夜空全体をぼんやりと明るくします。

この現象は「スカイグロー(skyglow)」と呼ばれていて、上方光束が増えるほどスカイグローも大きくなり、星が見えにくくなると国の資料でも説明されています。

イメージしやすいのは、昼間の空かもしれません。

星は昼間も空にありますが、太陽の光で空が明るすぎるので私たちには見えませんよね。

光害はこれを小さくしたような状態で、空の背景が明るくなるほど、暗い星から順番に背景に溶け込んで見えなくなっていきます。

とても明るい星や惑星が街中でも見えるのに、暗い星や天の川が見えないのはこのためです。

さらに、色温度の高い照明から多く出る青っぽい光は、波長の短い光なので大気中で散らばりやすく、スカイグローをいっそう強めるとされています。

もうひとつ知っておきたいのが、スカイグローの影響範囲の広さ。

国の資料によると、大都市の街明かりは100km以上離れた地点での天体観測にも影響することがあるそうです。

「少し街から離れたのに思ったより空が明るい」と感じるのは、遠くの街の光が空に広がっているからかもしれません。

この影響は世界的にも大きく、同じ資料では海外の研究を紹介する形で、世界で80%以上の人々が人工光に汚染された夜空の下で暮らしていると説明しています。

さらに、世界人口の3分の1以上(北アメリカでは約80%)が天の川を見られない環境で生活していて、日本でも人口の約70%が天の川を見られない環境で暮らしているとのこと。

天の川が見えないのは、あなたの目のせいでも、観察の仕方が悪いせいでもなく、住んでいる場所の空がそもそも明るいからという可能性が高いわけです。

ただし「光害がある場所では星を楽しめない」というわけではありません。

空の明るさは方角や高さによってムラがありますし、時間や天気によっても変わります。

星が消えたのではなく背景が明るくなっているだけだと分かれば、背景がより暗い空を探せばいいという発想に切り替えられますよ。

自分の空の明るさを知る方法

光害を避ける第一歩は、「今いる場所の空がどれくらい明るいのか」を知ることです。

自分の空の明るさが分かれば、そこで何が見えそうか、もっと暗い場所へ行くべきかを判断しやすくなります。

環境省の星空観察の資料では、天の川が見えない理由として「雲があって見えない」「近くに照明があって見えない」「夜空が明るくて見えない」という選択肢が用意されています。

つまり、見えない原因は雲・近くの照明・夜空そのものの明るさの3つに切り分けて考えられるということ。

ここでは「夜空そのものの明るさ」を測る目安と、暗い場所の候補を探す光害マップの2つを紹介します。

どちらも特別な機材は要らないので、出かける前の下調べとして気軽に使えますよ。

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環境省の6段階の目安で空を見分ける

自分の空の明るさを知るには、環境省が調査で使っている6段階の目安に、見えている星の様子を当てはめてみるのが分かりやすい方法です。

環境省は、デジタルカメラで天頂付近(頭の真上あたり)の星空を撮影し、その画像から夜空の明るさを調べる調査を行っています。

夜空の明るさは「mag/□”」という単位で表されます。

「mag/□”」は、空の1平方秒角あたりの明るさを星の等級で表した単位です。

星の等級と同じく、数値が大きいほど暗い空=星が見えやすい空という意味になります。

「数値が大きい=明るい」と逆に覚えてしまいやすいので注意してくださいね。

そのうえで、数値ごとの見え方の目安は次の表のとおりです。

→ 横にスクロールできます

夜空の明るさ(mag/□”) 見え方の目安
21以上 天の川の複雑な構造が確認でき、星団などの観測ができる
20以上~21未満 山や海などの暗さ、天の川がよく見られる
19以上~20未満 郊外の暗さ、天の川が見え始める
18以上~19未満 住宅地の明るさ、星座の形がよく分かる
17以上~18未満 市街地の明るさ、星座の形が分かり始める
17未満 都市部の明るさ、星はほとんど見られない

(出典:環境省「令和3年度冬の星空観察」調査結果)

測定器やカメラが無くても、この表の右側の「見え方」から逆にたどれば、自分の空がどの段階に近いかをおおまかに見当づけられます。

ただし、環境省の値はデジタルカメラで撮った画像から測ったもので、目で見て当てはめるのはあくまで参考程度の比べ方だと考えてくださいね。

たとえば、星座の形がやっと分かる程度なら「市街地の明るさ」、星座の形がはっきり分かるなら「住宅地の明るさ」の段階に近い、という見方です。

天の川がうっすらとでも見えてきたら、郊外くらいの暗さまで来ていると考えられるでしょう。

ここで大事なのが、判断する前に目を暗さに慣らしておくこと。

環境省の星空観察の資料でも、暗い環境で時間をかけて目を慣らすと(目安10分以上)、かすかな星が見えてきて観察しやすくなると案内されています。

明るい部屋から出てすぐに空を見て「何も見えない」と決めつけると、空の明るさを実際より悪く見積もってしまうかもしれません。

参考までに、令和3年度冬の調査では有効データ431件のうち、最も暗い値は自然公園などで測られた21.68 mag/□”でした。

令和2年度夏の発表では有効データ547件で、地域区分「森林山間地」の最大値は22.18 mag/□”だったそうです。

なお、環境省は1988年から2012年までの25年間、「全国星空継続観察」という調査も続けていました。

海外では9段階の「ボートル・スケール」という目安も使われていますが、まずは日本語で見え方が書かれているこの6段階の表から使ってみるのがおすすめです。

ただし、表の数値はあくまで一般的な目安で、同じ場所でも日によって見え方は変わります。

何度か同じ場所で空を見て、「いつもはこの段階くらい」という自分なりの基準を持っておくと、遠征先の空と比べるときにも役立ちますよ。

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光害マップで暗い場所の候補を探す

空の明るさを表す層で暗いエリアを探し、地上の光源を表す層で街の方角を確かめる光害マップの使い方を2つの手順で示したスライド
光害マップで暗い場所の候補を探す手順

暗い場所の候補を探すなら、光害マップで「空の明るさ」を見て候補を出し、「地上の光源」で近くの明かりを確かめるという2段階の使い方が便利です。

光害マップとして代表的なのが、「lightpollutionmap.info」というウェブサイトです。

このサイトのヘルプページによると、地図にはいくつかの層(レイヤー)があり、それぞれ示しているものが違います。

VIIRSなどの層は、人工衛星が測った「地上の光源」の明るさを表しています。

一方でWorld Atlas 2015の層は、「地上の光が原因で、空がどれくらい明るくなっているか」を計算で求めたものです。

この違いを知っておくと、地図の見方がぐっと分かりやすくなります。

層の切り替え方や色と数値の読み方、候補地を比べて観測日を決めるまでの流れは、地図の層と数値の読み方から候補地を絞る手順で詳しく解説しています。

具体的な手順としては、次のような流れが考えられます。

まず、World Atlas 2015の層を表示して、住んでいる場所から行けそうな範囲で色が暗くなっているエリアを探します。

次に、候補のエリアでVIIRSなどの光源の層に切り替えて、近くに大きな明かりの集まりがないか、どの方角に街があるかを確かめましょう。

さらに、このサイトでは利用者が投稿したSQM(夜空の明るさを測る測定器)の実測値も表示できるので、近くに投稿があれば参考にしてみてください。

SQMの値も、さきほどの6段階の表と同じくmag/□”で表されるので、見比べやすいはずです。

◆ケイのワンポイントアドバイス

光源の層で街の位置を確かめておくと、現地で「どちらの空が暗そうか」まで先に見当がつけられるので、とても動きやすくなりますよ。

ここで注意したいのが、地図の色や数値はモデル(計算)にもとづいているという点。

実際の空の明るさは、天気や月、湿度によって大きく変わります。

地図で暗い色だったからといって、行けばいつでも天の川が見えるとは限らないので、地図は候補を絞る道具で、最終的には現地で確かめる前提で使うのがおすすめです。

候補探しのもうひとつの手がかりが、国際的な暗い空の保護制度である「星空保護区」です。

国内では、西表石垣国立公園(沖縄県)、神津島(東京都)、井原市美星町(岡山県)、大野市南六呂師(福井県)などが認定されていて、西表石垣国立公園が国内初の認定地となっています。

ただし、認定の状況や見学できる範囲、現地のルールは変わることもあるため、正確な情報は各自治体や公式サイトの案内をご確認ください。

実際の観測スポットの候補を知りたい方は、全国の天体観測スポットや穴場の探し方をまとめた記事もあわせて読んでみてください。

また、現地でどの方角に何の星座があるかを確かめたいときは、無料と有料の天体観測アプリを比較した記事も参考になるかなと思います。

光害の少ない場所と方角の選び方

街の反対側の空を見る、地平線近くより高い空を狙う、目に入る照明を視界から外すという3つの工夫を並べたスライド
街の明かりを避ける場所と方角の選び方

自分の空の明るさと候補地の見当がついたら、次は「どこで・どちらを向いて見るか」を考えていきます。

同じ場所にいても、向く方角や見上げる高さを変えるだけで、空の暗さはかなり違ってきます。

遠くの暗い場所へ行けないときでも、ここで紹介する工夫は近所の空で今夜から試せるものばかりです。

ポイントは「街の方向を避ける」「高い空を狙う」「目に入る光を遮る」の3つです。

どれもお金がほとんどかからず、組み合わせるほど空を暗く使えるのがうれしいところ。

自宅のベランダや近所の公園でも試せるので、まずはいつもの観察場所で1つずつ取り入れてみてください。

どの工夫がいちばん効くかは場所によって違うので、いくつか試して自分の空に合うものを見つけていきましょう。

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街の反対側の空を見る

同じ場所から見るなら、街がある方角とは反対側の空を向くのが、光害を避けるいちばん手軽な方法です。

街の明かりは、空全体を同じように明るくするわけではありません。

街のある方向の地平線付近がとくに明るくなり、遠くから見ると光のドームのように空がぼんやり光って見えることがあります。

そのため、街を背にして反対側の空を向けば、比較的暗い空を使いやすくなるわけです。

具体的には、次のような順番で考えると判断しやすいと思います。

まず、観測地から見て大きな街がどの方角にあるかを、地図や光害マップの光源の層で確かめます。

次に、現地で空をぐるっと見渡して、地平線近くが白っぽく明るくなっている方向を見つけてみてください。

その方向を背にして立ち、反対側の空で星を探すと、同じ場所でも見える星が増えやすくなります。

たとえば海や山に囲まれた場所なら、街がない海側や山側の空のほうが暗いことが多いでしょう。

ここで気をつけたいのは、見たい天体がいつも暗い方角にあるとは限らないという点です。

観測したい星座や天の川が街の方角に昇ってくる季節や時間帯もあるので、その場合は観測地そのものを変えるか、天体が高く昇るまで待つといった工夫が必要になります。

また、前の章で紹介したとおり、大都市の街明かりは100km以上離れた地点にも影響することがあるとされています。

「街から離れたはずなのに、ある方角だけ空が明るい」と感じたら、その先に大きな街がある可能性があります。

観測地を選ぶときも、「街からの距離」だけでなく「その場所から見て街がどの方角にあり、見たい天体はどの方角か」をセットで考えると失敗が減ります。

つまり、場所選びと方角選びは別々のものではなく、「暗い方角に見たい天体がある場所」を選ぶことが光害対策の基本になります。

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地平線近くより高い空を狙う

光害のある場所では、地平線近くの低い空よりも、頭の真上に近い高い空を狙うほうが星を見つけやすくなります。

理由は、星の光が私たちの目に届くまでに通る大気の厚さにあります。

地平線に近い空を見るときは、光が大気の中を斜めに長く通ってくるので、街明かりの散乱やかすみの影響を受けやすくなるのです。

一方で天頂付近(真上)は、通ってくる大気の層が比較的薄く、空も暗く見えやすい傾向があります。

ちなみに、さきほど紹介した環境省の調査も、天頂付近の夜空を撮影して明るさを測っています。

6段階の目安を自分の空に当てはめるときも、地平線近くではなく真上あたりの空で判断すると、調査の条件に近い比べ方ができるでしょう。

実際の観測では、見たい天体がなるべく高く昇っている時間を選ぶのがコツです。

星は時間とともに東から昇って西へ沈んでいくので、同じ天体でも低いうちは見えにくく、高く昇ると見えやすくなることがあります。

天体観測アプリなどで、見たい天体がいつ頃いちばん高くなるかを調べておくと、待ち時間も含めた計画が立てやすくなりますよ。

天の川を見たい場合も考え方は同じで、季節や時間によって天の川の見える位置や高さは変わります。

天の川が見やすい季節や時間帯、方角については、天の川はいつどこで見えるのかを解説した記事で詳しくまとめています。

誤解のないように補足すると、「高い空なら光害の影響がない」というわけではありません。

街中ではスカイグローが空全体に広がっているため、真上の空も郊外に比べれば明るいのがふつうです。

それでも、同じ場所の中で比べれば高い空のほうが条件はよいことが多いので、まずは見上げる高さを意識するだけでも見え方は変わってくるはずです。

低い空に見たい天体があるときほど、より暗い観測地を選ぶ必要が出てくる、と覚えておくと判断しやすいかなと思います。

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目に入る照明を視界から外す

空の明るさと同じくらい大事なのが、近くの照明が直接目に入らないようにすることです。

街灯や自動販売機、車のヘッドライトなどの明かりが直接目に入ると、せっかく暗さに慣れてきた目が元に戻ってしまいます。

目が暗さに慣れることを「暗順応」といい、環境省の資料でも、目安として10分以上かけて目を慣らすとかすかな星が見えてくると案内されています。

人や環境によってはもっと時間がかかることもあるので、焦らずに待つのがコツです。

逆にいえば、まぶしい光を一度浴びると、その慣らした時間がむだになってしまうかもしれないわけです。

最初の章で触れたグレアとも関係する話で、視界の中にまぶしい部分があると、暗いものを見る力が落ちてしまいます。

環境省の観察シートでも、天の川が見えない理由のひとつに「近くに照明があって見えない」が挙げられていました。

空そのものはそこそこ暗いのに、近くの照明のせいで星が見えていないというケースもあるということですね。

具体的な対策としては、次のようなものがあります。

ひとつは、建物や車の陰に入って、照明が視界に入らない位置で空を見ること。

もうひとつは、照明を背にして立ち、光が目に入る角度を避けることです。

手元を照らすときに白い明るいライトを使うと、それだけで暗順応が崩れてしまうので、赤いライトを使うのが定番になっています。

夜目を守るライトの選び方については、天体観測の赤色ライトの必要性と選び方をまとめた記事で紹介しています。

スマートフォンの画面も意外とまぶしいので、星図アプリを使うときは画面の明るさを下げたり、夜間向けの表示に切り替えたりしておくと安心でしょう。

ただし、照明を避けようとして暗い場所に入り込むときは、安全面への配慮も欠かせません。

暗い場所を探して夜間に出かけるときは、私有地や立入禁止の場所に入らないようにしましょう。

道路脇への駐車は事故やトラブルのもとになるため、駐車できる場所かどうかを事前に確認しておくと安心です。

できるだけ複数人で行き、足元の安全を確保したうえで、天候の急な変化にも注意してください。

現地の立ち入りルールや利用時間は場所ごとに違うので、正確な情報は公式サイトや現地の案内をご確認ください。

照明を視界から外す工夫は、遠くへ出かけなくても自宅の周りですぐに試せるのがうれしいところ。

空の明るさは変えられなくても、目に入る光は自分の立ち位置で減らせると覚えておいてください。

手元を照らすライトをまだ持っていない方は、赤い光に切り替えられるタイプを1つ用意しておくと、観測中に暗順応を崩しにくくなりますよ。

明るさや電池の種類は製品ごとに違うので、購入前に各ショップの商品説明で確認してくださいね。


時間と月と天気で光害を減らす

天文薄明が終わってから見る、月明かりを避ける、空気の澄んだ日を選ぶという3つの時間と天気の工夫をまとめたスライド
時間と天気を工夫して光害の影響を減らす

場所と方角を工夫したら、最後に「いつ見るか」を考えましょう。

夜空の明るさは、街明かりだけでなく、太陽の残り光や月明かり、空気の状態によっても変わります。

同じ場所でも、時間や日を選ぶだけで見える星の数がかなり違ってくることがあります。

ここでは、天文薄明・月・湿度という3つの条件と、よくある質問をまとめました。

どれも出かける前に調べられる条件なので、カレンダーや天気予報と見比べて「今夜は行く価値がありそうか」を判断する材料にしてみてください。

場所選びと組み合わせれば、同じ光害のある地域でも見える星の数を増やせるかもしれません。

観察の予定を決める前に、これらの条件をひととおり確かめておくと安心です。

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天文薄明が終わってから見る

暗い星や天の川を見たいなら、日没直後ではなく「天文薄明」が終わってから観察を始めるのがおすすめです。

日が沈んだあとも、太陽の光は地平線の下から空を照らしていて、しばらくは空がほんのり明るい時間が続きます。

この明るさが残っている時間帯を「薄明」と呼びます。

国立天文台の暦計算室によると、薄明は太陽がどれだけ地平線の下に沈んでいるかで3つに分けられています。

太陽の高度がおよそ−6度までを「市民薄明」、およそ−12度までを「航海薄明」、およそ−18度までを「天文薄明」と呼ぶそうです。

天文薄明が終わって、太陽が地平線の下18度より深くなると、太陽の光の影響はほぼ無くなります。

環境省の星空観察の資料でも、観察に適しているのは天文薄明の終わり以降とされています。

つまり、日没からしばらくの間は、光害とは別に「太陽の残り光」で空が明るくなっているということですね。

日が沈んで空が暗くなってきたように見えても、まだ薄明が続いていることがあるので、そのタイミングで空の明るさを判断すると実際より明るく感じてしまうかもしれません。

天文薄明が終わる時刻は、日付や場所によって変わります。

何時何分と覚えるのではなく、出かける日の時刻を国立天文台の暦計算室などで調べておくのが確実な方法です。

逆に、明け方も天文薄明が始まると空が明るくなり始めるので、夜明け前に観察する場合は終わりの時刻にも気をつけておきたいところ。

誤解しやすい点として、「薄明が終われば光害も消える」わけではありません。

薄明が終わると太陽の影響はほぼ無くなりますが、そのあとに残る空の明るさには、街明かりによる光害や月明かりなどが含まれています。

前の章で紹介した6段階の目安で自分の空を見分けるときも、天文薄明が終わってから判断すると、太陽の影響を除いた空の明るさで比べられます。

天文薄明の終わりを待つのは、お金も道具もかからない光害対策のひとつです。

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月明かりと湿度も空を明るくする

見落としがちですが、月明かりと空気中の湿り気も、街明かりと同じように夜空を明るくする原因になります。

月が出ていると、月の光が空全体を照らすので、暗い星や天の川、星雲のような淡い天体は見えにくくなります。

そのため、淡い天体を見たいときは、新月の前後や、月が沈んだあとの時間帯を選ぶのが向いています。

月の満ち欠けや月齢の調べ方については、月の観察方法と月齢の見方をまとめた記事が参考になるかもしれません。

一方で、月そのものや惑星、明るい星は光害の影響を受けにくい天体です。

街中で天の川が難しい夜は、思い切って月や惑星を楽しむ日にするのも、ひとつの賢い選択肢ですよ。

もうひとつの条件が、空気の状態です。

湿度が高い夜や、かすみ・黄砂などで大気中の粒が多い日は、街明かりが散らばりやすくなり、空がいっそう明るく見えやすくなります。

反対に、雨上がりや空気が乾いた日の夜は空が澄みやすい傾向があるので、星を見るには狙い目の日かもしれません。

天気予報を見るときは、晴れかどうかだけでなく、湿度やかすみの情報もあわせてチェックしておくと判断しやすくなります。

ここまで紹介した光害の避け方を、効果の大きさや手間の面から比べると次のようになります。

→ 横にスクロールできます

方法 効果の大きさ 手間・費用 向いている人
暗い場所へ移動する 大きい 移動の時間と交通費がかかる 天の川や淡い天体を見たい人
街の反対側の空を見る 中くらい ほぼかからない 近所や自宅周りで見たい人
高い空を狙う 中くらい ほぼかからない 見たい天体が高く昇る時間に見られる人
目に入る照明を遮る 中くらい 赤いライトなど少しの準備 街灯の多い場所で見る人
天文薄明の終わりを待つ 中くらい 待ち時間がかかる 日没後すぐに出かけがちな人
新月前後や月が沈んだ後を選ぶ 大きい(淡い天体の場合) 日程の調整が必要 天の川や星雲を見たい人
空気の澄んだ日を選ぶ 中くらい 天気予報のチェック 日程に融通がきく人
光害フィルターを使う 一部の天体に限られる 購入費用がかかる 星雲の撮影や観察をしたい人

効果の大きさはあくまで一般的な目安で、場所や天体によって変わる点はご了承ください。

表のとおり、光害フィルターは星雲の一部など限られた天体に効く補助的な道具で、場所選びほどの効果は期待しにくいものです。

フィルターが向いている天体や限界については、光害フィルターの効果と限界を解説した記事で詳しく紹介しています。

まずはお金のかからない方法から組み合わせていくと、道具を買う前でも見える星はぐっと増やせるはずです。

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天体観測の光害に関するよくある質問(FAQ)

都会のベランダでも星は見えますか?

天の川のような淡い天体は難しいことが多いですが、月や惑星、明るい星なら都会でも十分楽しめます。

環境省の6段階の目安でいうと、都市部の明るさでは星がほとんど見られないとされる一方、市街地や住宅地の明るさなら星座の形が分かることもあります。

ベランダで見るときは、室内の明かりや近くの街灯が目に入らない位置を選び、目を暗さに慣らしてから高い空を見上げてみてください。

光害マップで暗い場所に行けば天の川は見えますか?

見える可能性は高まりますが、いつでも見えるとは限りません。

光害マップの空の明るさは計算にもとづくもので、実際の空は天気や月明かり、湿度によって変わります。

月が出ていない日や空気の澄んだ日を選び、天文薄明が終わってから、天の川が高く見える時間帯に観察するのがおすすめです。

街からどれくらい離れれば光害を避けられますか?

街の大きさや地形によって違うため、一律の距離で決めるのは難しいところです。

国の資料では、大都市の街明かりは100km以上離れた地点の天体観測にも影響することがあるとされています。

距離だけで判断するより、光害マップで空の明るさと街の方角を確かめ、街と反対側の空が開けている場所を選ぶほうが現実的でしょう。

光害フィルターがあれば街中でも天の川が見えますか?

光害フィルターは一部の天体に効く補助的な道具で、場所選びほどの効果は期待しにくいものです。

フィルターを検討する前に、暗い場所や方角、月の出ていない日を選ぶといった、お金のかからない方法から試してみるのがおすすめです。

測定器がなくても自分の空の明るさは分かりますか?

おおまかであれば分かります。

環境省の6段階の目安には「星座の形が分かり始める」「天の川が見え始める」といった見え方も書かれているので、実際に見えている星の様子から逆にたどることができます。

目を10分以上暗さに慣らし、天文薄明が終わってから真上あたりの空で判断すると、より目安に近い比べ方になりますよ。

まとめ|光害は場所と方角で減らせる

光害は、人工の光が空へ漏れて夜空の背景が明るくなることで、暗い星から順に見えにくくなる現象です。

環境省の資料が紹介する2016年の研究では、日本でも人口の約70%が天の川を見られない環境で暮らしているとされ、星が見えにくいのはあなただけではありません。

それでも、自分の空の明るさを知り、場所・方角・時間を選ぶことで、光害の影響はかなり減らせます。

この記事のポイントをおさらいしておきましょう。

  • 光害は星が消えるのではなく空の背景が明るくなる現象
  • 環境省の6段階の目安で自分の空の明るさを見分ける
  • 光害マップは空の明るさで候補を出し光源の層で街の位置を確かめる
  • 街の反対側の高い空を狙い目に入る照明を遮る
  • 天文薄明の終わり・月のない時間・空気の澄んだ日を選ぶ
  • 光害フィルターは一部の天体に効く補助と考える

次の一歩としては、まず今夜、自宅の近くで目を暗さに慣らしてから真上の空を見上げ、6段階の表のどこに近いかを確かめてみてください。

そのうえで、光害マップで行けそうな範囲の暗い場所を探し、月の出ていない日を選んで出かけてみると、空の違いを実感しやすいかなと思います。

道具や観測の基本から知りたい方は、初心者向けの天体観測の始め方をまとめた記事もあわせてどうぞ。

夜間に出かけるときは安全に気をつけて、現地のルールは公式サイトや現地の案内で確認したうえで、星空の時間を楽しんでくださいね。

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