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間違い探しの脳トレ効果は?認知症予防の根拠と続けやすい解き方・選び方
間違い探しは脳トレになる?期待できることと限界、楽しく続けるコツ
人の名前がすぐに出てこない、台所に来たのに何を取りに来たのか忘れてしまった。そんな小さな物忘れが増えてきて、ちょっと気になっている大人の方は多いかなと思います。
手軽な脳トレとして間違い探しを始めてみようか迷っている方や、高齢者の親に頭を使う遊びをすすめたいご家族もいらっしゃるかもしれません。
ただ、間違い探しの脳トレ効果や認知症予防について、本当のところどこまで期待していいのかは気になりますよね。
この記事では、WHO(世界保健機関)のガイドライン、研究論文、脳科学者の解説を一つずつ見比べて、間違い探しで期待できることと、まだ言えないことを根拠の強さで分けて整理します。
そのうえで、難しい問題に当たったときのコツや答えを見るタイミング、スマホのアプリで手軽に試すか紙の本でじっくり取り組むかの選び方、高齢の家族と一緒に楽しむ工夫まで順番にお伝えしますね。
- 間違い探しで働く脳のしくみとワーキングメモリーの役割
- 認知症予防についてWHOや研究で言えることと言えないこと
- 難易度の上げ方や答えを見るタイミングなど続けるコツ
- 紙とアプリの選び方と高齢の家族と楽しむ工夫
間違い探しは脳トレになる?期待できることと限界

先に結論から言うと、間違い探しは、二つの絵を見比べるあいだ情報を頭にとどめておく“脳のメモ帳”を使う遊びで、頭を使う余暇活動として手軽に始められるものです。
一方で、WHOが2026年に出したガイドラインの第2版でも、認知機能を刺激する活動や認知訓練の推奨は条件付きで、根拠の確かさは低い、あるいは非常に低いと評価されています。間違い探しで認知症が防げる、とまで言える段階ではありません。
この章では、まず間違い探しで脳のどんな働きを使うのかを見たうえで、WHOの推奨と根拠の強さ、脳科学者のインタビューで紹介された23%・34%という数字の読み方を確認します。さらに、資料ごとに何が分かっているのかを比較表にまとめ、最後に大人や高齢者が取り組む意味を整理していきます。
間違い探しで働くのは脳のメモ帳ワーキングメモリー
篠原菊紀氏の説明では、間違い探しでフル稼働するのは、ワーキングメモリーと呼ばれる頭の働きです。
脳科学者の篠原菊紀氏(公立諏訪東京理科大特任教授・間違い探しの本の著者や監修も手がける)は、雑誌OCEANSのWebインタビューで、ワーキングメモリーを「脳のメモ帳」のようなものと説明しています。そのうえで、「情報を一時的に頭の中にとどめつつ、同時にその情報を処理していく能力を指します。」と話しています。
では、間違い探しのどこでこの働きを使うのでしょうか。篠原氏は同じインタビューで、「間違い探しでは、まず二つの絵を比較するために、それぞれの絵の情報を一時的に記憶しておく必要がありますよね。」と述べています。
さらに、どこに違いがあるのかという空間的な位置関係を把握する能力も求められる、というのが篠原氏の説明です。こうした作業すべてでワーキングメモリーがフル稼働しているので脳トレにも最適だ、とも話しています。
具体的な場面で考えてみると分かりやすいかも。左の絵で窓の数を数え、右の絵へ視線を移すあいだ、その数を覚えておく。覚えていた数と今見ている数を比べて、違えばその位置を押さえて次の場所へ移る。この“覚える・比べる・位置を押さえる”の繰り返しが、間違い探しの流れのイメージです。
見方についても面白い話があります。篠原氏によると、「目を細くして見る」「寄り目で見る」「ぼんやり見る」といった見方にも意味があり、こうした見方では主に「前頭眼野」という部分が中心的に働くそうです。これは視覚的な注意力を高める見方だ、と説明しています。
また篠原氏は、ワーキングメモリーのピークは18〜25歳頃と言われ、40代以降は徐々に衰えていくといわれる、と話しています。ただし記事中でも個人差ありと添えられているので、年齢だけで決めつけないことが大切です。
子ども向けの資料にも、同じ考え方が出てきます。新学社の幼児向け教材の資料で、篠原氏は「見つけ遊び・間違い探しには、特に視覚的ワーキングメモリが必要です。」と解説しています。ただ、これは幼児期を対象にした解説で、大人や高齢者に同じ程度の効果があるとは書かれていません。
まとめると、間違い探しは見比べて覚える、位置を押さえる、注意を向けるという頭の使い方を一度に使う遊びだと言えます。
認知症予防に効く?WHOの推奨と根拠の強さ

結論から言うと、WHOのガイドラインは頭を使う活動を“勧めてもよい”としていますが、推奨は条件付きで、根拠の確かさは低い〜非常に低いという評価です。認知症予防に効くと言い切れる段階ではありません。
WHOは2026年に、認知機能の低下と認知症のリスクを減らすためのガイドラインの第2版を出しています。対象は認知症ではない成人、つまり認知機能が正常な人か、軽度認知障害(MCI)の人です。
この中で、頭を使う取り組みは大きく二つに分けて扱われています。
一つめは認知訓練です。WHOは、特定の認知の領域を刺激するために、目的を絞って繰り返し行う認知の課題や練習のことだと定義しています。認知機能が正常か軽度認知障害の高齢者に対して、認知訓練を“提供してもよい”という推奨で、推奨の強さは条件付き、根拠の確かさは低いとされました。根拠の確かさは前の版の“非常に低い”から“低い”へ引き上げられましたが、条件付きという位置づけはそのままです。
二つめは認知刺激です。こちらは、グループや社会的な場で決まった時間に行う構造化された活動に加えて、読書や物語を語ること、ゲームなど、自分で取り組める日常の活動も含むと定義されています。認知刺激への参加は“勧めてもよい”という推奨で、今回の版で新しく加わったもの。推奨の強さは条件付き、根拠の確かさは非常に低いという評価です。
結果の中身も見ておきましょう。WHOのまとめでは、認知機能が正常な人や軽度認知障害の人への認知訓練は、1〜48週の追跡で認知機能に小さな改善をもたらす可能性がある(Hedges’ g 0.25)一方、5年後の認知症の発症にはほとんど、あるいはまったく効果がない(ハザード比1.00)とされています。
さらにWHOは、認知の健康を保ったり高めたりするための認知訓練について、最適な種類・頻度・強さ・期間を決めるには現時点で根拠が足りない、とも書いています。認知的な介入が認知症の発症を減らすかどうかを確かめる根拠はまだ少ない、という一文もあります。
では、間違い探しはどこに入るのでしょうか。WHOのガイドラインは、間違い探しという名前の遊びを個別に評価しているわけではありません。定義に出てくるゲームや、文中で例に挙がる読書・パズル・ゲームといった気軽な認知刺激の活動に近い活動と考えられます。ただし、これはあくまでこの記事としての当てはめです。
WHOは、認知面での伸びが実生活での働きにつながることが、意味のある持続的な効果のためには欠かせない、とも述べています。
WHOの推奨の詳しい内容は、WHOの公式ページで公開されています(出典:WHO 公式サイト(認知機能の低下と認知症のリスク低減に関するガイドライン第2版))。
まとめると、WHOは頭を使う活動を否定していませんが、認知症を防げると言えるだけの根拠はまだそろっていない、という立場です。間違い探しも、その前提で付き合うのがちょうどいいかなと思います。
23%・34%という研究の数字の読み方
間違い探しの脳トレ効果の話で紹介されている23%・34%という数字は、数字が一致する研究を見るかぎり観察研究で“関連”が見られたことを示すものと読むのが近く、間違い探しをすればその分だけリスクが下がるという因果の数字ではありません。
この数字の出どころの一つが、先ほどの篠原氏のインタビューです。篠原氏は間違い探しを「頭を使う余暇活動」として非常に優れていると評価したうえで、こう話しています。
「ある研究では、こうした頭を使う余暇活動に積極的に取り組んでいる人は、認知症の出現率が23%下がり、アルツハイマー病のリスクが34%低下するという結果も出ているんです。」
ここで注意したいのは、OCEANSの記事が出典を「余暇活動と認知症リスク」とだけ書いていて、論文名までは示していない点です。
数字が一致する論文として、Suほか(2022年、医学誌Neurology)のメタ解析があります。38件の縦断研究をまとめたもので、研究開始時の参加者は2,154,818人です。ただし、OCEANSの記事が指している研究と同じものかどうかは、記事の情報だけでは確かめられません。
このメタ解析では、認知的な余暇活動について、すべての原因による認知症の発症で相対リスク0.77(95%信頼区間0.68〜0.87)、アルツハイマー病で0.66(同0.52〜0.85)という値が示されています。相対リスク0.77は23%低い、0.66は34%低いに当たる値です。
同じ論文では、身体的な活動(すべての原因による認知症で0.83)や社会的な活動(同0.93)でも、認知症の発症が少ないことと関連していました。著者は、余暇活動が認知症のリスクと逆の関連にある、とまとめています。
ここでポイントになるのが、縦断研究が観察研究だということ。観察研究は、ある活動に取り組んでいた人とそうでない人を追いかけて比べ、傾向を見る方法です。そのため、活動そのものが認知症を減らした原因なのかどうかまでは、この方法だけでは決めにくいという性質があります。
また、この論文の要旨に出てくる分類は身体的・認知的・社会的な活動で、間違い探しという語は出てきません。間違い探しだけを取り出して調べた数字ではない、という点も押さえておきたいところです。
WHOのガイドラインも、読書やゲーム、テレビ、ラジオ、楽器の演奏といった活動が認知症のリスクの低さと関連する可能性がある、という観察研究の結果を紹介しています。そのうえで、観察研究であることや、不正確さ、出版バイアスの疑いといった方法上の問題から、根拠の確かさを全体として非常に低いと評価しました。効果の大きさは相対リスク0.69〜0.95の幅だったとしています。
まとめると、23%・34%は“頭を使う余暇活動に取り組む人ほど認知症が少ない傾向が報告されている”という読み方が近い数字です。間違い探しで○%下がると受け取らないのが、数字との上手な付き合い方かなと思います。
間違い探しの脳トレ効果を資料ごとに比較
ここまでの話を、資料ごとに何を調べて何が分かったのか、根拠の強さはどうかで一つの表にまとめます。資料によって対象も調べ方もまったく違うので、横に並べて見ると混同しにくくなりますよ。
→ 横にスクロールできます
| 資料 | 何を調べたか(対象) | 分かったこと | 根拠の強さ・注意 |
|---|---|---|---|
| WHO 2026(認知訓練) | 認知機能が正常か軽度認知障害の高齢者への、特定の認知の領域を狙って繰り返す課題 | 1〜48週の追跡で認知機能に小さな改善の可能性。5年後の認知症の発症にはほとんど、あるいはまったく効果なし | 条件付きの推奨・根拠の確かさは低い。最適な種類・頻度・期間はまだ決められない |
| WHO 2026(認知刺激・日常の活動) | 読書やゲームなど日常の活動も含む、認知機能全般を高める活動 | 観察研究で、こうした活動と認知症のリスクの低さが関連する可能性。構造化された介入では、ワーキングメモリーへの効果は不確か | 条件付きの推奨(新設)・根拠の確かさは非常に低い。間違い探しを名指しした評価ではない |
| コクラン 2020 | 認知機能が健常な高齢者への、パソコン等による認知訓練(RCT8件・1183人) | 能動的な対照(教育ビデオの視聴など)との比較で、終了直後に全般的な認知機能で小さな効果が見られる可能性。ワーキングメモリーはほとんど差がない可能性。12か月後まで続いた根拠はなし | 低い質の根拠・臨床的な重要性は不確か。対象はパソコン等の訓練で、紙の間違い探しではない |
| Su 2022 | 縦断研究38件のメタ解析(余暇活動と認知症の発症の関連) | 認知的な余暇活動で、認知症は相対リスク0.77、アルツハイマー病は0.66 | 観察研究の関連で、因果の数字ではない。要旨に間違い探しの語は無い |
| 篠原氏の解説(OCEANS 2025) | 間違い探しで使う脳の働きと取り組み方 | ワーキングメモリーや空間的な位置関係の把握を使う。楽しく取り組むことが最も重要 | 専門家の見解で研究論文ではない。本人も間違い探しだけで防げるわけではないと話している |
| 認知症施策推進大綱(2019) | 国の施策での予防という言葉の意味 | 予防は認知症にならないという意味ではなく、なるのを遅らせる・進行を緩やかにするという意味 | 間違い探しや脳トレの語は無い。挙がっているのは運動不足の改善・生活習慣病の予防・社会参加など |
WHOの2行は推奨の強さと根拠の確かさを示したもので、どちらも条件付きです。認知訓練のほうが根拠の確かさは一段上ですが、それでも低いという評価にとどまります。
コクラン・レビューは無作為化比較試験(RCT)を集めたものですが、根拠の質は低いと評価されています。しかも対象はパソコン等を使った認知訓練で、8件のうち5件は介入期間が3か月だけでした。紙の間違い探しの結果として読み替えないよう注意したいところです。生活の質や日常生活の動作への影響についても、根拠は見つからなかったとされています。
Su 2022は人数の多いメタ解析ですが、前の節で見たとおり観察研究の関連です。篠原氏の解説は、間違い探しの頭の使い方や取り組み方を知るうえで役に立つ一方、効果を示した研究そのものではありません。
結局のところ、間違い探しそのものの効果を直接確かめた資料は、今回の表の中にはありません。頭を使う活動としての位置づけはWHOや篠原氏の資料から読み取れるものの、効果の大きさは資料ごとに分けて受け取る、というのがこの表から言えることです。
大人や高齢者が取り組む意味はどこにあるか
大人や高齢者が間違い探しに取り組む意味は、認知症を防ぐ手段としてよりも、新しくて手ごたえのある余暇活動を暮らしの中に持てる点にあると考えられます。
まず、予防という言葉の意味を確認しておきましょう。厚生労働省ほか関係省庁が2019年にまとめた認知症施策推進大綱には、次のように書かれています。
「予防」とは、「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味である。
(出典:厚生労働省「認知症施策推進大綱」)
大綱では、運動不足の改善、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病の予防、社会参加による社会的孤立の解消や役割の保持などが、認知症の発症を遅らせることができる可能性が示唆されている、という点を踏まえた取り組みを掲げています。挙がっているのは運動や生活習慣、社会参加で、間違い探しや脳トレという言葉は出てきません。
WHOのガイドラインにも、ヒントになる記述があります。WHOは、認知機能を高める日常の活動について、とくに新しくて手ごたえのある活動である場合に、と添えています。また、頭を使う活動は社会的な不活発を減らす助けにもなり、その社会的な不活発自体が認知症の危険因子だ、とも書いています。
この二つを合わせて考えると、間違い探しは、それ単体で何かを防ぐものというより、人と一緒に楽しんだり、少し難しい問題に挑戦したりするきっかけとして生かせる活動、と位置づけるのが自然かもしれません。
篠原氏もインタビューの最後で、「もちろん、間違い探しだけで防げるわけではありませんが、手軽に始められて、楽しみながら脳を活性化できるという点で、とても価値のある余暇活動だと思います。」と話しています。
そのうえで篠原氏は、日常生活や仕事の中で、間違い探しと同じ頭の使い方を意識することが大事だとして、「物事を比較して判断する、違和感を察知して行動する、といった思考のクセを日常に取り入れることが、認知機能の維持にもつながっていきます。」と述べています。
まとめると、大人や高齢者にとっての間違い探しは、楽しく続けられる頭を使う余暇活動の一つとして取り入れるのがちょうどいい距離感です。運動や人との交流と並べて、暮らしの楽しみの一つに加えるくらいの気持ちで付き合ってみてください。
間違い探しを脳トレとして続けるコツと選び方
間違い探しを脳トレとして続けるなら、少しずつ難しくすること、同じ問題を繰り返すこと、行き詰まったら答えを見ること、1回の時間を区切ることの四つを押さえておくと取り組みやすくなります。
この章のやり方は、主に篠原氏がインタビューで話した取り組み方をもとにしています。前の章で見たとおり、WHOも認知訓練の最適な種類や頻度、強さ、期間はまだ決められないとしているので、研究で確かめられた正解の手順ではなく、楽しく続けるための考え方として読んでもらえたらと思います。
後半では、紙とアプリの選び方を目的別に整理し、高齢の家族と一緒に楽しむときの工夫や、脳トレで様子を見るより相談したほうがいい場面についてもお伝えします。無理なく続けられる形を見つける参考にしてみてください。
難易度は少しずつ上げて同じ問題も繰り返す
間違い探しの進め方は、簡単な問題から少しずつ難しくしていく方法と、同じ問題を繰り返してすらすら解けるようにする方法の、二本立てで考えるのがおすすめです。
篠原氏はインタビューで、取り組み方を二つ紹介しています。一つめが「アップレギュレーション」で、「これは、徐々に難易度を上げていく方法です。最初は簡単なものから始めて、慣れてきたらより難しい問題に挑戦していく、という進め方ですね。」と説明しています。
二つめが「ダウンレギュレーション」。同じ問題を繰り返し解いて、スムーズにできるようになるまで練習する方法です。篠原氏は「繰り返し行うことで、より効率的に、そして素早く答えを見つけられるようになる。」と述べ、スムーズに解けるようになる過程こそが脳にとって有効なトレーニングになる、と話しています。
繰り返しについては、新学社の幼児向けの資料でも、篠原氏が「答えを知ってからくり返すことでも、十分にワーキングメモリの訓練になります。」と解説しています。ただしこちらは幼児期の子どもを対象にした話で、大人に同じ程度の効果があるとは書かれていません。
一方で、慣れすぎにも目を向けておきたいところです。国立長寿医療研究センターは、運動と認知課題を組み合わせたプログラム「コグニサイズ」について、課題がうまくできるということは脳への負担が少ないことを意味する、と説明しています。そのうえで「課題に慣れ始めたら、どんどんと創意工夫によって内容を変えてください。」としています。これは運動と組み合わせたプログラムの話で、間違い探しについての説明ではありません。
WHOも、認知機能を高める日常の活動について、とくに新しくて手ごたえのある活動である場合に、と添えていました。繰り返してすらすら解けるようになったら、次は少し難しい問題へ進む。この流れで考えると、二つの方法をうまく組み合わせられそうです。
記事としての一例ですが、次のような順番で進めてみる方法があります。
- 違いの数が少なめで、絵が大きく見やすい問題から始める
- 解けた問題を日をあけてもう一度解き、前より早く見つけられるか試す
- すらすら解けるようになったら、絵柄の細かい問題や違いの数が多い問題へ進む
まとめると、少しずつ上げる・繰り返す・慣れたら変えるの三つを行き来するのが、飽きずに手ごたえを保つ進め方と言えます。
粘りすぎず答えを見て再挑戦するのが近道
どうしても見つからない違いがあるときは、長く粘るより、思い切って答えを見てから解き直すほうが効果的だと、篠原氏はインタビューで話しています。
意外に感じるかもしれませんが、篠原氏はインタビューで「正直に言うと、粘りすぎるのは時間の無駄です(笑)。」と話しています。続けて、「じつは、「まだ諦めないぞ!」と長時間悩むよりも、思い切って答えを見てしまって、「ああ、そこだったのか!」と納得し、再チャレンジするほうが効果的なんです。」とも述べています。
その理由として篠原氏は、「答えを見て再チャレンジすることで、脳はより積極的に情報を取り込み、学習を進めてくれます。」と説明しています。答えを見ることは負けではなく、次に解くための材料を手に入れる時間、と考えると気持ちが楽になりますね。
もう一つ大事なのが、楽しさです。篠原氏は「最も重要なポイントは「楽しく取り組むこと」です。」と話し、「逆に、ストレスを感じながら無理にやってもあまり意味がありません。」とも述べています。
新学社の幼児向けの資料では、答えがわかると「アハ体験状態」になって脳が活性化するとして、答えがわからないときは、ヒントを出してもらったり答えを教えてもらったりしても大丈夫、と篠原氏が書いています。子ども向けの解説ではありますが、答えを見ることへの抵抗感を和らげてくれる考え方です。
ありがちなのが、最後の一つがどうしても見つからず、長い時間絵とにらめっこを続けてしまうパターン。終わるころにはぐったりして、次の問題に手が伸びなくなるかもしれません。
答えを見たら、なぜそこを見落としたのかを一言で振り返ってから解き直すのがおすすめです。色の違いだったのか、小さな形の違いだったのか。自分が見落としやすい違いの種類が分かると、次の問題で目の向け方が変わるかもしれません。
まとめると、手が止まってイライラしてきたら答えを見るタイミングと考えて、納得してから再挑戦する流れを作るのが長続きのコツです。
1回10分程度と制限時間の上手な使い方
1回に取り組む時間は10分程度を目安にし、制限時間を使うなら、最初はゆとりのある時間から少しずつ短くしていく方法がおすすめです。
篠原氏はインタビューで、「制限時間を設けるのは、前頭葉の活性化を促す良い方法です。最初はゆとりある時間設定から始めて、徐々に短くしていくと、脳はより活性化が続きます。」と話しています。
同時に、「ただし、あまりにも詰め込みすぎると持続しませんから、10分程度を目安にしましょう。」とも述べています。長時間まとめてやるより、短い時間で切り上げるほうが続けやすい、という考え方ですね。
頻度についても、篠原氏は「無理に毎日やる必要はありません。」と話しています。修行のように習慣化するより、やりたいときに楽しみながら集中して取り組むほうが効果的だ、というのが篠原氏の見方です。
ここで押さえておきたいのは、10分という数字は篠原氏が示した目安で、公式な基準ではないことです。WHOのガイドラインでも、認知訓練の最適な種類・頻度・強さ・期間を決めるには根拠が足りない、とされていました。あくまで一般的な目安として受け取り、疲れや気分に合わせて調整して大丈夫です。
具体的な使い方の一例を挙げると、最初の1問は時間を気にせず解いて、かかった時間をメモしておく方法があります。次に同じくらいの難しさの問題を解くときは、その時間より少し短い制限時間を決めて挑戦してみる。時間内に全部見つからなくても、そこで答えを見て終わりにすれば、10分程度の枠に収まりやすくなります。
まとめると、短く区切って、時間は少しずつ詰めるのが制限時間の上手な使い方です。毎日でなくても、やりたいときに集中して取り組めば十分と考えてみてください。
紙とアプリどっちがいい?目的別の選び方
紙とアプリのどちらがいいかは、脳トレとしての差で選ぶより、目的と好みで選ぶのが現実的です。
篠原氏はインタビューで、紙とデジタルの違いについて「統計的に見ると、大きな差はないというのが現在の見解です。どちらを選ぶかは、個人の好みや慣れによるところが大きいですね。」と話しています。
一方で、一般的には脳活動は紙で強くなりやすいという研究もあるものの、年齢差や個体差、デジタルネイティブ度合いによっても変わる、とも述べています。さらに「スマホでの間違い探しも決して悪くはありませんし、高齢の方や普段デジタルデバイスに触れない方は、やはり紙媒体の方が集中しやすい傾向にあります。」と付け加えています。
この話をもとに、目的ごとの選び方を表にまとめてみました。表の組み合わせは記事としての整理で、篠原氏が目的別に勧めたものではありません。
→ 横にスクロールできます
| 目的・場面 | 向いている形 | 取り組み方のヒント |
|---|---|---|
| 気分転換・すき間時間に | アプリ | 待ち時間などに1問だけ解いて切り上げる |
| じっくり集中したい | 紙の本や印刷したもの | 静かな場所で時間を決めて取り組む |
| 家族と一緒に楽しみたい | 紙の本や印刷したもの | テーブルに広げて一緒にのぞき込む |
| 普段デジタル機器に触れない高齢の方 | 紙の本や印刷したもの | 篠原氏は紙媒体のほうが集中しやすい傾向と話している |
アプリは手元のスマホですぐ始められるのが強みで、紙は絵を大きく広げて何人かで同時に見られるのが強みです。
まとめると、効果の差より、続けやすさで選ぶのが現実的です。自分や家族が手に取りやすい形から始めてみましょう。
紙の本でじっくり取り組みたい人向けに、間違い探しの本の一例を置いておきますね。難易度や問題数、文字や絵の大きさは本によって違うので、購入前に各ショップの商品ページで中身と価格を確認してから選んでみてください。
高齢の家族と一緒に楽しむときの工夫

高齢の家族と間違い探しを楽しむなら、正解の数を競うより、一緒に見て、間違えても笑い合えるような雰囲気を作ることがポイントです。
参考になるのが、国立長寿医療研究センターが開発した「コグニサイズ」の考え方です。コグニサイズは、運動と計算・しりとりなどの認知課題を組み合わせた、認知症予防を目的とした取り組みの総称だと説明されています。センターは、できれば運動を行う皆で一緒に取り組むことで、「間違えて笑って、試行錯誤しながら楽しんで行っていただくことを期待しています。」としています。
ただし、コグニサイズの認知課題の例として挙がっているのは計算やしりとりで、間違い探しは例に入っていません。ここで借りたいのは、皆で一緒に、間違いも笑いに変えながら楽しむという姿勢の部分です。
WHOも、頭を使う活動は社会的な不活発を減らす助けにもなる、としていました。家族と一緒に問題を囲む時間そのものに、話すきっかけが生まれるのは大きな魅力ですね。
声かけで気をつけたいのは、答えを急かさないことです。見つからないときは“右上のあたりを見てみて”のように場所を絞るヒントを出すくらいがちょうどいいかなと思います。新学社の幼児向けの資料でも、答えがわからないときはヒントを出してもらったり答えを教えてもらったりしても大丈夫、と書かれていました。
一緒に楽しむときの工夫としては、次のような方法があります。
- 絵や文字が大きく、違いの数が少なめの問題から選ぶ
- 一つの問題を並んで見て、見つけたら交代で指さす
- 見つけた数より、どんな違いだったかを話題にする
小さな絵が見えにくそうなときは、大きな絵や文字のものを選ぶと取り組みやすくなります。見えにくさが続いて気になる場合は、眼科に相談してみるのも一つの方法です。
物忘れが気になって不安なとき、家族から指摘されたとき、変化が続くとき(急に増えた・日常生活に支障が出ているなど)は、脳トレで様子を見るより、早めにかかりつけ医や地域包括支援センターに相談することをおすすめします。間違い探しは楽しみとして取り入れるもので、診断や治療の代わりになるものではありません。
まとめると、高齢の家族と楽しむときは急かさない・一緒に笑う・見やすい問題を選ぶの三つを意識してみてください。続けるほど、家族の会話の種も増えていきますよ。
大きな絵で見やすい間違い探しの本の一例です。家族で一緒に楽しむときは、見やすさと、話題にしやすい題材かどうかで選ぶと続けやすいかもしれません。価格や在庫は購入前に各ショップでご確認ください。
間違い探しの脳トレについてよくある質問
軽度認知障害(MCI)と言われた人にも間違い探しは意味がありますか?
WHOのガイドラインは、認知機能が正常な人に加えて軽度認知障害の人も対象にしていて、認知訓練はそうした高齢者に提供してもよい、という条件付きの推奨になっています。ただ、間違い探しそのものが評価されたわけではありません。楽しめる範囲で取り入れ、気になる変化があれば主治医に相談しながら進めると安心です。
子ども向けの間違い探しでも大人の脳トレになりますか?
篠原氏が解説している新学社の資料は幼児期向けで、大人への効果については書かれていません。とはいえ、易しい問題は最初の一歩として使いやすいもの。子ども向けの問題がすらすら解けるようになったら、絵柄の細かい大人向けの問題へ進むと、手ごたえを保ちやすくなります。
間違い探しを続けると日常の物忘れは減りますか?
この記事で取り上げた資料には、間違い探しで日常の物忘れが減るかを直接調べた結果はありません。WHOも、認知面の伸びが実生活の働きにつながることが大切だと書いています。間違い探しは物忘れの対策というより、頭を使って楽しむ時間として取り入れるのがおすすめです。
間違い探し以外の活動も組み合わせたほうがいいですか?
WHOは認知刺激の例として読書や物語を語ること、ゲームなどを挙げています。Su 2022でも、身体的な活動や社会的な活動が認知症の発症の少なさと関連していました。大綱も運動不足の改善や社会参加に触れています。間違い探しだけに絞らず、体を動かすことや人との交流と組み合わせて楽しむ考え方がおすすめです。
間違い探しを脳トレに取り入れるためのまとめ

間違い探しは、二つの絵の情報を一時的に覚えながら見比べるワーキングメモリーや、視覚的な注意を使う、手軽に始められる頭を使う余暇活動です。
ただし、WHOの2026年のガイドラインでも、頭を使う活動の推奨は条件付きで、根拠の確かさは低い〜非常に低いという評価でした。篠原氏のインタビューで紹介された23%・34%という数字も、数字が一致するSuほか(2022年)の論文は観察研究のメタ解析で、そこで見られたのは“関連”です。間違い探しで認知症が防げる、とまでは言えないというのが、資料を並べて見えてくる結論です。
そのうえで、楽しく続けるためのポイントを振り返っておきましょう。
- 簡単な問題から少しずつ難しくし、同じ問題の繰り返しも取り入れる
- 行き詰まったら粘りすぎず、答えを見て納得してから再挑戦する
- 1回10分程度を目安に、制限時間はゆとりのある設定から少しずつ短くする
- 紙とアプリは効果の差より、目的と続けやすさで選ぶ
- 家族と楽しむときは急かさず、間違いも笑い合いながら取り組む
ここで紹介した10分程度という時間や取り組み方は、篠原氏のインタビューをもとにした一般的な目安です。WHOのガイドラインや認知症施策推進大綱などの正確な情報は公式サイトをご確認ください。
物忘れが気になって不安なとき、家族から指摘されたとき、変化が続くときは、間違い探しで様子を見続けず、かかりつけ医や地域包括支援センターへ早めに相談するのが安心です。最終的な判断は専門家にご相談ください。
間違い探しは、一人でも家族とでも、思い立ったときにすぐ始められるのが魅力です。期待しすぎず、楽しめる範囲で暮らしの中に取り入れてみてくださいね。
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